お皿ひとつひとつから頂上を目指すためのその場しのぎの快楽を求めた場合、その解はイコール限りなく0に近づきつつも月を目指しその先を求める。その力は僕の全力疾走なんかよりずっと苦しく純粋で、だから彼女も惹かれたのだと思う。今思えばだが。その頃僕らは週3は彼女の部屋で、週3は僕の部屋で、残った1日は宛てもなく車で走った先の車の中で泊まる、という生活を続けていた。きっかけは彼女だ。どちらかの家に生活が偏るのは勿体無い、できるかぎり公平に、満遍なく、効率的にお互いの所持する場所と物と生活習慣を利用、使用、吸収する、つまりはお互いとお互いの過去と現在をイコールにするための儀式を始めようと言い出したのだ。残る1日はぶっちゃけまあ余ったからなのだが、いわゆる思い出作りってやつだ。二人で同じ場所にいながらも同じ別の場所に移動する、という経験同期による人生に於けるデュアルカタパルト?モノよりオモイデ?ともかく僕らはそれを楽しいと思ってやっていたし、それがその先光のレールのように闇の先を照らしてくれるものだと信じていた。のが1年前だ。ちなみに今の僕は週7日僕の部屋に1人で泊まっている。既にそれがあたりまえでこの先もずっと続くものなのだと現実感と共に実感している。まあ実際はずっと今のこの部屋に住み続けることなどできて数年なんだろうなとは分かってはいるんだけど。でも今のこの生活は今の僕にとっては永遠なんだ。ちなみに彼女の居場所は知らない。この世界にまだいるのかどうかすら知らない。でもこれも勝手な実感ではあるのだけれども彼女は元気だ。今も何処かで月を目指している。僕には分かる。
フライングガール 2 (2)/笠辺 哲
¥590
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世界は変態あと愛で満ちている。

待望の2巻。しかして最終巻。これほど漫画が自ずから描かれている感溢れドキドキニヤニヤドキニヤたのしく待ち遠しく読んでしまう漫画は久しぶりでした。ともかくソフト&ディープな変態磯貝さんが素敵過ぎてキュンとなるしがんばれ山田。愛しい世界とキャラ達とたった2巻でサヨナラなんて寂しすぎますが、なんだかあれあれバタバタと打ち切り?いやいや大団円?なラストもハートどバキュン!ときてしまいとにかくラブ。プリーズ次回作スーン。

よつばと! 6 (6)/あずま きよひこ
¥630
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『よつばと!』はおもしろいなあ。
ふつうにとてもおもしろい。このふつうにおもしろくしあわせなテンションを続けるというのはとてもすごいことでその意思は表紙の描き込みにも表れていて、うん、いつもいい表紙だなあ。といいつつちょこちょこ以前から読んではいたのだけれどもどうもこの単行本が本棚に並ぶのをちょっと恥ずかしがっていたりしていてすみませんでしたぜんぶ買いました。さあ癒せおれを。

死を宣告されたことがある。
小学校3年生。世界全てが面白い時期にだ。
「心音に異音があります。この年頃だとなにがキッカケでコロリといってしまうかしれませんから、なるべく心臓に負担をかけないように。長く日光にあたったり激しい運動は控えてください」
あの夏の小児科医はおれと母親の前でそう言い放った。
10歳児の思考に突如降って沸いた「自らの死」という概念。「人は死ぬ」。そんなことは分かってはいるれども現実の可能性として考えることなど必要ないしコエーからいいよう、と逃げても全く問題のなかった子供が死について考え始めた。まず思ったのは「ジャンプの続きが読めないのは非常に困る」「アニメだってそうだ」。自分が困ることは他には特にないな、と思った。次に考えたのはおれのいなくなった後の世界のことだ。母は悲しむだろうか。父は悲しむだろうか。祖母は悲しむだろうか。兄たちも悲しむだろうか。友達はどうか。どのあたりの友達まで悲しむだろうか。いとこは。先生は。お菓子屋のおばちゃんは。体育は毎回休むようになった。運動場で光り動き回る友達を見ていた。映画のようだった。おれは既に世界に参加していない。世界に対する観客であり傍観者。一ヵ月後、遠くの国立病院で検査を受け、先天的なもので生活には支障は無いとの判定を受け、小学校生活は元に戻った。しかし今もおれの奥底で傍観者であるというその感覚はついてまわる。

あいつは すごいぜ
アラバマ


よこから はみだす
ブワー ブワー