ごきげんよう、ざらめの雨です。
今週のゆる言語学ラジオは久保(川合)南海子先生という「プロジェクション」の研究者をお迎えして、前回からの続いて「プロジェクション」について語る、プロジェクション回後編として位置づけられる動画です。
先週感想のスキップをしたのは、前後編になると言っていたことと、「プロジェクション」というのがいまいちよくわからなかったから。
ということで、今回は感想を書きます。
●専門家と「プロジェクション」を語り尽くす1時間
2025/12/09 配信
前回の動画はこちら↓↓
●「フィリピンの賭博」と「ジャンクション」に共通点を見つけました。
2025/12/02 配信
個人的ハイライト(と一部要約)
★(序盤)最初の10分くらい
①堀元さんがジャブで無茶ぶり
水野さんがフィリピン人が「数字くじ」を日常に取り入れることを通して、「誰かの誕生日」の数字に意味づけをすることで誕生日を暗記し、人間関係を円滑にする手札として活用している(「数字くじ」は装置として機能している)という話を受けて、堀元さんが「林家ペーさんパー子さんのどちらかは誕生日で数字くじをしている」「あれ?どっちだっけ?」「林家『任意』さん」とグダグダトークをぶちかましたあげく、「林家ペーパー夫妻は認知科学的にはどうなんですか?」と先生に無茶振りする。
(プチ感想:誕生日芸はペーさんの持ちネタだったと思う。パー子さんは写真を撮る人だったような?)
②堀元さんが先生を「めんどくさい」と言って先生が涙目になる
先生の人柄を掘り下げようと、オタクを自認する先生の興味関心について質問した堀元さんが、先生の細かいこだわりなどが見える回答を聞いて「めんどくさい」を連呼。
先生がちょっと傷ついてしまって、それを伝えると、「めんどくさい人好きですから」とフォローするが、フォローになってない気がした。
ゲストをいじめないでください案件。
ちなみに、久保先生が陥った状況を表したちょうどよい言葉がゆる言語学ラジオの語録にあって、コメントから拾ってきました。
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@どっとる
8:51 メタ認知が暴走している久保先生に対して速攻で厄介扱いしてるの「オススメの本聞かれてメタモンになる~とか話してた初期の堀元さんどこいったんやー!!」となって笑いましたw
@こだぬき_ponpoko_jump
8:52 懐かしき「メタ認知暴走モンスター」じゃないかい?
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(プチ感想:メタ認知暴走モンスター「メタモン」を見ることができた、といえるようです。)
(最後のほうに当該の動画を置いておきます)
③「オタクですから」を撤回し、配慮する先生
堀元さん「大胆さと繊細さの同居がすごい」
久保先生「あのオタクはほら情緒の幅が広いから」
こんな感じに、オタクを主語にしていじられる部分を回避したり、推しの誕生日を祝うオタクを具体例としつつ自分に引き付けた話をしていた先生だが、途中であまりにも「オタクとは/オタクは」とオタクを主語に自分を話すことをしてしまったので、途中から、「オタクを主語にして話すのはよくないですね。すみません」と配慮。
(プチ感想:メタモン状態から脱していちはやくすることが謝罪と配慮。すごい、偉い。大人だなぁって。)
★(中盤)10分くらいから40分あたりまで
①推しカラーとメンバーカラー
堀元さんの紫色のバッグを話題にしつつ、
久保先生「色とか数字って抽象であり具体であるという性質があるので推しやすいですよね。」
堀元さんの水色の靴を話題にしつつ、「水野さんのメンバーカラーが水色だとすると、この靴は水野さんのもの?いや堀元さんのカバンの横にあるのだから、堀元さんのものだとすると、それをあえて堀元さんが履いているとするとその意味は?」と想像(妄想?)を広げる先生。
実際にプロジェクションの可能性を見せているわけですが、それを受けた堀元さん。
堀元さん「ちょっとエッチか」
久保先生「靴ひとつとってもプロジェクションすると情報量がめちゃくちゃあってめちゃくちゃ楽しめる♪そんな感じで」
そういう方向でいいのか、よくわからないながらも話をきれいにまとめる久保先生。
(プチ感想:さすがです。)
②クリスマスはプロジェクションの押し付け
先生も多くのオタクも、意味を外側から押し付けられるのが嫌い。
先生はクリスマスは子供のためには行事としてするけど、特に何の意味も感じない。
堀元さんは商業主義に乗らされる感じがみんな嫌なのではないか、と推測。
※この話はあとで改めて出てきます。
③マッチングアプリに「プロジェクションしてしまうものは?」という項目を足したい
人によって、何にプロジェクション(投射)してしまうかは違いがある。
何を擬人化してしまいがちか、ということを考えると、その人の個性が見える。
堀元さんは、駅(などの建物)を擬人化して捉えてしまうし、
水野さんは、漢字を擬人化・擬態化して捉えてしまう。
堀元さん「あのねじれたビル(モード学園スパイラルタワー)を見るといけ好かないインテリ眼鏡を想像する」
水野さん「自分の名前にもある『貴』という字を人に見立ててほっそり書いたりAラインに書いたりして遊ぶ」
水野さん「鬱という字がバランスが不安定なツボのように見えて面白い」
ということは、「ついプロジェクションしてしまうもの」ついて聞けば、その人の個性(どんな人か)を深く知ることができるかも。
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●24分くらい~
久保先生「人の話聞くとやっぱり全然自分と違って、『あ、そんなことするの?!』っていう驚きがあって、面白いなって今思いました。」
水野さん「ああ、そうかもしれない。確かに。」
水野さん「じゃあ、マッチングアプリとかでね、自分が何にプロジェクションしてるのかとか、欄に入れて…」
久保先生「ヒャッ!」
水野さん「どうしたんですか?」
久保先生「っヤバい人じゃない?」
水野さん「なんで?」
堀元さん「全然よくないですか?」
堀元さん「マッチングアプリの中に『自分は何にプロジェクションするか?』って言われた時に、『いや、ちょっと僕駅見た時にやっぱり駅を人に例えちゃうんですよね。』」
水野さん「いいね。」
久保先生「何座ですか?みたいな感じで『あなたの好きなプロジェクション何ですか?』って聞くの?」
水野さん「何座とか聞いてもしょうがないよね。盛り上がらない、12分の1だから。」
堀元さん「それほとんど意味ないから」
堀元さん「(久保先生に)違いますよ。マッチングアプリに『書いておく場所』を置いとくだけで、別に出会った人に聞くわけじゃないです。それでよくないですか?」
久保先生「!いいねぇ。それぐらいになってほしいね。プロジェクション。」
堀元さん「 そう、プロジェクションマッチングやったらいいと思う」
久保先生「絶対合うし、合わなくても楽しい!」
水野さん「楽しいと思う!その会話したいもん」
堀元さん「したいね」
水野さん「何にプロジェクションしているのか会話したいもん」
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④②’クリスマスはプロジェクションの押し付け
→ジャンクションのプロジェクションは絶対安全領域にある
水野さん「プロジェクションには純度があるし、主導権は自分で持っていたい。」
堀元さん「プロジェクションの権を他人に握らせるな」
100日目のワニの最後のプロモーションとか、オリンピックやチャリティー番組の感動はダメ。
久保先生曰く「期待しただけの同じ熱量をもって反転する。」と。
堀元さん「あんまりいい言葉じゃないけど感動ポルノとか言われたりする」
久保先生「そうそうそう。だからそれは自発的かどうかっていうところがすごく効くんだと思うんです。
堀元さん「 面白い。だから強制させちゃだめなんだ他人に。」
水野さんは、ジャンクションの写真集を例に、「(著者の)大山さんは(ジャンクションや団地という)絶対に外側から意味を押し付けられない対象をとって完全に安全な領域でプロジェクションをしている」と分析。
(プチ感想:プロジェクションが楽しいこととそれが自発性に支えられていそうだという示唆。詳しく掘り下げられないけど、なぜそうなのかというのも興味深い)
⑤ダンゴムシから恋愛ゲームを作ろうとした堀元さんはプロジェクション好き!?
アナロジーが好きであると自称する堀元さん。
堀元さんは、かつてダンゴムシの生殖からヒントを得た恋愛ゲームを作ろうとしたことがある。
曰く「ダンゴムシは雌が交尾した後、受け取った精子を保管しておいてそれがなくなるまで使ってしまうので、自分の遺伝子が残りづらくなるため雄は圧倒的に処女厨になる。さらにときどき感染症にかかると雄が雌化する。という話を知って恋愛ゲームにしたら面白いと思った」と。
水野さん「堀元さんはしょっちゅうプロジェクションやってる。」
堀元さん「失敗たとえ話が大好きで収集している。失敗していると面白いと思う。」
(プチ感想:ダンゴムシについての知識が増えました。)
★(終盤)40分くらいから最後まで
①人前に出ると自分もプロジェクションされちゃう
水野さん「友人の中には僕の出ているYouTubeを絶対に見ないという人がいる。また著書出版後に招かれてソロで出た動画に『足がクサイ』などの悪口を書かれる。見ている人が自分のプロジェクションを守りたいと思っている。」
堀元さん「みんなが自分に対してプロジェクションしてくるイメージを時々は壊したい。固まってほしくないから。そう思ってnoteで違うテイストで記事を書いたら、一番売れたけど一番叩かれた」
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●41分くらい~
久保先生「インターネット芸人さんとかアイドルだけじゃなくて、やっぱ普通の人もある程度はそういうプロジェクションする。理想の彼氏でありたいとかね、例えば。 だから親にとっていい子ありたいとか、でも反抗してみるとか。ああいうのは、コアだけじゃなくやっぱガワも含んだ、私たちのこう生きてる姿の中でプロジェクションってすごくあるなと思う」
●43分くらい~
水野さん「和泉悠先生が『悪口って何だろう』っていう本を書いたんですけど、その本に書かれていたのって、『悪口ってのは世界にある除列を言葉で作り替えることなんだ』っていうようなことを言ってたんですよね。だからどの国にもジョークがあるのって、「偉い人っていうのの序除列を言葉上で操作することができる」っていうことの証明だと思うんですね。」
水野さん「自分の気に食わない人とか例えば政治家にあだ名をつけるのってプロジェクションのもちろん悪い面でもあるんですけど、でもすごい本質的な部分も宿ってる気がする。『俺はお前のルールの序列の並べ方をしないぞ』っていう意思表示の現れでもあるわけですもんね。」
堀元さん「なんか世界面白くなってきましたね。どんどん。」
水野さん「 だからそう、さっき初回で言ったけど世界ってプロジェクションを通してみるとおもろいんですよ。」
②水野さんから真面目な質問
●48分くらい~
水野さん「ここまですごいプロジェクションという概念の便利さとか万能さよく分かったんですけど、こんだけ話すと僕逆に気になってくることがあって、何でもかんでもプロジェクションって言えてしまうのってそれはモデル化として科学的な価値がどこにあるのかってのはちゃんと最後に聞いておきたい」
久保先生「プロジェクションは1つの大きな概念であり、枠組みであり、ものをみるときの見方、視点です」
水野さん「その枠組みを使うと散らかった状態がより片付いた状態になる?」
久保先生「プロジェクションという視点を入れると大きな部屋をより俯瞰して見える。『自分で世界を意味づけている』という働きが私たちにあるということを知ってもらいたい」
水野さん「文系のフワっとした話に見えるけど、先生のバックグラウンドはその逆で実験や統計処理から始まって……その点からはどうですか?」
久保先生「はい、ゴリゴリの実験心理学者で、老齢の猿を対象に実験論文を書いてました。身体的な面からは、たとえばゴム製の手の模型を筆でなぞったり叩いたときの身体反応を見るなど実験を伴った研究が行われています」
③堀元さんからアダルトVRの没入感について質問
堀元さん「アダルトVRは男優さんの目線になるんだけど、男優さんと自分の体型などが違うことで没入感がそがれる。それはどうしたらいいのか?」
久保先生「触手目線になったらいいのでは?不気味の谷みたいな、微差が気持ち悪いという現象だとすると、誰もなったことがないものなら違和感を感じないのでは?」
堀元さん「じゃあ触手のアダルトVR作ります!一緒にやってもらって、ぜひ業績として。リサーチマップで検索すると『アダルトVR監修』って」
久保先生「絶対嫌です。」
内容がいっぱいで楽しい動画
長くなったなぁ。
記憶だけならもっとスカスカになっているんですが、文字起こしを見ていると、「あれも入れたい、これも入れたい」で長くなりますね。
これでも頑張って端折ったんですけどねぇ。
1時間もあると、こんなもんですかね。
まとめてみると、結構ちゃんと重要な話が要所要所で出てまとめられているみたいで、水野さんってすごいなぁって感じ。
終盤、科学的にどうか、みたいな話になると少し難しくなってきた。
その流れで最後に堀元さんがアダルトVRの話をしてオチを付けて大団円である。
バランスがいいと思った。
堀元さんのメンバーカラーが紫で、水野さんのメンバーカラーが水色というのは初めて知った。
なるほど~である。
今回はそれを踏まえて、堀元さんの発言を薄紫色、水野さんの発言を水色、久保先生の発言を薄黄色でハイライトしてみた。
今後もこの方針でいこうかな。
月並みな感想
プロジェクションっていうのは、聞きなみじみがなくて 、まだ新しいものなのかな?という感じがして、個人的にはあまりよく理解できてない気がする。
たぶん、みんなよくやってることだし、いろんな場所で、普遍的に見られる現象かなっていうのは理解できるんですけど。
久保先生のそれを「広めたい!伝えたい!」(=流行らせたい?)みたいな熱意を見ると、これから研究の世界でも、10年ぐらいしたらもうずっと広がって、いろんな人が研究に取り組まれるかなっていう印象を受けました。
もう少ししたら、
『プロジェクションから見る●●』とか
『●●にきく、プロジェクションの効果』とか
そんな感じの本が次々に発売されるのではないでしょうか。
とても面白い研究だと思いました。
その頃には、我々一般人も「ちょっと聞いたことあるから、わかるかな」っていう風になってるんじゃないかなと思います。
今後の発展がすごい楽しみな、ジャンルというかキーワード。
すごく「これからの社会を読み解くキーワード」になってるなっていうのを感じました。
あと、「今専門的な本はここにある4冊ぐらいしかない」っていう風に 久保先生 おっしゃってたんですけど、その始まりは、もっと前から遡っていけるぐらい、きちんと蓄積があると思うんです。
それが普及していくにはやっぱりラグがある。
ある程度時間がかかるものなので、ゆる言語学ラジオ、なかなかいい 着眼点で素敵な番組をやってるなと思いました。
あとから見ると、つまり、もっと未来からこの動画を振り返ってみると、すごく早い段階で発信してるってなると思います。
何にプロジェクションしちゃう人?
昔Twitterにいたころ、アンパンマンのキャラクターを男性性・女性性の発達みたいなものに当てはめて考えてみたりとか、 父性を持たないまま男性性だけを強められた女性が宦官に似てるとか、そういう話をよくしていたので、そっち系ですかね。
例えば、バイキンマンとかは、若い男性。
ヤンチャで好奇心と向上心に溢れている未成熟な男性で、反対に十分成熟した父性のある状態の男性をアンパンマンだと見る。
あるいは、ドキンちゃんは未成熟な若い女性。
とても魅力的だけど、他者に対して責任を持たない。
恋愛感情によって献身をする気持ちは起きることがあっても、周りを振り回すのも楽しいし、そうやって相手を振り回すことも自分の一部だと感じているような、ピチピチに若い女性はドキンちゃんだなって思う。
母性を獲得した女性っていうのは、実はアンパンマンのキャラクターの中には出てこなくて、多分それはアンパンマンを見てる幼児が背中に母親を感じながら、母性に包まれた環境でそのアンパンマンって作品を鑑賞するっていうことと、たぶん関わってるんじゃないかなと思っています。
みたいなことを私はよくやっているので。
そうですね。やっぱり個性が出ますね。
でも、なかなか自分が何にプロジェクションしがちかって、ゆっくり考えてみないとわからないものですね。
たぶん、今書いた以外にもいろいろとある気がします。
動画にリンクされている本(一部)と水野さんの本
リンクは楽天市場です。
動画のリンクは基本的にValueBooksみたい。
それでは、今日はここまで!
またお会いしましょう♪
素敵な一日になりますように(*^^*)
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●メタモン座談会をやったら、戦々恐々と喋る空間が生まれた【公開収録2】#141
2022/07/12配信




