黄金のリング | 学生団体S.A.L. Official blog

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21日朝、日本列島各地で多くの目が上空を見上げることとなった。25年ぶりのその現象は、まさしく神秘的な天体ショーとなった。「黄金のリングをご覧あれ」と言わんばかりに「金環日食」は日本を横断していった。




よく知られるのは「皆既日食」だ。月が太陽を覆い隠すように重なり、日中に暗闇をつくりだす。だが今回の金環日食では、太陽は月の影に入るものの、その輪郭のみを残して黄金のリングとなって見えるのだ。空と地上に描かれた奇跡のショータイムに、多くの拍手と歓声があがったことだろう。




「世の中の物事は、直線的な発展をするのではなく、あたかも『螺旋階段』を登るように発展する」。ドイツの哲学者ヘーゲルが説いた「事物の螺旋的発展の法則」である。すなわち、螺旋階段を登る人物を横から見ると、ひたすら上へ上へと登っていき発展しているように見えるが、上から見ていると、まるで輪を描くように螺旋階段を一周周り、元の位置に戻ってくる。過去への回帰と古き価値の復活が起きるのである。ただし、この人物はこのとき必ず一段高い位置へと登っているのである。




高く高く上へと登り、空をも掴めそうな夢を抱かせるピラミッド。そんなピラミッドが有名なエジプトでは、23日、約30年間つづいたムバラク政権が崩壊して以来初となる大統領選挙の投票が始まった。13人の候補者の中から、たった一人のリーダーを国民一人一人の手で決めるのだ。自由な選択を行うのは彼らにとって事実上初めてといえる。人類の文明の礎を築いた人々の子孫である約5000万人の有権者は果たしてだれを選ぶのだろうか。




エジプトの国営紙アルアラハムの世論調査では、ムバラク政権で外相を務めた元アラブ連盟事務局長のアムル・ムーサ氏が有力であるとのこと。「自分の生きてるときに、自らの手で大統領を選ぶ日がやってくるとは」。そんな多くの希望に充ちた声が聞こえるようだ。




本日投票は終了する。アラブの春で生まれた明るい未来を信じる声。上から覗かれた螺旋階段のように、イスラーム色の強いリーダーが誕生することもあるだろう。だがそんな以前の香りとは少し違っているはずだ。この国は必ず一段上にいるに違いない。戻れど戻れどエジプト人が見るのは暗い空ではなく、ひたすら長くつづく黄金の道であってほしい。描かれたリングは国民に何をもたらすだろう。投票結果はもうすぐでる。唯一神アッラーがお決めになるエジプトの未来をしかと見届けたい。


【広報局 局長 3年 瀬谷健介】