今回で一般質問の内容の報告は最後になります。

 

手話についても、秋の議会で、学校教育における手話というテーマで質問しましたが(こちら)、あまりにお粗末な答弁だったので、改めて、学校教育のみならず区の施策全般としてどのように考えていくのかという観点で質問しました。

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(かとうぎ桜子)

手話という言語について伺います。

私たちにとって日本語が、思考したり人にものを伝えるために重要な言語であるのと同様、手話はろう者にとってコミュニケーションツールであり、アイデンティティ形成のために重要な「言語」です。しかし、世界的に見ても、手話の価値は長く否定され、音声言語と比べて低く見られて差別されて、ろう者が言語として手話を使う権利が侵害されてきた歴史があります。例えばろう学校でもこどもたちが手話を使うことを厳しく禁じられてきた経緯があります。

 

練馬区議会では手話言語法を実現させてほしいというろう者の声を受けて、2014年に手話言語法を求める意見書を提出しましたが、現在は全国すべての自治体が同様の意見書を提出している状況です。また、まずは住民に身近な自治体での取り組みを進めてほしいという声により、全国の自治体で手話言語条例が作られています。全日本ろうあ連盟によると、この11月末の段階で24道府県、2区、153市、20町、合計199の自治体が手話言語条例を策定している状況にあります。23区のうちの2区は、今年度になって条例が成立しています。

 

例えば今年の7月に成立した荒川区の条例では、「手話は、独自の文法に基づき、手、指、体等の動きや表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者にとっての手話は、第一の言語であり、コミュニケーションの手段であると同時に、 アイデンティティであり、命である。」と述べたうえで、手話の理解促進・普及、手話による情報の取得・共有の機会の拡大、ろう者の社会参加の促進などに関する施策を区が実施することを定めています。

こうした手話言語法、手話言語条例に向けての当事者の思いを区としてどのように受け止めているかをお聞きします。

 

私は決算特別委員会で、学校教育における手話言語の取り扱いについて質問しましたが、「学習指導要領に記載されていないために基本的に教科で学習しないが、総合的な学習の時間で学ぶ場合もある」という答弁がありました。しかし、学校教育の中で手話言語を適切に教えてこなかった歴史を振り返れば、区立小中学校に通うこども達に対して手話という言語の意義を伝えることは教育の大きな責任ではないかと考えます。それが十分に体系的に実施されていないのはやはりいまだ、手話が音声言語の補足的な存在と誤認されている現状があるということなのではないでしょうか。

 

聴覚に障害のある子は、人工内耳や補聴器を使用することも多く、それらを用いてろう学校ではなく地域の学校に進学することも多くなっています。人工内耳による音声言語の活用と手話を併用しながら生活し、活躍している人も多くいて、どちらか一方しか選べないわけではありません。聴覚に障害のある当事者と保護者に対して、手話を含む情報保障のための様々な選択肢について、情報提供することも教育機関としての重要な役割ですが、その点はどのように取り組んでいるのかを伺います。

 

また、決算特別委員会での教育委員会事務局からの答弁は、先に述べた総合学習での取り組みの話以外は非常に簡素で漠然としたもので、物足りなさを感じさせられました。学校教育での取り組みはどのようになされているのか、より具体的にお答えください。

手話を独立した言語としてとらえ、尊重するということについていまだ十分に行なわれていないのは、教育現場だけの問題ではなく、社会全体の課題といえます。

 

これまで述べてきたように学校教育の中では学習指導要領に定められていないなど明確なルールがないことによってやったりやらなかったりする現状があるというのであれば、ルールを定めなければならないのではないかと考えます。練馬区として手話言語条例を策定すべきなのではないでしょうか。手話言語条例についての区の考えをお聞きします。

また、条例策定以外の方法も含め、手話を学ぶ権利、手話を使う権利を保障するための取り組みをどのように充実させていくか、お考えをお聞きします。

 

(福祉部長)

手話についてです。

手話には、言語として取り扱われてこなかった歴史的背景があることは認識しています。

当事者の方々には、手話が音声言語と対等な言語であることを広め、様々な場面で手話による情報の提供・獲得が行なわれ、聴覚障害者が手話を身につけ、手話で学べるようにするとともに、手話を言語として普及、研究することができる環境整備してほしいという思いがあると理解をしております。

手話は、音声ではなく、手や指、身体などの動きや顔の表情を使い、独自の語彙や文法体系で表現する言語です。平成23年8月に改正された障害者基本法において手話は、言語として規定されました。

 

聴覚障害者に限らず、視覚障害者、知的障害者などコミュニケーションに困難を抱える障害状況は様々です。障害者基本法、本年10月に施行された「東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例」を踏まえ、区は、住民の最前線の対応窓口として、手話や点字、要約筆記、読み上げ装置、UDトークなどを活用し、様々な障害者への適切な情報提供の具体的な取り組みを着実に進めています。区として、新たに手話言語条例を制定する考えはありません。

 

手話を学び、使うことについて、当事者への手話講座をはじめ、手話通訳者養成・派遣事業、手話通訳者設置事業、相互理解を深めるユニバーサルフェスの開催など、当事者や団体の方々のご意見をうかがいながら、引き続き取り組んでまいります。

 

(教育振興部長)

聴覚障害のある子どもへの支援についてです。

区では、小学校2校と中学校1校に難聴の通級指導学級を設置し、難聴の児童生徒に対する個別指導を行い、通常学級での学習と生活への支援を行っています。

通常学級においては、保護者の意向に応じて、授業の内容をリアルタイムで要約筆記するなどの配慮を行っています。今後とも、一人ひとりの障害に応じた制度などの情報提供や、きめ細やかな支援を行ってまいります。

 

次に、学校教育における手話への取組についてです。

区内の小中学校では、総合的な学習の時間等を活用し、練馬区聴覚障害者協会と連携した取り組みを行っています。また、演奏に手話を交えた音楽朝会や合唱コンクール、手話を目的とした部活動などを各校で実施しています。

こうした取組を全校に広げることにより、聴覚に障害のある児童生徒の学習環境と支援を充実してまいります。

 

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社会の基本的な姿勢を示すために条例を作ってほしいと願う区民と、実質的な対応は条例を作らなくても障害者基本法を根拠にやっていけばいいのだと考える行政とで基本的な認識が違う部分があるようにも思いますが、少なくとも陳情が出ている現状で「条例を制定する考えはありません」とまで言いきってしまって良いものかと疑問を感じました。まずは当事者とよく意見交換し方向性を共有するべきではないかと。

 

それから学校教育については、以前のときから気になっていたのですが、「保護者の意向に応じて配慮を行なっている」というところです。障害のある当事者と保護者は別人格ですよね。というか、そもそも障害の有無に限らず、児童生徒と保護者は別ですよね。保護者の意向を聞くことはもちろん大事だけれど、それをもって当事者の意見を聞いたと考えているとしたら、それは間違っていると思います。