欠けたままのパズル | 学生団体S.A.L. Official blog

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ジグソーパズルをやったことはあるだろうか。
バラバラになった無数のピース。それらを前にすると、なんとかして組み立てたくなるものだ。手に取った一枚の断片をじっくり見て、未だ見ぬ完成された絵を想像する。それを何度も繰り返す。目の前にあるピースを想像力で次々と結びつけていく。

人の中にあるイメージもそんな風に作られていくのだと思う。
例えば、中国。
「大気汚染」「反日デモ」「少数民族の弾圧」「共産党独裁」
大きなこれらのピースをネットやテレビで目にして、僕らは想像力で組み合わせる。多くの日本人の抱く中国のイメージは、ガスに包まれた街並みと、過激な国民性、といったところだろうか。

ただ、イメージしていたものと本物とが違っていることはたまにある。イメージがまるっきり違うかもしれないし、想像していなかったものがあるのかもしれない。
それは、パズルにおいても、僕らにおいても。

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僕らはこの夏、20日間中国を周り、自分たちの目で中国を見てきた。

想像以上に発展し、整然した街並みだった。建ち並ぶビル街に、排気ガスの出ない電気バイク。しっかりと整備された地下鉄。ゴミひとつない車内。静かに並ぶ乗客。夜になると赤く照らされるネオン街。そして、絶えず響く人々の笑い声。

そんな中国の人々はというと、声が大きくて、面倒見が良い。「听不懂(聞いてもわからない)」と答えても、笑いとばして、そのまま語りかけてくる。いや、日本人なんだ。そう言うと彼の顔はほころび、声を高くして反応する。「日本人!?よく来たね!」そう歓迎しているニュアンスが言葉を超えて伝わってくる。彼らの大きくて早口な中国語と顔いっぱいに広がる笑顔が、帰国してから少し恋しい。

僕は、中国を純粋に素敵な国だと感じた。「発展した街並み」に「あたたかい人々」。ただ、それもまた偏ったイメージなのかもしれない。僕らが20日間で目にした中国は、そのほんの一握り、全体像の一部でしかない。

しかし、あなたが今まで目にしてきた中国は、それ以上にちいさなちいさな一部分なはずだ。

日本人の95%は中国に対し好感をもたない。「大気汚染」「反日デモ」「少数民族の弾圧」「共産党独裁」これはまぎれもなく実際にある、中国の姿。
けれど、忘れないでほしい。それは一部分に過ぎない。あなたが持っているのは中国という巨大な「パズル」のたった数枚のピースだ。

中国の本当の姿を全て理解することなど、きっと誰にもできない。広大な領土の上に、13億人の人間と無数の民族が集まる複雑な大国。だからこそ、あなたにはメディアやネットに溢れる情報を、冷静に見つめ直してほしい。人は目の前にある情報で、イメージを簡単に作りあげてしまう。その方が対象を捉えやすいのだから。
ただ、あなたの中国に対するピースはあまりにも少ない。あの国には、もっといろんな姿がある。今、頭の中にある情報だけで納得せずに、中国のことをもっと知ってほしい。知ろうとしてほしい。


僕らが出会えた中国を知らずにいては、あまりにも悲しいから。
あの赤く色づいた夜を、
あの人たちの笑顔を、知らずに。

【文責:広報局2年 臼井健太】