今まで書いてきたことを少しまとめてみましょう。
「売り込む」のではなく「買っていただく」ためにはお客様を良く理解していなくてはいけない。それはお客様の購買に対しての阻害要因と購買性向です。
阻害要因には「四つの不」すなわち「不信」「不要」「不適」「不急」があります。
購買性向には「金銭的価値」「信頼できるサプライヤー」「革新のパートナー」があります。
これらを十分理解してその状況に応じた対応をしなくてはいけません。立て板に水のごとく一方的に商品説明をしても買っていただけるわけではありません。
よく世間で思われている誤解に営業は話が上手でなくてはならないというのがありますが、それ以上に聞くのが上手であることが重要です。
(参照: 営業の向き不向き )
いわゆる「傾聴」が重要ということです。
私の部下だった人の話をちょっとします。
(私は幸いにも優れた上司、先輩はもとより、優れた部下や後輩にも多くめぐり合うことができました。)
彼の担当しているお客様の専務さんに年末のご挨拶に彼と私でお伺いしました。
お約束はご挨拶ということで15分間という予定でした。
私がご愛顧のお礼を述べたあと、彼がその会社で恒例となっている年末の餅つき大会の話題を持ち出しました。専務さんが少しそれについて語ったあと、営業は質問や相槌をうまく使い分けると、専務さんはドンドンと話し始めます。結局15分間の予定が大幅に伸び、1時間半もお話することができました。
単に時間が長くなっただけではなく、話は餅つきから会社の雰囲気や組織体制、最終的には専務さんが考えている次のビジネスについてもお話を聞けました。
その間、営業は製品の説明などは一言もしていません。ただ相槌と質問を上手に行っていただけです。
この1時間半の間に「不信」は取り除かれ、さらに「不要」「不適」「不急」のポイントもお聞きすることができたのです。また購買性向も把握することができました。これによって次の提案の際にはこの専務様の意に沿ったものができるようになるわけです。
このように傾聴することによって、お客様が自分から語ってくださるのです。
しかし、部下とはいえ大した奴がいるもんだと私も大いに勉強になりました。