グローバル化が進み、「英語」の必要性ひつようせいはますます高まってきています。 その英語の学習法ほうの一つに、英語の本をたくさん読む「多読」があります。多読を授業じゅぎょうに取り入れ、図書館に多くの多読用の英語本を持つ東京工業高等専門せんもん学校(東京都八王子市)を訪れました。
http://www.yomiuri.co.jp/teen/junior/jnews/20170220-OYT8T50010.html
大体の内容分かれば先へ進む
英語の「多読」では、文字通り数多くの本を読みます。同校で英語を教える竹田恒美先生によれば、「多読の3原則」は、「英語は英語のままで理解りかいする」「7~8割わりの理解度で読む」「つまらなければ後回し」。意味が分からない単語たんごに出会っても、すぐに辞書じしょを引かず、大体の内容ないようが分かれば、どんどん先に進みます。ですから、初めはやさしい本を選ぶのがポイントです。
「目安として、1分間に100語読める程度ていどの本」と言われ、「そんなに?」と思いました。ちなみに、「I have a pen」で、4語です。でも、「ごく初心者しょしんしゃ向けには、文字のない絵本のようなものもありますよ」と聞き、ほっとしました。
竹田先生は、90分の読解どっかいの授業で、最後の30分を多読にあてているそうです。学校の図書館には、様々さまざまなレベル、ジャンルの多読用英語本が約やく7000冊さつあり、生徒せいとは自分の英語力や好このみに応おうじて読み物を選えらびます。「簡単かんたんな本でいい。すらすら読めるという成功体験せいこうたいけんを積つむことが大切です」と竹田先生は言います。
英語の多読では、ハードカバーや、いわゆるペーパーバックの洋書よりぐっとやさしい英語で書かれた、絵本のような薄手うすでの本がよく使われます。たとえ英語がよく分からなくても、絵が理解を助けてくれます。
竹田先生おすすめのORTシリーズ
竹田先生のおすすめは、イギリスの小学生向けのORT(Oxford Reading Tree)シリーズ。キッパーという男の子と、その家族や友だちの日常にちじょう生活がイラストとともに描えがかれ、自然な英語と、イギリスの習慣・文化に触ふれることができます。本は、難易度なんいどの低い方から順に「ステージ1~9」に分けられていて、自分の英語力に合ったものを選べます。
先生が見せてくださった1冊は、「oh」「no」、そして、キッパーの家の飼かい犬の名前「Floppy(フロッピー)」の3語しか使われていません。それでも、失敗しっぱいばかりのフロッピーが家族に愛あいされている様子が分かり、これなら楽しく読み進められそうだと思いました。
多読用の本は、学習者向けに朗読ろうどくCDが付いているものも少なくありません。音声を聞きながら黙読もくどくしたり、朗読と一緒いっしょに、まねをしながら読むと、発音も身に付つくそうです。
なぜ多読を取り入れたかについて、「英語という以前に、読書をしてほしい。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及ふきゅうなどのせいか、若者わかものの読む力が落ちていることが心配されていますよね」と、竹田先生。
では、なぜ英語なのでしょうか。同校は5年間かけて技術者ぎじゅつしゃを育てていますが、「学校で、もっとやっておけばよかったと思う勉強は?」と聞かれて、卒業生たちが異口同音に答えるのは「英語」だそう。卒業生が社会に出ると、海外出張や海外駐在で英語を話したり、英語のマニュアルや契約書を読んだりする機会きかいがとても多いということです。
「理系の学生の中には、英単語などの暗記が嫌きらいという人も多い。そんな学生たちに楽しく勉強してもらうのに、多読はぴったり」と竹田先生は言います。英語多読は、愛知あいち県豊田とよた市の豊田工業高等専門学校を先駆に、各地の工業高専で導入されているそうです。
言語には音声言語と文字言語があります。どちらも用法基盤ではなく、事例を覚える事例基盤です。すると多読は文字英語の学習を促進するもんです。黙読では単に情報の吸収だけかも知れません。