「経営コンサルタント」とか「企業診断士」と言われる方々がいます。
彼らはどのような仕事をしているのでしょうか。
多くは経営分析(特に財務)を行い、健全な経営が行われているかを診断するようです。
彼らは「プロの経営者」あるいはそのブレーンと言えるのでしょうか。
人間の体に譬えてみましょう。
お医者さんは診察をし健康な状態に回復する、あるいは維持する手助けをします。
そのために色々な検査があり、検査値には基準値があって、健康かどうかの判断を行います。
お医者さんの言うことをきいて健康を維持できたからと言って、それだけでスポーツなどで優秀な成績を上げることができるでしょうか?
いえ、スポーツで勝つためにはコーチやトレーナーが必要です。
健康なだけでは勝てませんし、一般的な健康尺度を全ての人にあてはめてもいけません。
大相撲の幕内力士の平均身長は約185センチ、平均体重は150キロ超だそうです。
この数字だけを見れば明らかに肥満です。
この数字だけを見て力士に減量をさせればどうなるでしょう。
まず勝てなくなるでしょうね。
ラグビーの選手なども同様でしょう。
また多くの力士は尿酸値が高く痛風の危険があるそうです。改善策として高タンパク質の食事を減らすようにすればどうなるでしょう。
力士としてはやっていけないでしょう。
企業は競争を強いられています。人間で言うならばスポーツなどで勝つことを求められています。
経営診断で健全な経営ができているからといって、それだけでは競争に勝つことができるわけではありません。
逆に業績を大きく伸ばしてきた企業に普通の診断尺度で測っていいのかどうかをよく考えなくてはいけません。
10年以上前ですか、アメリカの格付け会社がトヨタ自動車の格付けを1ランク落としました。その理由が「リストラをしないから」だそうです。
バカな話だと思いませんか。当時の奥田社長は一笑に付したそうです。
残念ながら多くの経営分析は勝つためのコーチやトレーナーの役割を果たしていません。
近年アメリカにおいてもビジネススクール出身者はあまり役に立たないと言われているそうです。
勝つことと健康とは同じではありません。
この点を良く理解しておかないと経営に失敗します。
一代で企業を大きくした創業者は勝つ術を知っていたから、成功したのです。
しかし、健康が維持できていたかどうかはわかりません。
その後継者(世襲の高学歴の二代目や「プロの経営者」)は健康診断ができるお医者さんかもしれませんが、勝ち方を知っているかどうかは不明です。
健全な経営指標を保っているからと言って、業績が向上するわけではありません。
逆に業績が良いからと言って、健全な経営とも限りません。
だが、一流のアスリートならば勝つためには健康に留意する必要があることを知っています。
企業も業績をあげるためには健全な経営を心掛ける必要があります。
しかし経営分析しか出来ない人では企業を成長させることはできないでしょう。
前回書いた大塚家具のケースでは、創業者が身を引くべきだとは思いますが、後継者である一橋大学出身の長女が経営したからといって業績がよくなるかどうかはわかりません。創業者と敵対関係になり、その勝つ術を学ぶチャンスを失ったことは大きなマイナスでしょう。