ごきげんよう、ざらめの雨です。
エリザベス宮地監督による吉井和哉とEROのドキュメンタリー映画「みらいのうた」を見てきました。
幸いにして、上映後に監督挨拶を見ることのできるイベント日の予約ができました。
まずは映画の感想から。
美しい映像とカッコいい人たち
そして現代的な問題の片りんも
まず、全体的な印象。
ドキュメンタリー映画って、こうもっと恣意的で重苦しい雰囲気だったり演出みたいなものが多いのかなと思っていたら、意外なほど自然体でした。
あんまりBGMをバンバン入れたりしなくて。ナレーションも最小で。
監督挨拶のときに、撮影や構成の方法がセルフドキュメンタリーっていう手法に近いと話していました。
その辺と関わって、すっきりとした印象なのかなと。
セルフドキュメンタリーの世界ではある意味では当たり前なのかもしれないけど、説明的なものがほとんどなくても、ちゃんと何が起きているのかというのが伝わるような映像になっていました。
説明が少ない分、収録された声や言葉が鮮明だと思いました。
監督曰く収録総時間数は500時間だったそうですから、それをたったの2時間に圧縮したら、削って削って削って、最終的に本当に重要で本当に必要な部分が残るので、必要最小限のもので本質的なものを描くことができるのかなと思いました。
映画の感想を一言で言うなら、「すごくいい映画だった」としか言えません。
ここからは私の記憶に残った印象的なシーンを挙げてみたいと思います。
①海の不思議
一番心に残ったのは、吉井さんと静岡の海のシーンかな。
吉井さんが海を眺めていて、子供の頃の回想をしつつ「(父と死に別れて)寂しかったんだと思う」って言っていて。
そのときにカメラが海面だけを映している場面もあるんですが、それを見たときに、なんかこういろんなことが頭に浮かんできて。
映画を見ているんだけど、自分自身の「今考えていること」みたいなのが、揺れる水面の上にふわって。
私も過去に海を撮影して映像作品にまとめたことがあるんですね。大学生の頃。
おだやかな瀬戸内海の風景をオクラホマミキサーをBGMにして作品化したんですが、授業の一環として作ったものだったので、授業の中で実際に流したわけです。
担当の先生がそれを見て「子どもの頃に学校でフォークダンスしたことを思い出してすごく懐かしかった」って言ってたんです。
それって、でも。
「単に音楽を聴いて懐かしい」じゃないんですよ。
なんかその光景を実際に見てきたような懐かしさなんです。
海って「カメラを通して映像として見る」と「見た人の心の中」みたいなものが、ふわっと海面に浮かび上がってくるんですよね。
実際に海を見ているときもたぶん、同じようにいろんなものが浮かび上がってくるとは思うんですが、たぶんいろんな事が同時に浮かんできてはっきりと見分けがつかない状態でうまく意識できないんです。
それが、映像としてみると、浮かんでくるものが最小限のものになるからか、ふわっと形をとって語りかけてくるんです。
それは全く言葉にならないものなんだけど、うまく切り分けられない感情とかそういうものがそのままの形をもって表れる。
海を見つめることで、自分の気持ちを見つめることができる。
それは本当に不思議なことだと気がつきました。
②真っ赤な夕日と病気のリアル
それから、海の映像と近いんですが、夕日の映像。
吉井さんが夕日に向かって大きく口を開けている映像があるんですね。
そのシーンのビジュアルは、ちょうどパンフレットの表紙になっているんですけど。
それがどういう意味かはよくわからないけど、遠くに暗くて真っ赤な夕焼けがあって、そっちに向いて口を開けてみせる。
喉の病気をそちらに向けて追い出すのか、それとも暗くて赤い陽光で病気を焼こうとするのか。
時間が経つと日が沈んでだんだん光が少なくなって、真っ暗な空に横に切り裂いたみたいな残光が本当に真っ赤で。
吉井さんの意図はよくわからないけど、
それを映していた監督の意図はわかりました。
血を表しているんだな、と。
まるで傷から滲み出した血みたいな暗い光。
そこから少し飛ぶんですが、喉に放射線治療を受けている段階の吉井さんの写真が出てくるんですね。
喉の部分の皮膚が、ちょうど湿布をはがしたら赤くなっていましたって感じに。
横長の長方形に真っ赤に炎症していて。お顔の肌も赤くてどう見ても痛々しい雰囲気。
ライブの印象的なシーンの幕間みたいな、裏側で関係者の皆さんが「どうしようか」って悩んでいるような場面で一瞬、その写真が数秒間、映るんですけど。。。。
なんというか、とてもショッキングで、その数秒がとても長く感じました。
それが病気のリアルなんでしょう。
きれい事ではなく、表面的なことではなく、痛みと辛さを伴ったリアル。
病気と闘っているという現実を端的に表している写真と映像。
(よく考えるとガン治療で思い浮かぶような、毛が抜けるとか吐き気で食べられなくなるとか、抗ガン剤のよく見る副作用的な描写はなく、ただ大量の薬を机の上にどさっと置いているシーンはありました。)
とても印象的でした。
③病そして老いと付き合うということ
それから、面白かったシーンとして印象に残っているのが、
キーボードの三國さんという方がライブの後にソファーで上半身丸出しで、
パンツもチラ見せ状態でぐったりしているところ。
年齢が高いので、ライブで頑張ったらたぶんぐったりなんですよね。
それをベースのヒーセと吉井さんが見て笑っているっていう。
ぱっと見そのシーンってあまり必要ないような気がするんですが、
映画のテーマの一つに「老い」というものもあると思うんです。
THE YELLOW MONKEYの楽曲「ホテルニュートリノ」で言う
「人生の7割は予告編で残りの命数えたときに本編が始まる」
を前提とするならその「残された3割の本編」みたいな部分。
病気になるのはその背景として、
若さを失ってしまって老いてしまったということもある。
若い頃大丈夫だったことがダメになったり、
若い頃無理してきたことが身体にダメージとなって表れる。
そして残された時間のほうがどう考えても少ない。
みたいなこと。
吉井さんの喉頭ガンも、医者からは「酒とタバコでウイルスに負けた」とかなんとか言われたそうで・・・つまり、酒もタバコもやってなかったら、病気にならなかったと医者は言うんですね。
映画のもう一人の主役EROさんは「酒もタバコもやらない医者はよくそう言うんだけど、やってる医者はそんなこと言わないけどな」と懐疑的ですが。
それはさておき。
「人間は老いる」という事実をどう扱うかということ、病気とどう向き合うかは、しばしば同時に進行することでもあるので、そんなときは当たり前かもしれないけどその2つはつながっている。
そういう状況の中で病気についてだけではなく「老い」についてより深く言及するためにも、三國さんがぐったりしている姿を入れざるをえなかったんじゃないかしら?
と、感じました。
三國さん的にはそんな恰好が映画に撮られちゃってよかったんでしょうか?と思いつつ、ライブ終わりの楽屋で楽しそうにしているメンバーの様子を見ることができてファンとして単純に嬉しく楽しく拝見いたしました。
もちろん、物語の主軸となったEROの表情の変化も印象的でした。
映画の中で最終的にEROさんは吉井さんと一緒に、近所のお世話になっている教会でライブを行うんですね。
ライブを行ったあとの、優しく晴れ晴れとした表情。
その前までとは大違いで、それがやっぱり印象的でした。
EROさんについても、あまり美化しないように(?)女性関係のダメっぽい話も出てくるんですけど、そういうバランスの調整も、宮地監督はうまいなと感じました。
(キレイに見せたければカットしたっていいわけだから)
ちなみに、ライブを終えたEROさんのその後についてはパンフレットに簡単にではありますが書いてあるので、
パンフレットは絶対に買った方がいいです。
映画の内容の補足的なことが多分に含まれているので、より詳細な部分を知りたかったら購入マストです。
あと、全体的に「祈り」の映画だと思いました。
いろんな人がいろんな形で「祈っている」と思います。
映画には吉井さんやEROさんの他にもたくさん人物が出てくるんですが、それぞれ何をどんなふうに祈ったのか、生活の中でそれがどんな風に表れているのか。
それも見どころの一つだと思います。
幸いにして宮地監督のお話を聞くことができました。
トークセッションというよりは、質疑応答みたいな感じでした。
初めはキネマMの方がいろいろお話をふって、それに答えるみたいな感じだったんですが、その後は会場からも質問を受け付けていました。
そこで印象に残ったことを書きます。
ただし、メモをとっていたわけではないのでうろ覚えで正確な表現ではないです。
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質問者Aさん:
作品を拝見して、すごく感動しました。
自分が吉井さんやイエロモンキーのことを好きだと思うのその理由みたいなものがぎゅっと詰まっていたと思います。
自分自身これまで「これで正しかったのか」と悩みながらひたすら前に進むようにして生きてきて、映画の中の吉井さんやEROさんの葛藤を自分のことと重ねて見て涙が止まりませんでした。
監督はどうしてこんなに素晴らしい映画を作ることができたのでしょうか。
宮地監督:
ご自身の人生と重ねられて、そう言ってもらえてすごく嬉しいです。
僕自身がカメラを回すモチベーションとして、「出会いには何か意味がある」と強く思っていて。
どんな出会いでも何かしら意味があるはずだと思いながらカメラを回して作品を作り続けている訳ですが、こうして作品と出会うことにも意味があると思っています。それを感じてもらえると嬉しいです。
質問者Bさん:
素晴らしい映画をありがとうございました。私は実は名古屋での上映会&監督挨拶にも参加しました。そこで、監督が言われていたこととして、「他者の中に自分を見、自分の中に他者を見る」ということがあったと思いますが、吉井さんとEROさんを撮影する中で、お二人の中にどのようなご自身を見ましたか?
宮地監督:
お二人を長く撮影していて、思ったこと、学んだことは・・・そうですね。
お二人ってすごく深刻な病気になってしまったわけですが、そのことを受け止めるのがすごい早いと思いました。
もし自分だったら、そんな命にだってかかわるような大きな病気になってしまったら、まず暴れると思います。
受け止めるのに時間がかかるというか、そんなに心を切り替えられない。
そういう受け止め方について、受け止めるのが早いのがいいってわけじゃなくて、吉井さんは自分が病気になったことを歌にしようと思ったと思うんです。人生いろんなことがあるけど、何があってもそれを歌にするよっていう。
仕方がないって受け止めてそれを別のエネルギーに変えていく。
そういう姿勢がとても学びになったっていうか。
お二人とも人生の先輩なので、とてもかっこいいなと思います。
映画の中でアニーさんが、スティックでドラムを叩くとその運動エネルギーが音と振動になって最終的に熱に変わるっていうのを言っていたじゃないですか。そういう風に出会いや出来事が違う何かに変わっていくといいなと。
先ほども言ったように、自分は「出会いには何か意味がある」と思っていて。
それはもちろん神様・・・というのは変ですが、特にあらかじめ与えられた意味なんかないっていう考え方もあると思うし、そういう場合もあると思います。でも関係ないんです。
「出会い」というものが自由に選べないのは確かで、その中で意味があってもなくても、「意味を探す」のは人の自由ですよね。
今日映画を見ていただいた皆さんに、作品を面白いなと思っていただいて、それが皆さんの生きることとか生活の中で何か力に変わってくれるといいなと思ってます。
あと、まだしばらく上映するのでお友達を5人連れて一緒に見に来てください!
ありがとうございました!!!
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というのが、私の記憶にある質疑応答でした。
もしかして、間違っている部分がありましたらごめんなさい。
ほかにも監督、桜の映像のこととか、撮影をする過程で出った偶然みたいなものとか、裏話的なものをいろいろ話していたと思うんですけど、忘れちゃってるんですみません。
あーあ、手元で紙でいいからメモをとっていたらよかったなぁ。
以上、映画『みらいのうた』の感想になります。
もう一回くらい見たいな。
円盤、出たら買おう。
ここまで、読んでくださってありがとうございました。
皆様も興味を持たれましたらぜひ映画館に見に行ってみてください。
まだしばらく上映期間があると思います。
サブのテーマソングになっている「ホテルニュートリノ」。
映画の中に出てきた吉井さんプロデュース&The Yellow Monkey伴奏による
Bish「Bey-Bey Show」。
主題歌「みらいのうた」
ぜひ聞いてください。