大阪万博の建設費の大幅増額

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 大阪万博2025の建設費が大幅に増加しています。誘致時点(2018年11月)では1,250億円だったのが、2020年12月には1,850億円に増額、2023年10月には更に2,350億円へと増額。岸田内閣の経済政策では物価高は今後も続く可能性が高いので、更なる増額のリスクがあります。

 

 増額の原因の一つは「世界最大の日傘」とも言われている大屋根(リング)の350億円です。東京スカイツリー建設費の400億円と比較しても費用対効果が悪いです。東京スカイツリーは、2012年の開業以来、電波塔として日々運営しつつ、年間平均約500万人(コロナ感染症前の実績)が訪れる観光スポットにもなっています。大阪万博の大屋根は半年で終わりです。

 そもそも大屋根は当初の計画にはありませんでした。ということは、必要ではなかったということです。大阪万博のジェネラルマネージャーの思い付きで突然、350億円もの建設が追加されました。こうした行き当たりばったりが、混迷の原因の一つです。

 

 1970年開催の大阪万博との比較では、時代背景が全く異なります。戦後復興からの高度経済成長の中にあって、日本を世界にアピールするという目的がありました。今は、アピールしなくても広く知られています。たった半年のイベントのために、巨額の資金を投じる必要があるのか、その意義が不明です。

 2005年開催の愛知万博(愛・地球博)との比較では、愛知万博は当初の1,350億円の予算の範囲で納めました。そして、1,500万人という来場者数の目標を大きく上回る2,200万人で、140億円もの黒字になりました。これは、経済的な成功を目指したからというよりは、経済的な目標を度外視した結果といわれています。会場予定地にオオタカの巣がみつかるなど、万博のテーマの自然環境保全の理念とは逆に万博開催が自然を破壊するとの批判があがりました。地域の団体と徹底的な議論を通じて、「自然の叡智」というテーマに集中することにしました。教育テレビで視聴率を稼ごうとするようなもので不可能だとも言われました。それでも愚直に「自然の叡智」をつきつめた結果、開会の初期段階では盛り上がりに欠けたのがしり上がりに盛り上がりました。

 

 大阪万博2025の迷走の原因は、テーマに「いのち輝く」と掲げながら、実は経済効果を狙っているというスケベ心が垣間見えることです。ここは原点に立ち返り、「いのち輝く」とは人類にとって地球社会にとってどういうことなのか、人類は何をなすべきか、万博において何を成し遂げて将来にレガシーとして何を残すのかを徹底的に追求することを提案します。大事なものを中心に据えつつ、無駄を削ぎ落せば、本物の万博になります。そうすれば、人が集います。経済効果は後からついてくるものです。

しかし、もし本物の万博にできないのならば、大阪万博2025は思い切って中止すべきです。ニセモノの万博は税金のムダ遣いそのものですから。