前回は中盤の心構えとして、「失敗を恐れず、Never Give Up!」をお伝えしました。
世に言う「体育会系」の方々が就職活動で有利、あるいは営業に向いているとよく言われるのは、この点において訓練されていてメンタル面がしっかりしている人が多いからだと私は思います。スポーツの試合で勝ち続けることができるのはほんの一握りで、大概の人は勝ったり負けたりしています。(トーナメント方式なら半分の選手/チームが0勝1敗となる理屈になります) ですから負けることによって落ち込んだり、愚痴ったりすることが少ないのではないでしょうか。
逆に「体育会系」の反対である「書斎派」とでも言うべき方々は、この点を意識すれば良いわけです。決して体力を要求しているわけではないのだと思いますよ。頭でっかちになり、変なプライドによって負けることを恐れて実戦を避け、実戦経験が少なくなってしまうことが問題なのです。意識を変えてしまいましょう。趣味であるゴルフや囲碁なら時間やお金の制約で実戦経験が乏しくなるのは仕方がない面はあります。しかし、営業は仕事ですから自分さえ逃げなければ実戦経験は会社が嫌というほど積ませてくれるはずです。
さて、実戦の重要性はお分かりいただけたかと思いますが、では実戦だけでいいのでしょうか。
前回述べたゴルフの「練習場シングル」や囲碁の「旦那碁」の人たちをコテンパンにやっつける実戦派の人の中にも、ある段階で停滞してしまう人達がいます。ゴルフでは「万年90」、囲碁では「万年初段」と言われる人達です。
この人たちは実戦経験が豊富なので「勝ちパターン」を持っています。中盤戦の色々な困難やトラブルにおいては、この得意の「勝ちパターン」に持っていくことによって困難をしのぎます。これがこの人達の強みです。
しかし我流で理論的な裏付けに乏しいので得意の勝ちパターンに偏りがあり、通用しない場合には全く通用しません。「万年90」や「万年初段」の人は下には強いが上にはめっぽう弱いことが多いようです。
理論の裏付けがあれば実戦で経験したことが相乗効果をもたらして、1の経験が5にも10にもの経験に相当する力を身につけることができます。
理論と実践は車の両輪でどちらも欠けてはいけません。
こうすることによって、ゴルフならば「シングル」、囲碁ならば「アマチュア高段者」に進むことができます。
プロは当然この道を通ってきているわけです。
そこで、この両輪を身につける方法です。
私のお勧めは、ゴルフならばプロによるラウンド・レッスン、囲碁ならばプロによる指導碁を時々受けることです。プロが無理ならばシングルの人やアマチュア高段者に実戦で教わることです。
プロは困難な状況に陥った時の対処法の引き出しを多く持っています。しかもそれを裏付ける理論も持っています。ま、伝え方が下手な人もいなくもないですが。(特に超トッププロには) 実戦の中で起きたトラブルをその環境でベストな対処法を教えてくれますし、生徒側のいつも共通する欠点を把握し、それに適した練習方法なども教えてもらえます。
気をつけて欲しいのは「万年90」や「万年初段」の中にいわゆる「教え魔」が多いということです。こういう人が教えてくれることは、断る必要はありませんが自分なりに理論づけが出来るようにして取り入れることがポイントです。
では営業では具体的にどうすればいいのでしょうか。
可能ならば上司、先輩に同行をお願いしたり、それが無理でも色々と相談をすることです。結構みなさんこれを嫌がりますよね。お客様に行って叱られるだけでも嫌なのに、さらに上司や先輩からああだこうだとクチャクチャ言われるのは嫌だ。その気持ちは良く分かります。しかし学ばないと上達はありません。
もうひとつの方法は「ロールプレー」です。営業とお客様をそれぞれ演じて練習するわけですが、お客様役をするのも勉強になります。ロールプレーについては重要ですので別に稿を一つ設けたいと思います。
逆に上司にあたる管理職の方々へのお願いです。営業に対して根性論だけを説くのは止めてください。理論的に良い点、悪い点を理由を上げて指摘してください。そして対処法については、すぐに教えるのではなくまず自分で考えさせてください。自分で思いつくように持って行ってやってください。悩みぬいて悩み抜いて得た答えは真に自分の血や肉になります。多くの管理職は営業に対して、まず叱責し、次にすぐに指示をしてしまいます。時間が無いのはよく分かりますが、そこをじっとこらえてください。それが管理職の人材育成の要諦だと私は信じています。
「実は自分は営業の経験がないので、そんな理論は持っていない」という管理職もおられるかもしれません。それならばこれまでに書いた「四つの不」や「購買性向」の考え方で分析するようにしてみてください。
さて余談に近くなりますが、「練習場シングル」や「万年初段」などの表現を使ってきましたが、これが営業で言うとどの程度のレベルなのかを簡単に記しておきます。
ビギナーはさておき、
① 「練習場シングル」 「旦那碁」
営業で言えば本で読んだ知識は多いのですが、実績を上げられず自分の給料分も稼いでいないレベル。
特に良くないのは言い訳の多い人。
② 「万年90」 「万年初段」
一人で営業ができ、自分の給料分は稼いでいる。ただ会社に十分な利益をもたらしているかというと、やや疑問。
年功序列の会社ではこういった人でも係長や課長になってしまっている場合もありますが。
③ 「シングル」 「アマチュア高段者」
自分なりの理論を持っており、大概の状況には対処でき、人にも教えることができる。会社の利益にも大きな貢献をしており、表彰なども受けている。ヘッドハンティングの対象となる。
④ 「レッスン・プロ」
しっかりした理論を持っており、多人数の部下にも的確な指導がで、育成できる。自分で実践して見本を見せることもできる。
管理職はこのレベルが望ましい。
⑤ 「トーナメント・プロ」
理論、実績とも図抜けている。自分で大口商談を決めてしまうようなスーパー営業部長など。ヘッドハンティングの話が結構来る。
同行してもらえると頼もしいことこの上ない。
しばしば部下の指導・育成に興味がない場合もある。この場合は管理職としては不適格かも。
②と③の間にも一つレベルがあるのですが、適当な表現が見当たらなかったので書いていません。何となくイメージは分かっていただけると思いますが。
さて、中盤の話は自分も大変苦労しただけあって書きたいことが一杯あります。
しかしそれではいつまで経っても「終盤」の話に進めないので一旦打ちきります。また機会を見つけて書くようにします。