(その1からの続きです)
【JASRAC作品コード 758-6011-2】
Final Call (七人の秘書 THE MOVIE 主題歌)
Lyrics by : milet / Toru
Song written by:milet / Toru / MEG
(PART2)
「Can you hear this? Tick tack tick
(この音が聞こえる? カチカチカチ)
It ain’t stop
(時は止まらないの)
塗り替える今日を
エンドロールじゃまだ終われない
減速なしで躊躇わずダイブ
Just get me out, get it out
(ここから出して そいつをどけて)
It’s a final call to build my faith
(これは 最終通告よ。あたしの信念を打ち建てるの)
Who says? I say!
(そんなこと 誰が言ってるんだ? あたしよ!)
If you take it all away
(たとえあなたが ぜんぶ奪い去ったとしても)
手探りの narrow way」
(PART2)では、「もう、時間がない。 あたしは、変わるんだ」と、(PART1)の優柔不断な自分の殻を脱ぎ捨てて、変身しようと果敢に挑戦する姿が描かれています。
また、「エンドロールじゃまだ終われない」ここからが始まりなんだ、さあ、ここから出してくれ!これが最後のチャンスなんだ、という強い意思が伺われますね。
「say」「away」「way」で韻を踏んでいます。「faith」とも母音で押韻していますね。
映画公式サイトに寄せられたmiletさんのコメントをご紹介します。
『「Final Call」は打たれても屈しない杭のような、頑固で逞しい曲にしたいと思い書きました。「エンドロールこそが本当のスタート」という、どんな終わり方をしても今が始まりだと思わせてくれる心強い「Final Call」のメッセージを華やかで中毒性のあるサウンドで彩りました。
どんな時も頼りになる相棒のような「Final Call」、ぜひ聴いてください。』
(七人の秘書THE MOVIE公式サイト「ABOUT THE MOVIE作品紹介THEME SONG」より)
公式サイトは、こちら ⇓
そして、このフレーズには、キリスト教的な単語がいくつか現れます。ただし、歌詞としての使われ方としては全く宗教臭はなく、おそらくmiletさんの頭の中にあった単語帳の中から、この映画のシーンにふさわしい単語として自然と出てきたんじゃないかな、と思います。とにかく次の(PART3の)で「神」そのもが出てきます。「God knows way」ですね。「God」は大文字で書くと、キリスト教でいう「唯一絶対神エホバ」のことです。
宗教の話は本筋ではないので、単語の意味について軽く解説欄で触れました。
✩ It ain’t stop
時は止まらないの。
一刻も無駄にしたくない、という主人公の意思が感じられます。
「ain’t」は通常「be動詞」や「have動詞」の否定としての使われ方をするのですが、ここでは一般動詞の否定で使われています。ちょっとイレギュラーな表現ですね。
あるネイティブの方は、「AAVE(African American Vernacular English )であれば、違和感がない」といったことを仰ってました。もしかしたら、miletさんはカナダにいるときにAAVEに接して、それが脳内にあったのかもしれませんね。
✩塗り替える今日を
[Today, I’m gonna change my life] ( 今日は 自分の人生を変えるんだ)
日本語は倒置されています。「今日を塗り替える」という意味ですね。
✩エンドロールじゃまだ終われない
[The credits are on screen, but it’s NOT over yet] (スクリーンにはクレジットが流れているけど、でもまだ終わりじゃない)
英文「The credits」というのは、映画のエンドロールで流れる製作者・関係者の一覧のことです。歌の作詞者・作曲者等の意味でもよく使われますね。いい訳語がなく一般的にもそのまま使われているので「クレジット」としました。
✩ Just get me out, get it out
ここから出して。 そいつをどけて。
現状の閉塞感から抜け出したいという強い意思が感じられますね。
✩ It’s a final call to build my faith
この歌詞のキモであり、タイトルともなっているフレーズですね。
実は、ここは2通りの解釈が可能で、ここで世界線が2本に分かれます。
ポイントは「it」です。この「it」が何を指すかでこの先、世界観が分かれます。「it」は、話し手と聞き手が明示的であれ、暗黙であれ、指すものについて合意できていることが前提となります。この場合、「聞き手」は主人公が話しかけている敵方の人物になります。
1. 「It」の指すものが文中に出てきていない、という解釈
2. 「It」が、直前の「Just get me out, get it out」という主人公の叫びとする解釈
1.は文中ではなく、まさにこの「シーン」の中に「It」が登場するという解釈になります。主人公が何かに閉じ込められていて、そこに「final call」なるものが聞こえてくる。仲間の誰かが叫んでいるのかもしれませんね。「今聞こえているソレは、『final call』なのよ。だから早くここから出してよ。」というシチュエーションになります。
2.は「早くここから出してよ。これは最終通告だからね」と迫っている図になります。こう解釈すると、次の「Who says? I say!」とも違和感なく続きますね。
「It’s『my』final call」となっていれば、この2.の解釈で確定するのですが、「a」なのでちょっと話し手の精神的な距離感が感じられます。それで、1.の解釈が出てくるというわけです。英語のニュアンスからも1.の解釈は、捨てがたいのですが、2.の解釈のほうが文脈的により違和感がないかなと思ったので、ここでは2.の解釈で行こうと思います。
(これは 最終通告よ。あたしの信念を打ち建てるの)
「to build」は「call」にかかるのですが、「あたしの信念を確立するための最終通告なのよ」ではなく、上記のように頭から訳すと英語的な感覚が味わえると思います。
「final call」は「最終案内」「最後通告」といった感じです。
「build my faith」(あたしの信念を築き上げる)もキリスト教を彷彿とさせる言い回しですね。「faith」というのは「確固たる信念」という意味ですが、「信仰(心)」という意味でも使われます。「faith in God」(神への信仰)。ここでは宗教とは関係ないので「信念」と訳しました。「自分自身を信じ頼ること、その思い」という感じです。
✩ Who says? I say!
(そんなこと 誰が言ってるんだ? あたしよ!)
感覚的には「なに言ってんだ!/なんだって!」「悪かったわね!」くらいの感覚だろうと思います。
✩If you take it all away
たとえあなたが ぜんぶ奪い去ったとしても。
「If」は、仮定(もし奪い去るのなら)と訳しても問題ないとおもわれますが、譲歩(としても)としたほうが、蓋然性が高くなるので文脈によりマッチするかなと思います。
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