さて、いよいよ終盤です。
ゴルフで言えばグリーン上のパット、囲碁で言えばヨセ、そして営業でいえば交渉です。
それまでの勝ち試合を勝ちきる、負け試合を逆転する大事な段階です。
すでにお分かりとは思いますが、終盤ではミスをしても取り返す機会はありません。一打、一目のミスで負けてしまうことがあります。
ゴルフのトーナメントでは最後にパットを一つミスして順位が一つさがり、一瞬にして何百万円の賞金差がでてしまいます。それでよくゴルフでは「パット・イズ・マネー Putt is money. パットは お金だ」と言われます。「ドライバーはショー、パットはお金」と対句になっています。
営業でもそうです。交渉を失敗すると会社の利益が吹っ飛びます。
たとえば900円で仕入れて1,000円で売る、粗利100円の商売とします。それをお客様の言いなりに5%の値引きをすれば950円で売ることになり粗利は半分の50円になってしまいます。
粗利が半分になるということは単純に言っても倍の売り上げを上げなくてはいけないということです。
お客様に見えるのはたかが5%ですが、会社にとっては50%の減益です。
ですから安易に値引きをするのは慎まなくてはいけません。
よく見かけるのはお客様のプッシュによって、ただ値引きをするだけの営業です。これでは営業の役割を果たしていません。
値引きをする以上、お客様にも何らかの制約を課さなければいけません。一番ポピュラーなのは期限です。「いついつまでに契約をいただければ」、「いついつまでに納品・売上をさせていただければ」といったような感じです。あるいはもう一つ買っていただくと割引するといった、数量的な制約とかもありますね。
しかしあまり欲を出しすぎてもいけません。
まず契約を頂くのが最優先です。
ゴルフで1パットを狙って結局3パットをしてしまうということがアマチュアにはよくありますが、最も避けなければいけないのは3パットです。必ず2パット以内いで納めるようにしなくてはいけません。ここでパッティングの技術が問われます。プロは10メートルでも狙いに行きます。そしてそれを外しても2パットに納めます。しかし技術のないアマチュアは10メートルを狙っても入る確率は低く、さらにはずした時は3パットにしてしまいます。自分の技量に応じて1パットで狙う距離が変わります。5メートルに人もいれば3メートルの人もいます。技量次第です。
営業も同じです。交渉力があれば、安易な値引きをしないで受注できる可能性が高いのです。大きな値引きをしなくてはいけないのは自分の交渉力が未熟だとの自覚を持ってください。まず交渉力の向上に努めてください。しかし自分の技量が低ければあまり欲を出しては元も子もなくなるということも忘れないようにしてください。
ただ、ゴルフや囲碁のような個人戦ではなく、営業は会社の総戦力戦です。自分が交渉力に自信がなければ交渉に長けた上司を引っ張り出して交渉してください。そうすれば会社の利益を確保出来る可能性は高くなりますし、自分自身の交渉力向上の勉強になります。
問題はこういった場面で出て行きたがらない上司が多いことです。それでは管理職の意味がありません。会社の利益最大化に貢献するという意識を持って管理職は交渉の場に出て行って欲しいものです。
さて、勝ち試合を勝ちきるには絶対にミスを犯さないようにして万全を期してください。一つのミスが命取りになります。
以前に書いた「期末に取り逃がしてしまう案件 (続き) イレギュラーバウンドへの準備」を再読していただけたらと思いまうにす。
次に負け試合のケースです。
これまでの状況から見て受注が難しい、あるいは競合相手が受注しそうだというケースです。
こういう時にはズルズルと負けてしまうのではなく、勝負手を放ってみましょう。
他を圧倒する大幅値引きや特別サービスなどの提示です。しかもそれを会社でしかるべき権限を持つ人からオファーする形にすることです。「貴方は我が社にとって重要なお客様ですので今回に限り特別のオファーをします」といったメッセージを発信することです。
これを行うに当たっての大前提は会社としての経営判断です。そこまでして取らなければならない案件やお客様か、あるいは会社の状況か、ということです。これは一営業の判断ではできません。必ず上司やその上の判断を仰いでください。そのために正確にお客様や案件の状況を報告し、上の方々が正しい判断が出来るようにしておいてください。その為にも「四つの不」や「購買の阻害要因」などを明確に分析しておかなくてはいけません。「ただ、何としても契約が欲しいから」というような感覚論的説明では上は納得しません。「根性論ばかり言う」などと言って会社や上司を批判する営業に限って自分の報告が感覚でしかないことが多いという事実は残念な限りです。
ここで上司、特にエグゼクティブと言われるクラスの方々へのお願いです。
下からこのような勝負手の要望が上がってきた時には、簡単に無理だとは言わないでください。
しかし、何でもかんでも営業の言うとおりにしていてはいけません。
経営的観点から冷静に判断してください。
そのためにも「四つの不」や「購買の阻害要因」などの分析により勝負手に可能性があるかどうかを見てください。しばしば営業は無意味な勝負手を放ちたがります。そういうものは突き放してください。でも可能性があるのなら、是非リスクをとる勇気を持って欲しいと思います。
なお、勝負手は麻薬のようなものです。味をしめて何度も何度も使うとだんだんと効果が少なくなり、どんどんエスカレートしていきます。今後のお客様との長い付き合いにとってのプラスマイナスも合わせてよく考えるようにしてください。
さて、しばしばお願いしている管理職の対応ですが、管理職の特にリスクの取り方について次は書こうかなとも思ったのですが、前回中盤の話でロールプレイの話もいずれ書くと約束しましたし。。。。 ロールプレイーをする上ではもう一つキーパーソンについても話しておかなくてはいけませんし、ちょっと迷っています。