一枚の名刺に込められたもの。 | 学生団体S.A.L. Official blog

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慶應義塾大学公認の国際協力団体S.A.L.の公式ブログです。


初めて会う人と名刺交換の場面。

「宜しくお願いします。」
「こちらこそお願い致します。」
「ん?このバナナのマークは・・・?」
「実はこの名刺、バナナペーパーで作られているんです。」
「…バナナ!?(笑)」

ビジネスの堅い雰囲気が一気にアイスブレイクされ、自然と笑いが起こる。


貧困解決やエコなどの社会貢献に、そんな『楽しさ』をうまく盛り込んだ
One Planet Cafe のバナナペーパープロジェクトを紹介したい。

* * *


アフリカ南部のザンビア共和国。
ここは壮大な大自然が残っており、人の住む地域のすぐ近くで
キリンやゾウがのしのし歩いているようなところだ。
紛争や内戦もなく、アフリカの中では一番平和な国とも言われるが、
経済的には未発達で、不十分な教育や高い失業率による貧困問題が立ちはだかっている。

しかし、経済開発によってこの大自然や生態系を崩してしまってはいけない。
豊かな自然を壊さずに人々の生活を向上させる。
「人(People)、環境(Planet)、経済(Property)のバランスが大切。PPPって覚えやすいでしょ」
と楽しそうに語るのは、One Planet Cafe の代表取締役、ペオ・エクベリさん。


そんな考えから、彼がザンビアのバナナ農園で始めたものが「バナナペーパー」だ。
今まで収穫後切り取って捨てていたバナナの茎から、紙の原料となる繊維をとりだす。
原料は捨てていたものの再利用なのでエコ、現地に雇用も生まれ、バナナ農家は倍の収入を得る。
ここで大切にしているのが、労働時間や決まりごとを現地の人々と話し合い、自立性を高めること。外部の人の一方的な押し付けでは、持続性がなくなってしまう。

取り出したバナナ繊維を古紙と混ぜて日本で紙を生産し、
紙の強さと風合いを活かして名刺などの製品にしていく。
これを社員名刺として導入してもらうよう、ペオさんは日本の企業を回った。

「一番驚いたのが、導入してもらった企業でとても好評だったこと。
 反響を聞くと、みんな笑顔で好評だと話してくれるんだ」

きっとこのブログの冒頭のようなやりとりのように、楽しいコミュニケーションがうまれ、
そこからビジネスもうまく回るというソフトなプラスの役割を果たしているのだろう。
大手企業からしても、既存の名刺をバナナペーパーに置き換えるだけで社会貢献できるので
CSRとして無理なく導入しやすい。
2000人社員の会社が名刺をバナナペーパーに切り替えるだけで、100人の村が1年間生活を安定できる、という計算もされている。


エコ、貧困解決、グローバル、バナナと聞いてくすっと笑ってしまう『楽しさ』
そんなエッセンスが、一枚の名刺にぎゅっと詰まっている。
名刺を交換する人と人、地球の裏側のザンビアと日本を繋げ、双方に笑顔を生み出している。


* * *


前回の記事と少し被ってしまうかもしれないが、私たちS.A.L.も、
貧困や難民などを堅苦しい言葉で語ったり、ただボランティアに行くだけではなく、
そんな『楽しさ』『わくわく』のエッセンスを織りまぜて
国際問題をたくさんの人に伝えていくという仕掛けを作り出そうとしている。


問題を抱えた地域、解決の手助けをする地域、その双方が笑顔になれることを願って。



【文責:広報局2年 若尾真実】