8050問題・前編 | さくらの里山科公式ブログ ご入居者様とワンちゃん、猫ちゃん

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※この記事は、一昨日予約投稿したものです。コロナ感染が発生したホームの非常事態に、予約のままアップいていいか迷ったのですが、コロナに負けたくないという気持ちがあり、そのままアップすることにしました。ご了承下さい。

 

施設長の若山三千彦が書いている福祉エッセイです。

 

皆さんは8050問題という言葉をご存知ですか?

前回の福祉エッセイと同じ出だしになってしまいましたが、それだけ介護の問題が社会全体に関わることが増えている証だと思います。

 

8050問題とは、80代以上の高齢者を50代以上の子供が介護している状態を指します。

しかしそれだけでは、「問題」とはなりません。

そもそも親が80代なら、子供は50代、というのが当たり前ですからね。

そのような組み合わせの親子は沢山います。

私と父も50代と80代です。

 

80代の高齢者を50代の子供が介護していることが問題となるには、幾つかの条件があります。

ここから、私が勝手に考えた、8050問題の条件をまとめてみます。

なお、世の中では、社会学の先生などが、きちんと学術的に8050問題を定義しているかもしれませんが、ここで書く私の意見は、そのようなきちんとしたものではありません。

学術的な裏付けなどなく、単に私の経験からきた条件をまとめただけです。ご了承下さい。

 

※写真は本文とは関係ありません。本文がハードな内容なので、写真だけは明るいものを選びました。

 

私が考える8050問題の条件とは…

 

①80代の単身高齢者と子供の2人暮らし、もしくは高齢夫婦と子供の3人暮らしであること。

②子供とは息子であること。娘の場合は当てはまりません。

③息子は独身であること。これは離婚歴ありも含みます。現時点で独身であるという意味です。

 

ここまでが基本条件ですね。

うちの法人の在宅介護部門では、20年前からこのような「独身の息子さんと2人暮らし」は、色々と大変な事情がある場合が多いと用心していました。

 

さらに、発展条件があります。

 

a)息子さんが介護ができないこと

b)息子さんに家事能力がないこと。

c)息子さんが、親の年金で暮らしていること。

d)息子さんが外で働いていないこと。

 

この4点が発展条件です。

ここまで揃うと、非常に深刻な8050問題だと言えます。

 

 

さて、この条件を解説していきましょう。

①~③の基本条件は、説明るまでもないと思いますが。

要するに高齢者と男性のみの所帯がまずいのです。

娘さんとの2人暮らしの場合、あまり問題は生じません。

 

息子さんが結婚していると、お嫁さんが一緒にいるので、やはり問題が深刻化しない場合が多いです。

 

なぜ、高齢者と男性のみの所帯がまずいのか。

その理由は皆さんおわかりですよね。

要するに息子さんだと、介護はもちろん、家事すらできない場合が多いからです。

 

だから、発展条件のaとbは、①~③と自動的にリンクする場合が多いです。

それを別々の条件にしたのは、もちろん男性でも介護や家事ができる人がいるからです。

 

私の感覚では、ちょうど私位の年齢が分水嶺です。

私は一応、家事は一通りできます。

大して美味しい物は作れませんが、一応料理もできます。

「クックドゥー」や「うちのご飯」の助けを借りれば、一週間毎日違うメニューを作ることくらいはできます。

私の同年代の男性は、だいたいこんな感じではないでしょうか。

でも私の5~6歳上位から、家事ができない男性が多いような気がします。

 

家事ができる男性は、戸惑いながらも何とか介護もやっている場合が多いです。

従って①~③に当てはまっても、息子さんが家事と介護ができるなら、あまり問題にはなりません。

これだけだと、80-50問題とは言えない家庭が多いです。

ただし、時として問題になってしまう場合もあるので、①~③を80ー50問題の基本条件としました。

 

 

問題となるのは、息子さんがあまり社会と接点をもたない場合です。

 

高齢者と息子さんの2人暮らしでも、息子さんが家事も介護もしっかりこなしていて、仕事も頑張っていて収入もあり、基本的には問題なく生活ができている。

でも息子さんが仕事以外に社会と接点が少ない場合、介護の悩みを誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまうのです。

 

うちの法人でも、何回もこのパターンに出会ってきました。

 

近所の民生委員さんが、実情はわからなくても、●●さんのお宅が危ないんじゃないかと推測して、うちの法人のケアマネジャーに相談をする。

ケアマネと相談しながら民生委員さんが息子さんに声をかけ、説得し、やっと息子さんがケアマネに依頼してくれる。

初めて家に入ったケアマネは絶句してしまう。

こんな感じのパターンです。

もちろん事情は人それぞれ異なりますが。

 

ケアマネが初めて家に入って、ご高齢者様の姿を見たら、完全寝たきりで、オムツ着用の状態。

息子さんができる限りの介護をしているのはわかりますが、働いていては限界があるので、オムツ交換は朝と夜だけ。

オムツが吸収しきれない汚物が衣類や布団、さらにはベッドや畳まで汚している。

そのため部屋には異臭が漂っている。

ご高齢者様本人は、長期間お風呂に入れないため、ひどい衛生状態になってしまっている。

 

さらに悲惨な点は、息子さんは働きながら必死に介護をしているので、自分のこともままならない、ということです。

息子さん自身の食事や洗濯、掃除も満足にできない状態で、本当に生活が崩壊しかかっています。

 

私達はこんな状況を何回も見てきました。

ただし、それは、2000年代の話です。

最近は、このパターンは減っています。

今の50代の男性は、仕事以外にリアル社会との接点が少なくても、近所付き合いが苦手でも、ネットで社会とつながっているからだと思います。

ネットで介護に関する色々な情報が入手できます。

介護保険をはじめとする、社会からのサポート体制もわかります。

そして、今の50代の男性は、20年前の50代の男性と異なり、行政や福祉関係者に相談することに抵抗が少なくなっています。

福祉サービスを使うことを嫌がることが減っています。

 

 

2000年代はまだ、福祉の世話にはなりたくない、福祉サービスを使うのは恥だ、と考える人が多かったと思います。

そのため息子さんは誰にも相談せず、生活が崩壊し、追い詰められていきます。

そして、最悪の事態も起きてしまうことがあります。

息子さんによる無理心中です。

 

実は、うちの在宅介護サービスが関わっているお宅でも息子さんによる無理心中が1件、起きてしまいました。

20年近く昔のことです。

母親を介護している息子さんはケアマネジャーには相談してくれていて、デイサービスも週1回利用してくれていました。

でもそれでは不十分で、デイサービスの利用回数を増やすこと、ホームヘルパーを利用することをケアマネは提案していたのですが、頑として受け入れてもらえませんでした。

このままでは無理心中もありえると私達は焦っていたのですが、ついにそれを食い止めることができなかったのは、私達にとって痛恨の極みでした。

 

その当時に比べれば、50代の男性の意識は大きく変わっていて、福祉サービスを利用することへの抵抗は少なくなっています。

息子さんが、自らケアマネジャーに相談し、介護保険サービスを利用してくれます。

それによって、親御さん=ご高齢者様の生活状態は大幅に改善されます。

 

こうして考えてみると、最近では、最初の基本条件①~③に当てはまるだけの、息子さんと親御さんの2人暮らし家庭は、80-50問題ではないと言えるかもしれません。

現代で問題になるのは、発展条件のa~dに当てはまる場合です。

このことは、次回お話します。

 

 

 

 

 

家事と介護が