施設長の若山三千彦が書いている犬のエッセイです。
文福が、うちのホームに来て12年以上が過ぎました。
文福は、2012年4月、ホームの開設と同時にやってきました。
保護犬なので正確な年齢はわかりませんが、獣医さんの推定では当時2~3歳。
従って今年は14~15歳となります。
近年、嬉しいことに犬の長寿化が進んでいますが、それでも平均寿命は14歳ほど。
文福は中型犬のサイズになりますから、小型犬よりは少し平均寿命は短いと思います。
だから文福は、平均寿命をとっくに超えた高齢犬です。
人間の男性の平均寿命が約80歳ですから、文福は80歳代半ばと言えるでしょう。
💛写真は先週撮影した物です。
文福はまだまだ元気で、ドッグランでダッシュもすれば、散歩に行く時は大喜びで大ジャンプを繰り返します。
そのような時は老いを感じさせないのですが、やはり加齢による衰えは、いろいろなところに表れています。
全身の毛の色が白っぽくなりました。
幸い、目はまだ白内障ではないのですが。
寝ている時間も増えました。
そして寝ている時、近づいても、声をかけても、気が付かないのは大きな違いです。
おそらく、嗅覚や聴覚も衰えています。
以前なら、冷蔵庫からおやつを取り出す音だけですっとんできたのが、今は、目の前におやつを出さないと気が付かないことがあります。
おそらく、看取り活動も、もうできないだろうと思います。
今年に入って、文福のユニットではお二人のご入居者様がご逝去されたのですが、
どちらの場合も、文福は看取り活動をしませんでした。
私は、文福がご入居者様の死を察知するのは、匂いの変化を感じているのだろうと推測しています。
この推測があっているとしたら、文福は嗅覚が衰えたため、ご入居者様の死を察知できなくなったのだろうと思われます。
このように、色々な点が衰え、行動も変わってきましたが、それでも文福が文福であることには変わりありません。
文福は、そこにいてくれるだけでいいのです。
いえ、文福だけではありません。
全ての犬と猫は、そこにいてくれるだけでいいのです。
ご入居者様と犬と猫が一緒に暮らすこと。
一緒の時を共有すること。
それだけが、私がペットと暮らせる特別養護老人ホームを作った目的ですから。
私も3匹の老犬と共に暮らしています。
1匹は、昨年夏に余命2ヶ月の宣告を受けましたが、未だに頑張ってくれています。
だからこし、痛切に実感しています。
この子が生きているだけでいい。
この子がそこにいてくれるだけでいい。
文福についても同じ気持ちです。
ただし、ホームでは、老犬が増えると、どうしても介護に人手を要するようになります。
ただでさえぎりぎりの状況の介護現場にとっては大きな負担です。
現在、2-1ユニットと2-2ユニットで暮らす犬6匹全員が10歳以上の老犬です。
職員を増員して、老犬達を最後まで守るための新しい体制を作らなければいけないと考えています。