営業はそのプロフェッショナル・スキルが身についていれば転職によってステップアップが可能だと思います。
しかし、これを企業側から見るとどうなるのでしょうか。
営業という仕事の流動性が高いということは優秀な人材を雇うには高待遇が必要となります。またせっかく育成してもスキルがつくと会社を辞めてしまうということになります。企業の経営者や営業管理職にとってみれば堪ったもんじゃありません。
Jリーグのチームでありがちですよね。ユースから育成して一人前に育て上げるとヨーロッパのビッグクラブに行ってしまうのでチーム成績に貢献してもらえません。ただJリーグならば移籍金というものが入ってきますからまだましかもしれません。
企業では移籍金も入って来ないので、全くの育て損となってしまう可能性があります。
安倍内閣や最近の経済界では人材の流動性を高めようとしていますが、どうなんでしょう。
営業に限らず人材の流動性が高まると育て損が起こります。すると企業としては育てる意欲がなくなります。結果としては全体としてスキルを向上させる環境が貧相になってしまうと私は心配しています。日本という国の力が衰えるのではないでしょうか。
社会全体の問題はさておき、一企業あるいは一管理職としてはどうすればよいのでしょうか。
営業は使い捨てで、成績の悪い奴は辞めればいい。優秀な奴だけが残ればいい。と言う人がいまだにいるようです。
これは50年前のように若い人が沢山いた時代ならそれでもよかったかもしれません。しかし今のように若い人が減ってきた状態ではこんなことでは人材は確保できません。
人材確保にはもっと真剣になる必要があります。
一番分かりやすいのは待遇を良くすることです。こうすれば離職率は低くなりますし、優秀な人材の応募も多くなります。
ただ、これはコストにまともに跳ね返ります。したがって営業戦略として安売りを行うようなことはできません。お客様に価値を認識していただき、リーズナブルな価格で買っていただく必要があります。それには優秀な営業が必要です。
プラスのループ、すなわち優秀な営業によって高い利益率を確保できれば待遇を良くすることができます。
しかし、マイナスのループ、すなわち優秀でない営業によって価格競争に巻き込まれ利益率が下がれば待遇が悪くなり優秀な営業がいなくなる、という悪循環に陥ることになってしまいます。
私はプラスのループを目指すのが経営者や管理者としては王道だと思いますが、最初からそうは行かないこともあるでしょう。
それならば次善の策として考えられるのは、待遇以外にも営業が会社に忠誠心を持てることです。
心理学では「自己実現欲求」と言うのがあります。自分の能力を向上させ、その能力を発揮し、それを適切に評価してもらう。そういうことを人間は望んでいます。
したがって、経営者や管理職が常に念頭に置かなくてはいけないのは、教え導き、活躍の場を与え、適切に評価をする、ということです。
サッカーの世界を見ても、いかに優秀な選手でも試合に出してもらえないチームからは去っていきます。
残念ながら、経営者や営業管理職でこれを理解していない人を多く見かけます。
育て、使い、評価する、これができていない企業や組織では強い営業力を持つことはできません。