「シャベルを売った」P&GとIBM | 営業は科学だ!  Welcome to the Science of Sales

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19世紀、アメリカのゴールドラッシュで一攫千金を夢見た多くの人々が西部に向かい砂金を掘りあてようと試みました。一部の人たちは砂金を掘りあてて大儲けをしましたが、多数の人は夢がかないませんでした。
そんな中で、砂金を掘る人達にシャベルを売る人達がいました。この人たちも実は大儲けをしたのです。

マーケティングの教科書に出て来る話です。

ではシャベル以外のもので同じように儲けた人っていないのでしょうか。

ゴールドラッシュから時は流れて約20年、南北戦争が起こりました。
この時に儲けた人ってどんな人でしょう?
ウィンチェスターなどの武器商人?当然でしょう。商売しに行かない方がおかしいでしょう。
でもそれだけではなかったのです。

軍隊は多くの人間がいます。しかも野営続きで体も着るものもドロドロです。
そんな時に必要なのは、そう、「石鹸」です。
軍隊の基地は夜も明るくしておかなくては危険です。いつ敵が夜襲を仕掛けて来るかわかりません。
そんな時に必要なのは何でしょう。当時は電気もありません。そう「ロウソク」です。

南北戦争をさかのぼること約30年、1837年に石鹸製造業のジェームズ・ギャンブルとロウソク製造業者のウィリアム・プロクターという義兄弟(妻が姉妹)が共同で会社を作りました。その会社の名前は二人の名前をとってプロクター・アンド・ギャンブル (Procter & Gamble)と名付けられました。そうです、現在世界最大の一般消費財メーカーP&Gです。
P&Gは南北戦争時に石鹸とロウソクで大発展の礎を築いたと言っても過言ではないでしょう。もちろんその後の卓越した製品開発力やマーケティング力があって現在の地位を築いたことは言うまでもありません。

もうひとつ20世紀で例をあげてみましょう。

今から30年、あるいはそれ以上前のIT業界はIBMという巨大企業を中心に動いている「一強多弱の時代」でした。
それが1980年代のパソコン登場から勢力図に変化が生じてきました。
さらに大きな変化は1990年代に登場したインターネットです。
このような環境で新しいビジネスモデル、すなわちネットビジネスが生まれました。アメリカではAmazon、日本では楽天などが代表的な名前ではないでしょうか。

世界中でこの新しいネットビジネスに多くの会社が参入し、新しい会社が雨後のタケノコのごとく数多く生まれました。
それはまるで19世紀のゴールドラッシュを思わせるものです。
その中で巨大企業IBMはまるで恐竜のように環境の変化に対応できず、ネットビジネスに舵を切ることに遅れをとりました。
当時のビジネス界では「ネットビジネスに乗り遅れたIBMはもう終わりだ」と言われたものです。

ところがどっこい。確かにIT業界の中心という地位からは降りてしまいましたが、会社としては引き続き利益を上げ続けていったのです。
何を行ったのでしょうか。
ゴールドラッシュのシャベル売りと同じように、IBMはネットビジネス企業にサーバーを売ったのです。
砂金を掘るのにシャベルが必要なのと同様に、ネットビジネスにサーバーは必須です。
しかもネットビジネス企業の業績が拡大すれば、必然的に大きなサーバーが必要となりIBMは儲かったのです。

多くの経済学者や評論家やアナリストはゴールドラッシュのようなことが起こると砂金のことしかリアルタイムでは見ていません。ビジネスチャンスを見つけて成功する人を早くに発見することは出来ないようです。成功者を後から分析するのは得意なようですが・・・・・・

ビジネスで成功するにはゴールドラッシュで砂金以外で儲かることがあるかを探し出す柔軟な発想が重要です。
案件を増やし成果を上げる営業にも同様な柔軟性が必要です。

営業として成功し、その後起業して成功した人って結構いますが、その人たちにはこのような柔軟な発想があるのだと思います。