正義 | 学生団体S.A.L. Official blog

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正義といったら何が思い浮かぶだろう?


スーパーマン? スパイダーマン? それともバットマン?


彼らは確かに「悪」に立ち向かう正義のヒーローだ。たいした大義もなく人類を攻撃してくる連中と戦うというのは疑いようもなく正義だろう。しかしこの人間社会で正義といった時、何か引っかかることも多いのではないだろうか。





パレスチナ・ヨルダン川西岸地区にある聖地、ヘブロン。


ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地であり、アラブ人とユダヤ人の対立の最前線でもある。20年前に起きたユダヤ人虐殺により街の中心部に住んでいたアラブ人はイスラエル軍により追放され、ゴーストタウンになっている。検問所と監視カメラが中心部を囲い、その中ではほとんどイスラエル兵しか見ない。歩いていると銃弾を拾う。そんな街だ。


そんな寂しい街の廃墟で、ある看板を見つけた。



—この土地はアラブ人に盗まれたもので、1929年に67人のユダヤ人が殺害された。正義を!!我らの土地を返せ!!—



67人のユダヤ人が殺されたのは事実だろう。これに対して正義を要求するのは正当かもしれない。しかし罪のないパレスチナの人々が今までどれだけ殺され住んでいた土地を追われたのかを考えると、正義とは何かということを考えさせらせた。


何よりも、この廃墟の屋上で銃を持って監視している兵士がこの状況を象徴しているような気がした。






ユダヤ人は迫害の歴史を背負っている。ナチスによる虐殺は有名だが、そのずっと前から、二千年以上にわたって迫害され続けている。そんな中で彼らの心の支えとなってきたのは信仰であり、そして「正義」だったのではないか。そう思えた。







シェイクスピアの喜劇、ベニスの商人で悪役となっているのはユダヤ人の高利貸し、シャイロックである。


彼はユダヤ人を迫害する商人アントーニオへの恨みを晴らすため、借金を申し込むアントーニオに対し担保に心臓を貰うという。案の定借金は返せなくなり裁判にもつれ込むが、シャイロックは情け容赦無く証文通りの担保を求め、法に基づいた正義の裁きを要求する。復讐の決意は固く、いくら命乞いをしてもシャイロックの意思は変わらない。


喜劇なのでここでどんでん返しがあるのだが、そこで法官がいった言葉が印象的だ


「そこまで正義を望むなら求める以上の正義を与えよう」






正義とは何か?





シャイロックは正義か。


正義といった時、それは誰にとってどのように正義であるのか。そして絶対的な正義などあるのか、考えてみるべきではないだろうか。



【文責:広報局2年 下島 亮】