【JASRAC作品コード 758-6011-2】
Final Call (七人の秘書 THE MOVIE 主題歌)
Performed by milet
Lyrics by : milet / Toru
Song written by:milet / Toru / MEG
皆さん、こんにちは。今回は、miletさんの「Final Call」について、語ってみたいと思います。
重厚なベースラインに載ったmiletさんの歌が、とにかくかっこいいですね。この曲は、テレビドラマシリーズ「七人の秘書」を映画化した「七人の秘書 THE MOVIE」の主題歌として作られました。テレビVer.の主題歌「Who I Am」でも共作したONE OK ROCKのToruさんを招き、さらに新たにMEGさんを加えての作曲となっています。
歌詞を書くにあたって、miletさんは脚本を読んで作っていったそうで、出来上がりは満足のいくものになったそうです。Music Voice (ミュージックヴォイス)にインタビューが掲載されています。
「――楽曲を制作するにあたって、どんなところが核になったのでしょうか。
七人が悪を懲らしめてドーンと並んでいるシーンがあって、この横並びがまさに『七人の秘書』だなと思い、そのイメージを頼りに曲を書いていました。
そして、広瀬アリスさん演じる(照井)七菜が結婚することになって、そこで終わったと思えるような展開から物語がスタートしていく、終わりから始まるような感覚がありました。歌詞にある<エンドロールが始まりの合図>というのは、物語とリンクさせて書いた部分です。
――脚本を読んで曲を制作されたと思うのですが、完成した映像を観てどんな感想を持ちましたか。
楽曲制作の時は脚本を頼りに作っていきました。その後に映像を確認してピッタリな曲になったと確信しました。ただ、自分が脚本でイメージしていたものよりも、実際の映像はスケール感がさらにすごかったというのが第一印象でした。」
[ Music Voice (ミュージックヴォイス)INTERVIEW milet 記者:村上順一 掲載:22年10月14日「“八人目の秘書”になった気持ちで」新曲「Final Call」に込めた想い:『七人の秘書 THE MOVIE』]
そこで、歌詞全体を見渡してみると、曲先で作成されたこともあり、全体を貫くバックボーンはしっかり維持しつつも、各フレーズやパラグラフ間のリンケージやストーリー性は弱く、いわばイメージやインスピレーションでポンポンと言葉をはめていったような感じを受けます。なので、統一された世界観というよりも、パラグラフごとに異なる世界が繰り広げられつつ、メインテーマに付かず離れず寄り添っていくところが、切り替わる映画のシーンのような印象を与えてくれますね。
タイトルの「Final Call」というのは、次のインタビューでmiletさんが語ってくれていますが、あえて訳せば「最終案内/最後通告」といった感じでしょうか。「call」という言葉は、単に「通話、呼び声」という意味だけではなく、「要請」のような相手に何らかのアクションを要求する発話となる場合があります。例えば、空港での「Final Call」は搭乗手続きを督促する「最終案内」ですね。この楽曲でいえば、「最後のチャンス」とでもいう感じでしょうか。Miletさんの楽曲制作のお話を、インタビューで見てみましょう。
「私の中でサウンドのイメージはあったので、それを伝えたところお二人がいくつかトラックを用意して下さいました。そのトラック全てにメロディをつけて歌ってみて、その中からみんながビビッときたメロディを繋げていき、そこに歌詞を乗せていくという流れでした。この曲をどこに導いていけば良いのかというのは、みんなで共有できていたので、迷いなく進めました。
――「Final Call」というタイトルに込めた想いは?
楽曲制作をしている段階から、言葉をいれていくんですけど、その時から「Final Call」の影みたいなものはあり、朧げながらも浮かんでいた言葉でした。「これが最後の賭けだけど、準備はできてる?」という意味のタイトルなんです。いつも最後だと思って全力で進むことと、ここからが始まりだと展開させていく力強さの2つを共存させたいと思い決めました。」(出典:同上)
ここからは、歌詞の解説を中心に、楽曲の世界観に迫っていきたいと思います。ただ、歌詞中にキリスト教でよく使われる単語が出てくるため、説明のために聖書の一節を引用しました。あくまで歌詞の理解のためで、布教などの目的ではありません。この曲は宗教的な色合いは全くなく、筆者もクリスチャンではありませんので、予めお断りしておきます。
さて、歌詞の説明に移りましょう。実は、例によってこの曲は全編英語で書かれていたものをあとで一部日本語に置き換えたようなのです。「Final Call」のMVでは、その元の英語がスクリーンに映されています。日本語の歌詞をより理解するために参考になると思われるので、元歌詞(英語)をMVからピックアップして、当該歌詞説明のところに[原文]と訳を載せています。日本語の日本語訳です。残念ながら後半ではMV画面上に登場してこない歌詞があり、分かる範囲で拾い集めてあります。
以下、物語の進行に合わせて5つのパートに分けて説明していきます。
「七人の秘書」MVは、こちら ⇓
https://www.youtube.com/watch?v=Jo9qHqHkIqI
(PART1)
「Oh something’s wrong but it seems so right
(何かおかしい、でもこれで正しい気がする)
Feel like I’m playing the same game but
(同じ任務のはずなんだけど)
うなだれたまま 狙いをズラし
また"Sorry" でもあすも予想通り
痛みすら元通り
白黒つかない 日々を濁してる」
(PART1)では、優柔不断な性格の主人公が登場します。同じ任務を負った「相棒」とのシーン。ターゲットを狙っても思い切りがつかずに、つい狙いをずらしてしまう。そんな「決められない自分」を描いています。
✩ Oh something’s wrong but it seems so right
どこかおかしい、でもこれで正しい気がする。「seem right」というのは、「『間違っていない/合ってる』気がする」という感じです。
✩ Feel like I’m playing the same game but
「play the same game」というのは、同じゲームをやるということですが、「game」というのは、「遊び」だけではなく「計画・計略」という意味を持っています。ここでは、映画の内容からしてもお遊びのゲームではなく、後者の意味に使われていると思われます。
つまり、相棒(バイプレーヤー)と同じ任務を負って作戦の中に身を投じている、というシーンでしょう。次のフレーズに「狙いをズラし」とあるのでスナイパーを意識したのかもしれません。「同じ任務のはずなんだけど」と訳しました。
✩うなだれたまま 狙いをズラし また"Sorry"
[I shift my aim with my head down. "Sorry" again ]
(うなだれたまま 狙いをズラし「ごめん」またやっちゃった。)
狙いを外して"Sorry"と言っているので、競い合っているのではなく共通の目的を持って任務についていることがわかります。
✩痛みすら元通り
[and my pain will soon be relieved]
(そして、痛みもじきになくなるわ)
✩白黒つかない 日々を濁してる
[I’ve been indecisive all my life and I’m pretending to be unaware]
(何事も決められない人生。でも、気づかないふりをしている。)
「indecisive」は「優柔不断な」、「all my life」は「生まれてからずっと」といった感じです。「all my life」は名詞句ですが、このように単独で副詞的に用いられます。「all my life」の前に「for」は必要ありません。類例に「all the way(はるばる)」「all the time (ずっと/いつも)」などがあります。
一つ留意しておきたいのが、「and」です。「and」には「そして」だけではなく、文脈によっては「それなのに」といった意味を含むことがあります。ここの「and」がまさにそのケースで、「でも」という訳を振ってあります。GENIUS [【and】接 Ⅰ等位接続詞⑦ 第4版P73] には「butと交換可能」とあります。
(PART2へ続く)