Nodding disease この病を発病した児童は成長が恒久的または完全にとまる。症状はその名の通り「うなずく」こと。
この名前を聞いて、ピンとくる人は今の日本にどれだけいるのだろう。実際私もついこの間まで聞いたことすらなかった。しかしそれも無理はない。なぜならこれは新種の奇病なのだから。
Nodding disease(頷き病)は5歳から15歳の子供にしか発症せず、今のところ治療法は見つかっていない。また発病がみられるのは南スーダン南部、タンザニア、ウガンダというアフリカの一部の地域。発作=頷き・痙攣が起こるのは「食事後」または「寒気を感じた時」に限られている。最終的に精神障害、発達障害を引き起こし多くの場合死に至る。原因については、諸説あるがはっきりしたことは分かっていない。
私がこの病の存在を知り、興味を持ったのは、たまたま見たテレビ番組がきっかけだった。原因も治療法も分からない。そんな中で
自分の愛する子供の命の灯が消えていくのを黙ってみているしかない母親たちの姿が
藁にもすがる思いで、なけなしのお金をはたいて呪術に頼る父親たちの姿が
すぐ‘そこ’にあった。
テレビの画面越しですら伝わってくるその想いがあったから、彼らの今をその場限りで忘れることなんて出来なかった。現在ウガンダ北部にはこの病に苦しむ子供が3000人以上。トゥマングという小村にいたっては一家に1人患者を抱えている。
「かわいそう」。そんな風に涙を流すのは簡単だ。私も時には涙する。
それでも次の朝になったらまたいつもと同じ一日が始まる。テレビを見
て、学校に行けば友達と楽しく過ごし、あり余るほど多くの‘モノ’に囲まれて過ごす。
矛盾している…。初めてそう感じたのは中学生の時だった。
そんな気持ちをかかえたまま「普通」の大学生になった私に出来ることっ
てなんだろう。正直、自分に変えられることなんてほとんどない。でも、それでも何も変わらないと言えば嘘になる。高校の時に先生が何気なく言った
「知らないことは存在しない」という言葉がそれを物語っていた。
私がテレビを通してこの問題を知り、興味を持ったのと同じように「知らせる」ということを通して
他の人の中に「存在しなかった」ことを「存在させる」ことが出来たら
どんなに小さくてもなにか行動を起こすきっかけをつくれたら
そんなドミノみたいな連鎖のヒトコマになれたら
きっと「何か」が変わると信じて。
【文責:広報局1年 松坂くるみ】