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ふたしかなるにちにち

日々の出来事を記す、私小説的散文「あたし文体」


ふたしかなるにちにち


 九州やら中国やら近畿やら東北やら、日本のどの辺までそれがあるのかは知らないが、東京にはあった。少なくともあたしのウロウロする、たいして広くもない行動範囲の中には、「三井住友海上きらめき生命」というなんだかわからないが妙に豪華な名前のその生保はあったのだ。
 ちなみに三件。そこそこの大きさの、別にきらきらときらめいちゃってるワケでもない程良く汚れたビルに、やっぱり程良く汚れた看板が掛かっている。

 そして、そこに「三井住友海上きらめき生命」の名前。もう一回書くが、「三井住友海上きらめき生命」。さらに書くが「三井住友海上きらめき~」うーん、何度書いても慣れないなぁとあたしを思わしむ、すばらしく違和感のある名前だ。初めて見たときからビリビリッとカラダに電気が走り、それ以来あたしのアタマを離れることはない。どう考えても疑問が残る名前。

「誰か止めなかったのかなー?」

と未だに思っている。
 まぁそりゃ、海上はきらきらきらめくし、生命だって消える直前はきらめくと聞く。だからといって「三井住友海上きらめき生命」とは。
 イロイロ会社の事情もおありだろう。合併やらなにやらで社員の確執やらなにやら、会社のメンツとかそういったなにやらの狭間で、
「ココはひとつ受け入れやすい名前を!」
とかそのあたりの事情も察しなくはないが、果たして「きらめき」が適当であったのかどうか。いまいちというかかなりの疑問が残らないでもない。

 しかしながら、あたしも「ダメだ!ダメだ!」と言うばかりの心の狭い男ではない。やはり、他人の名前に疑問符を投げかけたのであれば、よりよい代替案というヤツを提示しないでもない。
 その名も、

「三井住友海上ときめき生命」

 さぁ、いかがなものか!栄えある候補第一位。

『お客様の人生と死んだり生きたり事故ったりをめくるめく「ときめき」でやさしくサポート。胸がキュンとなっちゃう切ないパートナー。アナタのおそばに「三井住友海上ときめき生命」』

である。
 顧客倍増間違いなしのこのネーミングに、あたしもはなはだ自分の才能が恐ろしいというもの。

 こんな名前を付けられてしまっては、何口でも加入したくなってしまう。ときめき不足のアナタから、人生に疲れたアナタ、今まさに屋上で覚悟を決めたアナタまで。みんなを守るベストパートナー「三井住友海上ときめき生命」をみなさまもよろしくしてやっていただきたい。

 ちなみに他の代替案として、「三井住友海上めきめき生命」とか「三井住友海上むきむき生命」とかあったが、どれもキュンとならないので、やはり「ときめき生命」。
 それで行っていただきたいものだ。


ふたしかなるにちにち


わずかに開いたカーテンから
差し込む青白い月の光が 君と部屋を染め

透けた肢体(からだ)に残る熱も
耳に残る息遣いさえ 奪い去って行く

それはまるで死体のよう
月の光にかたどられた

タオルケットを抱きかかえ
丸めた背中とうなじ

微かに上下する肩が 最後に残った生の証

ああ たとえばこのまま時が止まったとして
眠る君を見続けたまま
あの日描いた未来に追いつけるだろうか

ああ たとえばここでその首を絞めて
君が呼吸をやめたら
あの日話してくれた夢に届くだろうか

わずかに開いたカーテンから差し込む月の光は 
すべてを青白く照らし
過ぎ行く時間が ゆっくりと明日をつれてくる

世界がまだ夜のうちに
君が体温を取り戻す前に

僕らはどうしたら 幸せになれるんだろう

日中またもペットコーナーへ。
そして、本日はネコ缶をイロイロ見て回った。ちなみに断っておくが、ネコ缶とはネコの缶詰ではなくて、ネコのエサの缶詰のコトだ。
ところで、このネコ缶。最近はかなりの種類が出ているようで、ペットコーナーのネコ缶棚を見渡せばそこはお魚系味覚の宝庫となっている。「かつお節入りマグロ」とか「サーモン入りツナ」とか「しらす入りマグロ」とか。空腹時に訪れれば間違いなく涎を垂らすだろう美味そうな名前に、あたしも本日見事に不覚をとり、ネコ缶棚を見ていてじゅるると喉を鳴らしてしまったのである。
コレは人間としてどうかと思う。しかし、これほど美味そうな名前が並んでいては、口の中に溢れ出る涎が止まるわけはない。人間の尊厳の危機なのである!
が、そんな折り、ネコ缶棚の美味そうなネコ缶群に紛れて一つおかしな味のものを見つけた。
その味も「ツナ入りマグロ」
さてどうしたものか。なにしろマグロの洋名はツナである。日本語訳すれば「マグロ入りマグロ」と言うことになるのだが、コレはつまり
「このネコ缶はイヤだって程マグロだらけですよー」
とアッピールしたいのか、はたまたあたしも知らない「ツナ」という新種の海産物がいるのか。この降って湧いた疑問に今までの涎もどこへやら、あたしの頭は支配されてしまった。実にぎりぎりセーフ。
「マグロいっぱい」だろうが「新海産物ツナ」であろうが、どちらにせよこのマグロ入りマグロのおかげであたしの人間としての尊厳は守られたのだ。
ニャーと叫んでネコ缶を食べ始めるに至らなかったコトをこのネコ缶に感謝しなければなるまい。