外国にいる日本人が遺言書を作成するには | 川崎市宮前区の相続・遺言・家族信託・終活の相談室 雪渕行政書士事務所

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遺言と遺留分

Q
 私は外国に赴任していますが、万一のことを考えて自筆証書遺言により遺言をしておきたいと考えています。外国に滞在中であっても、日本の法律に従って自筆証書遺言を作成することはできるのでしょうか。

A

 外国にいても日本の法律に従って自筆証書遺言をすることができます。

遺言の準拠法

 外国にいる日本人が遺言をしようとする場合、日本の法律に従えばよいのか、それとも現地の法律に従う必要があるのかが問題になります。このような外国とも関係する法律問題に適用されるべき法律のことを準拠法といいます。
 遺言についていえば、遺言をどのような形式で行えばよいのかという、いわゆる遺言の方式の問題と、遺言によって行おうとする遺贈や子の認知などの法律行為についてどのような要件を満たせばよいのかという、いわゆる遺言の実質的内容の問題のほかに、遺言能力や遺言の意思表示の瑕疵(間違い)などの遺言自体の成立および効力の問題があり、これらを分けて考える必要があります。


遺言の方式の準拠法


 遺言の方式については、わが国には「遺言の方式の準拠法に関する法律」があり、遺言は、
①遺言をする国の法
②遺言者が遺言の成立の時に国籍を有した国の法
③遺言者が死亡の時に国籍を有した法
④遺言者が遺言の成立の時に住所を有した国の法
⑤遺言者が死亡の時に住所を有した国の法
⑥遺言者が遺言の成立の時に常居所を有した国の法
⑦遺言者が死亡の時に常居所を有した国の法
⑧不動産に関する遺言についてはその不動産の所在する国の法
いずれかに従えばよいとされています。
 つまり、外国にいる日本人の場合、その外国の法律に従うこともできれば、日本の法律に従って例えば自筆証書遺言をすることも可能なわけです。


遺言をしようとする法律行為の準拠法

 次に遺言によってしようとする行為、例えば遺贈や子の認知などがこれにあたりますが、これに適用されるのはそれぞれの行為についての準拠法とされています。
 つまり、例えば父親が子の認知をしようとするのであれば、子の出生当時の父の本国法によるのが原則ですが、認知による親子関係の成立については認知の当時の子の本国法がその子の承諾等を必要としているときは(日本の「民法」が子の認知について定めています)、その要件も満たすことが必要とされています(法の適用に関する通則法29条)。遺贈については、被相続人の本国法に従うものとされています(法の適用に関する通則法36条)。


遺言の成立および効力の準拠法

 遺言能力や遺言による意思表示の瑕疵などの遺言の成立や効力については、遺言者の本国法によるものとされています(法の適用に関する通則法37条)。
 したがって、外国にいる日本人の遺言能力等については、その本国法である日本法(民法)が適用されることになります。



本テーマ次回記事

 「遺言の内容が相続分を侵害する場合の効力は
」です。