最近の話題のひとつに大塚家具のお家騒動がありますね。
大塚家具の創業者である会長とその長女である社長が対立し、株主総会でそれぞれ相手の取締役解任を決めるべく株主の委任状の争奪合戦を始めています。また記者会見等を行い自己の正当性を主張しています。
同族企業とはいえ、上場企業でこのような騒動が起こるとは珍しいことでしょう。
経営方針の違いということで、創業者と長女それぞれの言い分はうなずけるところもあります。
創業者の進める高級路線は創業以来の戦略でそれによってここまで成長してきた実績もあり、その戦略に自信を持っているのは当然のことでしょう。
しかし、近年のIKEAなどの台頭による業界環境の変化によって業績が思わしくなくなり、長女がカジュアル路線に舵を切るのも理解できます。
私がまず最初に感じたのは、成功してきたとは言え創業者がいつまでもその戦略にしがみついているのはどうかなという点です。
創業時と現在は業界環境をはじめ世の中が変わってきています。その中では普遍の戦略というものがあるのかということは常に自問自答していないといけないでしょう。
近い将来になくなるという「ダイエー」のブランドですが、ダイエーの創業者の中内功氏は数十年前には業界の風雲児でした。アメリカから持ち込んだスーパーマーケットの手法でそれまでの小売の王者である百貨店に打ち勝ちました。しかし、今の状況を見れば分かるように、その中内さんですら晩年は時代の波を読み間違い、あの大企業が一代で終焉をむかえてしまいました。後継者の育成とそのバックアップに失敗したと言えるでしょう。
大塚家具の創業者もせっかく男女の枠にとらわれず、子どもの中でおそらく最も優秀と思われる長女を後継者に指名したのですから、そのバックアップに努めるべきなのではないでしょうか。
アドバイスをしたり社内・社外の調整を手伝うことはあっても、自分と考えが違うからと言って排斥するようでは企業の経営者としてはどうかと思います。最も被害を受けるのは従業員です。その点は是非考えてほしいものです。
ですから私は基本的には現社長である長女がリーダーを続けるべきだと思います。
しかし、長女の言うカジュアル路線が正しいと思っているわけではありません。
IKEAなどの台頭によって業界環境が変わったからと言って、その戦略を追随するようでは後塵を拝することになるのではないかと思います。
やはりこれまでの強みを生かす独自の戦略を立てる必要があるでしょう。
その点では創業者の主張する高級路線も捨てるには惜しいものがあります。
昨今は格差社会と言われています。富裕層と貧困層の2極化が進んでいます。そういった環境では平均的な層を狙うよりはどちらかの層に的を絞った方がいいでしょう。その点では富裕者層への営業ノウハウを持っている点を活用するのは有力な戦略だと思います。
このあたりを社内でもっと緻密に練り上げる必要があるでしょう。
現社長もワンマンで自分の考えだけで突き進んでいるのかもしれませんね。
ところでワイドショーやニュース番組のコメンテーターの中には、「高級路線もカジュアル路線も両方やればいい」と無責任な発言をする人がいます。
経営戦略としては最も愚かなものでしょう。
両方やればコストがかかり利益を圧迫しますし、営業的にもどっちつかずになりジリ貧となるでしょう。
今後の動向を見ていたいと思います。