東欧ウクライナで反政府デモが起こり、政権が転覆した。
しかし、すんなりと国は大きく変わらない。
多くのロシア系住民とウクライナ系住民が住むクリミア自治共和国の帰属問題が浮上してきたのである。
ウクライナから完全に独立するのか、ロシアに併合するのか、もしくはウクライナ内での自治を強めるのか、様々な選択肢が、クリミア自治共和国民には与えられる。
ここで、戦略的要所を抑えたい考えなのか、ロシアがクリミア半島への軍の派遣を決定した。
クリミア自治共和国の人々が決めれば良い国の将来に大国ロシアが介入してきたのである。
ロシアは、「ロシア系住民保護のための軍事介入である」と言う。
戦略的要所に位置する小国の問題に大国が介入すると、ろくなことは起こらず、悲しい結末を生むことが多い。
今、私が滞在するキプロス島がそうであった。
トルコ系とギリシャ系のキプロス人が住むキプロス島は、1960年にイギリスからの独立を果たし、両系民族が混合して居住する複合民族国家としてスタートした。
しかし1974年、一部の過激なギリシャ系住民が中道路線を敷く政権に対してクーデターを起こした。
その際、大国であるトルコは「トルコ系住民の保護のため」にキプロス島への軍事介入を決定した。トルコは、クーデター後のギリシャとの平行線をたどる対話に耐えられなかったのである。
そこから、トルコ対ギリシャの構図の紛争がキプロス島を舞台に勃発した。
その当時から今現在に至るまで、トルコ軍は「トルコ系住民の保護のため」に、戦略的要所であるキプロス島の北部に駐留を続けている。
どんな言い訳をしても、1974年に軍事介入をしたのはトルコである。
そこから、キプロス島は南北の格差が顕著となり、同じ「キプロス人」の間に大きな壁が生まれてしまった。
「キプロス人」は被害者と言っても良い。
いわゆるこれが40年間未解決の南北分断キプロス問題である。
さて、今のクリミア半島はどうなるのであろうか。
国民投票をして解決すればよいことにロシア軍が介入した。
もし、クリミアでの国民投票の結果、ロシアへの併合が決まったらロシアは多いにクリミアに介入すれば良い。ロシア軍を駐留させる権利も生まれる。
しかし私は、国民投票を待たず軍を介入させることにより、今度はクリミアで悲しい歴史を生むことになるのではないか、と危惧せざるを得ない。
「保護」という目的であれば、軍事介入をしても良いのか。考える必要がある。
そこには全く人間らしさが伺えない。
人間は、相手と「対話」を通して考え、互いを暴力で傷付け合うことなく問題解決できる動物ではないのか。
私は、政治家でもないし軍人でもないから、内部のことはよくわからない。内部には「社会の壁」があるのか、妥協できない何かがあるのか。それは、私のような、社会に出ていない一学生にはわからない。
「それらのこと」がわからない幸せな今だからこそ、
学生という、理想論を並べていてもどうってことない今だからこそ言いたい。
対話が必要だ。
【文責:渉外局二年 小長谷謙治】