理髪店の主人を信用して、俺達はパーマをかけてもらうことにした。頭にいくつもロッドを巻いていく。ゆるやかなパーマをお願いしているはずなのに、結構毛根が引っ張られて痛い。
多分ロッドをはずしてからシャンプーして、ドライヤーでもかければ、ブラッド・ピットに変身するに違いないだろうと楽観的に考えていた。
ところがどっこい、完成したパーマを何度鏡で見てもブラッド・ピットとは似ても似つかない。どちらか言えばパンチパーマに近くて、今風に言えば鼠先輩みたいな髪型だ。
店を出た俺とK君は、お互いの髪型を指差して大笑いするしかなかった。
しかし、この期待はずれのイメージチェンジが、予期せぬ効果をもたらしてくれた。
メキシコに入ってから、街を歩いていたり市場の中を見物していると、やたら「アミーゴ(友達)、アミーゴ」と、胡散臭い輩や商売熱心な連中に声をかけられて、俺達はちょっと辟易していた。ところがこの日パーマをかけた直後から、全く声をかけられなくなったのだ。
それまでは健全な日本人のバックパッカーとしか映らなかったのだが、この髪型で二人で肩を並べて歩いていると、なにか悪い商売をしているチャイニーズマフィアか、ジャパニーズマフィアにしか見えなかったのだろう。