今回のブログでは、9月12日の一般質問で発言した内容のうち、住まいの支援(居住支援)についてご報告します。

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(かとうぎ桜子)

居住支援について伺います。

 

練馬区が実施している住まいの情報提供事業は、成約が少ない

コロナ禍で生活環境が変わり、家族との関係や経済状況の変化などがあって、住まいを探す人も増えていると感じています。

練馬区では2019年度から住まい確保支援事業として、高齢者、障害者、ひとり親家庭の世帯で住まい探しにお困りの方を支援する事業を実施しています。しかし、空き物件の情報提供事業については2021年度までの3年間、100件を超える相談に対し、成約は10件未満です。

空き物件の情報提供事業は、住まい探しを希望している人に申込書を書いていただき、そこに家賃や部屋の広さ、地域などの希望を記入してもらって、それを区から不動産団体に照会して2週間から4週間程度で結果をお知らせするというものです。

その上で希望に合う物件があればその物件を取り扱う不動産店にご自身で連絡してもらうということです。

 

そもそもこの方法に使いづらさがあるのではないでしょうか。不動産店や居住支援法人で直接お客様の対応をする場合、希望する物件についてはお話をお聞きしながら条件を精査していきます。そうすると、例えば最初は「どんな物件でも大丈夫」とおっしゃっていた方でも、「トイレとお風呂は別が良い」など、本当の希望が出てくることがあります。

そのため、申込書をご自身で書いていただくだけでは、物件とご本人の本当の希望がマッチングしない恐れがあります。また、お申込みいただいてから2週間~4週間程度で結果が出るということでは、不動産店に問い合わせたときにはすでにその物件は成約済みで、無くなっている可能性もあり、タイムリーな対応が難しいのではないかとも感じます。

そのため、情報提供事業はこのようなやり方ではなく、相談対応に積極的に取り組んでくださる不動産店や居住支援法人に委託をして、申し込みの段階からお話を聞いて対応できる体制を取る必要があるのではないかと考えます。

 

「立ち退きを迫られた人」だけを対象としている伴走型支援の対象拡大を!

空き物件の情報提供事業の成約件数が少ない中で、2021年度からは居住支援法人による伴走型支援事業がスタートしました。2021年度は伴走型支援事業の申し込みが39件に対し、19件の成約があったということです。この結果から見ても、希望の物件の確認から伴走して支援をする効果は大きいことが分かります。

しかし、伴走型支援の対象になるのは現在、立ち退きを迫られている世帯に限られています。住まい確保支援事業に申し込みをされている方の転居理由は、立ち退きのほかに、

・家賃が高い

・身体上の理由

・家族宅等からの転居

・離婚

などが挙げられています。

立ち退き以外も、切迫した生活の変化による理由が多いと考えられます。

伴走型支援を、立ち退きを迫られている世帯に限定した理由をお聞きします。

住まい確保支援事業を実効性のある事業とするため、伴走型支援の対象を拡大すべきと考えますが、区の見解をお聞きします。

 

伴走型支援は時間のかかるもの、という理解のもとに事業展開を。

今年3月の居住支援協議会の資料には、「伴走型支援において成約に至る日数は、平均でおよそ70日。最短で10日、最長で約150日であった」とあります。

実際、ご本人の心身の状況やご希望に合った物件を探すこと、また高齢や障害といった事情のある方を受け入れることのできる物件を探すことはかなり時間がかかります。ご自身で不動産店に行って物件を探すことが困難な方への居住支援は今後も一定の期間を要すると考えて区の事業展開をすることが必要です。今後この事業をどのように進めていくか、区の見解をお聞きします。

 

高齢者以外の住宅確保要配慮者が支援を利用しやすいように改善を。

住まい確保支援事業は高齢者、障害者、ひとり親家庭が対象ですが、2021年度で見ると、申し込み194件のうち、

・高齢者が128件

・高齢と障害の状態のある世帯が21件

・障害者が26件

・ひとり親家庭が19件

ということです。

高齢世帯と比べ、障害者、ひとり親家庭の件数が少ないですが、それぞれの類型ごとに住まい確保支援事業の申し込みにつながる経路はどのようなものなのでしょうか。

また、高齢以外の対象者の申し込みが少ない要因をどのように考えているか伺います。

高齢以外の世帯も相談しやすい工夫をするとともに、外国人、セクシュアルマイノリティなど、より幅広い住宅確保要配慮者に対象を広げるべきではないかと考えますが、見解をお聞きします。

 

区の支援にお申込みになった1人でも多くの方が成果につながる実効性のある事業への改善を求め、次の質問に移ります。

 

【回答:建築・開発担当部長】

区は、平成31年度(2019年度)から、高齢者や障害者、ひとり親家庭が、民間賃貸住宅に円滑に入居できるよう、住まい確保支援事業を開始しました。本事業では、不動産団体の協力を得て、高齢者などが入居可能な賃貸住宅の空き室情報を提供しています。

また、ご自身だけでは契約や転居などの手続きができない方や、障害があることで建物所有者の理解を得にくい方がいることから、情報提供だけでなく、見学や契約手続きに同行して住まい探しを支援する伴走型支援を、令和3年度(2021年度)から実施しています。立ち退きを迫られている世帯だけでなく、本人による住まい確保の難しさや意向も考慮して実施しています。

 

住まい確保支援事業は福祉事務所や地域包括支援センターの窓口などで紹介・周知している。

本事業は、支援の対象としている方々が訪れることも多い、福祉事務所や地域包括支援センターなどの窓口で事業を紹介・周知しており、多くの方から申込みをいただいています。

 

高齢世帯の申し込みが多いのは、高齢世帯そのものが多いからだと認識。情報提供をしても引っ越していない人もいる。

区内の高齢者世帯は、障害をお持ちの方やひとり親世帯に比べて対象となる方の数が多いことから、申し込みが最も多くなっていると認識しています。

申込者には、情報提供した物件へ転居した方の他、 別の手段により情報を得て転居した方や、情報提供を受けても引き続き現住所にお住まいの方も、少なからずいます。本事業は 物件探しの選択肢の一つとして活用している方も多いと考えます。

協力いただいている不動産事業者には、情報提供と併せて、高齢者など住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を増やすことを依頼しており、建物所有者の理解を深めることにも寄与していると認識しています。本事業については、居住支援協議会で協議し進めており 、現在、支援対象としている高齢者などの方々は、住宅確保要配慮者の中でも、とりわけ住まい探しに苦慮しているとのご指摘をいただいています。引き続き、これらの方々を対象に情報提供を行うとともに、伴走型支援を必要とする方々へのきめ細かな支援をおこなっていきます。

 

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私は議員の活動のほかに、非営利活動として住まい探しの支援活動をしています。その経験で見えた課題を議会で取り上げることがありますが、活動そのものは分けて考えたいと思って、議員のブログのほうには非営利活動のことはほとんど書いていないのですが、今回の質問の住まいの問題と、今後ご紹介する障害者施策については、現場で取り組んでいる中で本当に制度的課題があると感じているので、少し私の非営利活動のほうで感じていることも書きたいと思います。

 

現在、住宅セーフティネット法という法律に基づき、住まいの支援が進められてきていますが、まだ十分ではないと思っています。

私はその法律に位置付けられた「居住支援法人」という、住宅確保要配慮者の住まい探しや、住んだ後の見守りの活動をしています。高齢の人や障害のある人など、住まいにお困りの方に、希望の住まいを見つけて、契約まで結びつけるのは本当にたくさんのハードルがあり、なかなか成果にはつながりづらいです。昨年度は私の法人も1件しか成約できませんでした。それで、体制を強化しなければいけないと反省して、今年度は職員体制の強化と不動産店との連携強化をしました。それで、今年度4月~8月は実件数で32件の入居に関するご相談を受け(ちなみにそのうち高齢が8件、障害が22件、外国人1件、DV被害者1件)、4件成約をしました。

成約しなかったものの中には、他を探す、他で見つかった、などがあるので、たしかに、今回区が答弁しているように、様々な選択肢の中からどこのサービスを選ぶかを決めるのはご本人だと思います。ただ、私が細々やっている小さな法人が、やり方を工夫して4か月で4件成約したので、行政という大きく公的な組織が取り組むならもっと大規模な取り組みをするべきではないかなと思うのです。

で、じゃあうちの場合どういうやり方の工夫をしたかというと、質問の中にも書いたように、住まい探しをしている人が本当に何を望んでいるかをじっくり聞くこと、不動産店との連携をかなり密にとって一人の相談者があるたんびにかなりがっつり不動産店ともやり取りをしていることです。

 

選択肢のひとつといっても、「使い勝手が悪いから使えない」、「行政のとりくみだと期待したのにがっかりした」と言われるようなサービスならばいっそ提供しないほうがいいのでは。「相談した人の中に今でも元の住まいに住んでいる人もいる」という答弁もありましたが、それは転居を急がなかったケースもあるかもしれないけど本当は早く引っ越したいのに支援が得られなかったからどうして良いか分からない状態にある人もいるのでは。

 

せっかくやるならぜひ、実効性のあるとりくみへの改善を進めていただきたいと思います。