虐待の隠ぺいは犯罪です | さくらの里山科公式ブログ ご入居者様とワンちゃん、猫ちゃん

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全国初!全国唯一!ペットと一緒に入居できる特別養護老人ホーム
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住所 横須賀市太田和5-86-1
電話 046-857-6333

施設長の若山三千彦が書く福祉エッセイです。

※本日14時頃に書いてアップした物を、夕方加筆修正しました。

 

静岡県の裾野市の保育園の保育士3名が、園児の虐待で逮捕されました。

さらに、保育園の園長も、犯人隠避の疑いで刑事告発されました。

この園長は、職員に虐待の事実を秘密にする誓約書を欠かせており、告発した職員には、土下座して情報隠蔽を頼んだそうです。

同じ社会福祉法人の管理職として、憤りを覚えます。

 

ちなみに保育園って実は社会福祉法人が運営しているんです。

幼稚園は教育施設で文科省の管轄なのですが、保育園は厚労省の管轄下にある児童福祉の分野の施設なのです。

だから特別養護老人ホームも、保育園も、社会福祉法人が運営しているんです。

うちの法人には保育園はありませんが、特別養護老人ホームと保育園を両方運営している社会福祉法人はけっこうあるんですよ。

 

職員が虐待をしてしまうのは、残念ながら防ぎようがない場合があります。

うちのホームでも、職員の理念教育は行っていますが、どれだけ理念を伝えても、職員の心は変えられない場合があります。

そして、老人ホームでも、保育園でも、職員が1人だけで働いている状況は多いです。

うちのホームの場合、同じユニットに、同時に複数の職員が勤務していても、居室や浴室、トイレの中で介護をする際は、職員は1人だけになります。

そう考えると、他の目がない状況で働いている時が圧倒的に多いです。

そこで職員が虐待をしてしまうのを止めるのは不可能です。

 

だから大切なのは、虐待をしていることに気が付いた職員が、すぐにそれを報告できる体制を作る事です。

そして、報告を受けたらすぐに動ける組織を作ることです。

その大元にある目的は、ご入居者様を守る事です。

保育園なら園児を守る事です。

既に起きてしまった虐待は、残念ながらどうにもできませんが、次に起きるかもしれない虐待からご入居者様を守らなければいけません。

それが何よりも大切なことです。

 

それなのに、園長自らが職員に虐待を秘密にする様求めていたのは、非常に残念です。

土下座して隠ぺい工作するなど、言語道断です。

勇気を出して告発してくれた職員がどんな気持ちだったか…。

それを考えると、この園長を殴りたくなります。

 

そして虐待に怯える園児たちがこの数カ月どんな気持ちだったか…

虐待が告発され、園長が隠ぺい工作をした時点で、虐待をした保育士達は退職していますから、虐待行為自体はなくなったと思います。

しかし虐待された園児たち、虐待される様子を見て怯えていた園児たちの心の傷は、癒されないままです。

癒されないまま、この数カ月を過ごしていたのです。

きっと、保育園に行くのも怖いという園児も少なからずいたのではないでしょうか。

虐待が告発された時点で、それを公表し、外部の専門家の支援を受けながら虐待の雰囲気を一掃し、明るい園を取り戻し、園児たちの心のケアに当たっていれば、園児たちの心の傷はずいぶんと癒されたはずです。

それなのに…

 

園長が適切な行動をとらなかったために、園児たちが過ごす辛い時間が伸びたのです。

許せません。

 

虐待が起きた時、私達がまずなすべきことは、ご利用者様(ご入居者様や園児)を守ることです。

次は、他の職員達(虐待をしていなかった職員達)の守る事です。

虐待を見ていた職員達も、辛い思いをしていますから。

最後が、組織を守ることです。

守るべきは一にご利用者様、二に職員、最後が組織。

管理職はこの順番を絶対に間違えてはいけません。

 

そして、ご利用者様を守ることこそが、結局は組織を守ることにつながるのですが。

 

最も重要なのは、ご利用者様を守る事ですが、別の視点で考えると、はっきり言ってこの園長は管理職として極めて愚かです。

まずいことは、一刻も早く公表することが、組織としてはプラスになるんです。

組織への信頼をつなぎとめることができるんです。

しかし、情報公表や虐待対策をするのが遅れれば遅れるほど、問題が発覚した時、組織が受けるダメージは大きくなります。

結局この園長は、組織を守るどころか、組織に致命的な打撃を与えてしまったのです。

 

うちの法人でも、この20年間で、少し大きな事故が数回起きてしまいました。

その時は、管轄する横須賀市に、一刻でも早く報告しなければと焦りました。

ある程度、正確な情報を集約しないと報告できませんが、それに時間をかけすぎるのはまずいので。

また、関わっているご入居者様のご家族様にも急いでご報告しました。

 

今回のようなコロナ感染の場合も、感染したご入居者様のご家族様には即刻報告していますし、同じユニットのご入居者様全員のご家族様にも報告しています。

 

情報の公表は組織を守る上で極めて重要なので、隠ぺいしようとした園長は非常に愚かだとしか言いようがありません。

 

もちろんそれ以前に、今回のようなひどい虐待が起きたのに、園児を守る事よりも、情報隠蔽に動いた時点で、社会福祉法人が運営する社会福祉施設の長として失格ですが。

 

色々な意味で残念な事件です。