今回のブログでは、一般質問で発言した内容のうち、精神障害のある人の地域生活の支援についてご紹介します。

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(かとうぎ桜子)

精神障害のある人の地域生活の支援について伺います。

 

精神障害のある人の地域包括ケアを進めるためには、地域で受け皿となる社会資源が必要

今、国では精神障害者にも地域包括ケアを導入するため、2024年度の医療計画や障害者制度の改定に向けた検討を進めています。精神科からの退院促進をし、地域で暮らす精神障害者の相談を精神科が受けられる体制づくりや自治体の精神保健体制の充実、ピアサポーターによる支援などが検討されていますが、精神障害のある人の地域生活の支援のためには、受け皿となる社会資源の充実が欠かせません。そこで何点か伺います。

まず、区としては精神障害のある人の退院後の受け皿はどんなものが必要と考えているか、見解をお聞きします。

 

退院直後の支援として、グループホームには課題がある

住まいについては、グループホームという選択と、アパートなどで生活する方法が考えられます。

まずグループホームですが、多くの場合、デイケアや就労支援事業所などに通所をすることが前提となっています。そのため、退院直後で心身のリズムを整える段階にある人がすぐにこのような日中活動をするのが難しい場合にはグループホームが受け皿となっていないのではないかと感じています。日中グループホームで過ごしていても支援を受けられる選択肢が必要と考えるのですが、区の見解をお聞きします。

2024年度の障害者制度の改定に向け、国では、一定期間で自立生活に移行するという新しいグループホームの類型が検討されています。その参考にしているのが東京都で独自に実施している通過型の仕組みだということです。都の通過型グループホームは、3年間でアパート生活など次の生活に移るというものです。

国の制度の検討の中では、本人の意向とは別に一定期間でグループホームを出なければいけない制度を作ることには慎重であるべきだという意見もあります。また、障害の状態によっては、3年という短期間で自立生活に移行することは困難な人もいると感じています。もちろん、本人が希望すれば自立生活に向けた支援をすることは大切で、グループホームに利用者を囲い込むようなことはあってはなりませんが、一律に期限を決めることは障害のある人の個別性に応じた対応ができなくなる側面もあるのではないかと懸念しています。

練馬区でも通過型の類型で運営しているグループホームも多いと思いますが、通過型を利用した後の障害者の地域生活はどのようになっているのか、実態を把握する必要があります。区としてどのように把握しているかお聞きします。

 

精神障害のある人のアパート生活の支援はどのように進めるのか

精神障害のある人の地域生活を支援するにあたり、住まいの選択肢にはグループホーム以外にもアパートなどを借りるという選択肢があります。しかし、居住支援の質問の中でも申し上げたように、障害のある人の住まいの確保の支援は十分ではありません。今後、精神障害のある人の地域包括ケアが進められる中でアパートなどの住まい探しについてはどのように支援策を考えていくのか、区の見解をお聞きします。

 

日常生活の中の孤立防止策の充実を

また、孤立防止策について伺います。

国の検討の中では、精神科病院による24時間の相談体制についても検討されているようですが、孤立防止のためには、しっかりとした相談機関があるだけではなく、日常的な話を気軽にできる支援者の存在が必要です。例えば訪問看護や通所事業所など、支援に関わる事業所によるサポートの充実など、当事者に寄り添うことのできる専門職の体制の充実が必要と考えます。

現在、区内の民間事業者も含め、夜間の相談対応ができる社会資源はどのようなものがあるかをお聞かせください。

精神障害のある人が安心して自分らしく生活できる地域にするための施策の充実を求め、次の質問に移ります。

 

【回答:健康部長】

精神障害のある方が退院後に、自立した生活を送るためには、日常の医療や住まい、就労支援・居宅介護などの障害福祉サービスや地域の助け合いなど多方面の支援が必要です。

保健相談所では、関係機関と連携し、本人に適したサービスに繋げ、退院後の生活が安定するよう総合的に支援しています。

 

次に、グループホーム利用者の日中活動支援についてです。生活の場であるグループホームだけで完結しないよう、日中活動の場が必要です。就労、病院のデイケアや障害福祉サービスの通所など、ほとんどの方が日中活動をしています。

本人の状態により一時的に通所などが出来ない場合は、グループホームの生活支援員が買い物や散歩など外出を促す支援をしています。

 

次に、通過型グループホーム退所後の生活状況の把握についてです。

保健相談所の保健師と地域精神保険相談員は、退所前に本人と面談を実施し、状況を確認しながら、今後の障害福祉サービスの利用に関する相談などに応じています。また、退所後も保健師や障害者地域生活支援センターの職員などが定期的に訪問や面接を実施し、生活状況を把握するなど、丁寧に対応しています。

 

次に、住まい探しの支援策についてです。精神障害のある人が、アパートなどを借りる際には、住宅セーフティネット法に基づく住まい確保支援事業を活用するなど、住宅関連部署と連携しながら対応していきます。

 

次に、夜間の相談についてです。

精神障害者が、夜間に体調の変化や心に不安を抱えた時には、すぐに相談できることが重要です。区内には約60の精神科訪問看護ステーションがあり、利用契約の上で医療関係の相談に応じている事業所があります。

また、健康や心の悩みを相談する受付窓口として「東京都夜間こころの電話相談」、 民間団体では「東京いのちの電話」など様々な窓口が設置されています。年中無休で電話やSNSによる対応を行っている所もあります。保険相談所では、窓口紹介パンフレット作成し、必要な方に情報が届くよう努めています。

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私が受けている相談を種類で分けると一番多いのが精神障害にある人の住まいや生活に関する相談です。だから思うことがたくさんあって、長くなりますが…

 

ずっとしんどい思いをしてこられた方が、安心して、楽しい気持ちになって、地域でつながりを持って暮らし続ける支援というのは、本当にきめ細かな支援が必要であると日々感じています。今国では、精神障害者の地域包括ケア実現のため、主に精神科病院の役割の改革をしようとしています。まずはそれは大事ですが、長期入院をやめて地域に戻ってきたときの受け皿がもっと充実していなければ、せっかく退院しても、孤立してしまう。課題がたくさんあると考えて、今回も質問しました。

 

☆グループホームの日中支援

質問でも言った通り、ほとんどのグループホームで入居の際にはどこかに通所していること、あるいは通所しようと考えていることが求められています。でも、今回の一般質問では他の議員さんたちがたくさんひきこもりに関する質問をしていましたが、ひきこもりの人の支援を進めていったときに実はその人がひきこもっていた要因が精神障害や発達障害、軽度の知的障害だと分かったらどうしますか?地域とのつながりを作るために、グループホームの入居も一つの選択肢になりますよね。その時に、長年ひきこもりだった人にいきなり「グループホームに入ったら通所もしてね」といえますか?という話です。

また、長期入院から退院をしたばかりで、病院ではない場での生活に慣れるだけでもしばらく時間がかかるであろうという人に、いきなり通所をしてねといえますかと。

それで実際、グループホームに入れないから私が運営しているシェアハウスならどうだろうか、という問い合わせがいっぱい来ます。支援が必要な人ほど制度上のグループホームに入れないって、おかしくないですか?

私のシェアハウスは福祉的なサポートが必要な人と銘打ってるからまだ良いとして(でも、最初は「ちょっとしたサポート」と言っていたけどそれでは足りなくなっているので、最近はグループホームに近いくらいのスタッフ体制を取っています)、そういう選択もなければアパートなど借りて1人で家にひきこもってる状態になるわけです。

ひきこもっている人がずっとひきこもっている状態を継続することが、心身にとって良いとは思わないし、出られるようになるのが一つの目標であると私も思います。だけど、現にそれができない人にとって、できないことを理由にグループホームを選択できないというのは本末転倒ではないかとすごく疑問に思っているんです。現状、グループホームに入るほとんどの人が日中活動をしています、という答弁がありますが、それは、日中活動できない人を受け入れていないんだから当たり前のことです。

 

☆通過型グループホーム

質問でも言いましたが、今国は一定期間(都をモデルにするんだから多分3年)で退所するタイプのグループホームを作ろうといっていて、異論も出ている状態です。国が進める理由として、都の通過型がうまくいっているからだ、というのですが、うまくいっている証拠はいったいどこにあるのでしょうか。検証しているのでしょうか。ちょっと探してみたけれど、都も検証結果を出しているわけではないし、区も無いようなので、答弁でも個別的な話になっているわけです。

これもまた、グループホーム以外の選択肢も取れるように、本人が望めばアパートでの暮らしへの転換をサポートすることは大切なんですが、大前提として本人が何を希望しているかということがなければいけないと思います。本人が望まないのにグループホームの暮らしを強いてはいけないけれど、本人が望まないのにグループホームから追い出すこともあってはならないのではないか。

それに、3年という期間限定で人の心身の状態や生活リズムは落ち着かないこともあるはずです。

就労支援もそうですが、こうした生活支援についても、なぜそんな短期間で解決できるという制度設計にするのでしょうか。車いすを利用している人が3年訓練したら歩けるようになるとはだれも思わないはずなのに、なぜ、知的や精神の人は3年訓練したら支援から外れることができると思うのか、制度設計する人の気が知れない、といつも思っています。そもそも障害のある人が目指す「自立」って、心身の器質的な障害をなくすことではなくて、それによって生じる弊害を社会的に取り除き、障害があっても毎日を愉快に暮らせるようになることであって、福祉的支援から外れて「健常者」と同じように生きなくちゃいけないという意味ではないでしょう。身体障害の当事者の方々が勝ち取ってきた自立生活のあり方が、精神や知的の分野では十分に生かされていないのではないか。

それで、実際、通過型グループホームから出る時期が迫っているけれどひとり暮らしできる状況にはないという人の話は結構聞くことがありますし、おそらくその場合は滞在型のグループホームに移行するなどしているのでしょう。まずはその検証をきちんとしてほしいと思います。

 

☆居住支援

前に紹介した住まい確保支援事業の話の中で、この事業の課題とか、障害者の住まい支援は不十分だっていうやりとりをしてるじゃないですか。ここに精神障害のある人をつないでどうにかなると思いますか?っていう…

私も住まいの支援をしていますが、残念ながら現状では、精神障害で断られない民間賃貸住宅はものすごく少ないです。それを住まい確保支援事業につないだらどうにかなる、というようにするためには、居住支援における障害者支援の充実を図らないといけないです。つまり、高齢者の場合見守りや緊急通報システムの活用をして大家さんの安心を作っていると思いますが、精神障害のある人の場合、看護師、ヘルパー、通所といった、その人の日常生活を支えるシステムを作って、体調不良やトラブルなど何かあったときに大家さんに大きな負荷がかからないしくみを提示しなければ難しいと思います。

 

☆夜間対応

区内に精神の訪問看護は約60という答弁がありますが、このすべてが夜間対応も受けているわけではないですね。どのくらい夜間対応ができているのかについてはまた確認したいと思いますが。

つまり、夜間対応ができる事業所を増やす努力をする必要があると思うのです。

いのちの電話など、夜間相談を利用されている人も多いとは思いますが、いのちの電話でもよりそいホットラインでもその他でも電話相談というのはその時限りの匿名の相談員とのやりとりになりますね。「だれか、だれでもいいから話を聞いてほしい」というだけではなく、見知った人と話したいと思うのが人の気持ちではないか。そう考えると、身近な地域の中で、普段から支援してくれる人が、いざとなったら話を聞いてくれる体制を作るということが、精神障害の地域包括ケアでは欠かせないのではないかと思うわけです。