ちょっと図に乗って、もうひとつ | 営業は科学だ!  Welcome to the Science of Sales

営業は科学だ!  Welcome to the Science of Sales

3K(勘、経験、気合)で語られる営業ではなく理論的に体系だった手法により、第一線のセールスのスキル向上とともに適切な部下の指導や業績管理を行い会社に貢献できる管理職、経営者の一助となる。

前回の記事に対して「いいね」と「コメント」をいくつか頂きました。
ちょっと図に乗って、もうひとつ事例を紹介したいと思います。

前回の事例は「需要」を見つけ出し「供給」を行った例です。
今回は「供給」から「需要」を作り出した例です。

ですから営業の話とはちょっと違っていますが、お許しを。
どちらかと言うと企画開発の話でしょうか。
でも発想の柔軟性ということで面白いと思います。

今回はネスレについて書いてみます。
スイスに本社を置く世界最大の食品・飲料会社です。
ネスカフェと言えばおなじみでしょう。

19世紀以前は牛乳を冷蔵して輸送する技術もなく鉄道網もそれほど発達していません。
牛乳はバターやチーズに加工されて流通するのが一般的でした。アルプス山中にある国スイスでは特にその傾向が強かったのです。
そのような時代に薬剤師のアンリ・ネスレと言う人が母乳で育つことの出来ない新生児のために粉ミルクを開発しました。

これがネスレの中核となる技術の走りです。
要するに液体飲料を固体にし、長期保存と大量輸送を可能にしたのです。
これによりスイスで余っていた牛乳が粉ミルクとなってヨーロッパ全土で消費されるようになったのです。


ところで、いよいよブラジルでW杯が始まりますが、ブラジルの代表的な料理にシュラスコという肉料理があります。
これに代表されるように南米での牛肉の消費量は世界トップクラスです。(ちなみに世界で最も食べられている肉は羊だそうです。)

もともと南米で多くの牛が飼育されたのは肉を食べる為ではありませんでした。
皮革の為に飼育されていたのです。
牛肉を食べるのはついでのようなものだったのです。
しかし、消費する以上の牛がいたので、牛肉は余ってしまっていました。もったいないことに皮革を取った後の牛肉の多くは捨てられていたのです。

これに目をつけた人がいます。
この余った牛肉でスープを作りました。
そしてそれを固体にし、ヨーロッパで販売したのです。
彼の名前はジュリアス・マギー。どういうわけか彼もスイス人です。彼がネスレから技術を学んだのかどうかは残念ながら明らかではありません。
粉ミルクと同様これも一世を風靡し、料理にスープの素を使うという新しい食文化を作り出しました。
これが「マギーブイヨン」です。


ところで、インスタントコーヒー(ソリュブルコーヒー)を最初に開発したのは日本人だということをご存知でしょうか。20世紀初頭の万国博覧会に出品されたとのことです。
しかし、お湯で戻しても単なる苦い飲み物で、コーヒーのあの香りを再現できておらず、とても商品として販売できるようなものではなかったようです。

1930年代、ブラジルではコーヒーの大豊作が続きました。そのために激しい値下がりが深刻な問題となりました。
そこでブラジル政府は、すでに粉ミルクによって世界有数の食品企業となっていたネスレ社に対策を要請しました。
ネスレは得意の液体を固体にする技術を活用してインスタントコーヒー(ソリュブルコーヒー)の商業化に成功しました。
ネスカフェです。
第二次世界大戦の際にはアメリカ軍がネスカフェを採用し、戦後一気に世界中に広まりました。

その後、ネスレ社はマギー社を合併しました。
液体飲料を固体化する技術をほぼ独占することになったわけです。

一つの技術も目の付けどころ次第では大きくて多彩な市場を作り出せるという例ではないかと思います。