調音音声学と音声科学は似たような響きがありますが、似て非なるものです。
調音音声学とは音声を音素に分割してその音を学ぶ事です。すべての英語の音が発音でき、聞き取れると言う学問です。現在の調音音声学や発音記号はすべてこの考えに基ずいています。
音を体系的に見る、物の捉え方は非常に科学的なのですが、音声に音素と言う単位が存在すると言う考えは大変非科学的な考えです。
調音音声学は音声には音素が線状に並んでいるものという、前提の基に音の体系が成り立っております。音素の根拠がまったくないまま、音の体系が構成されております。
現在でも調音音声学では音素の記述のみで音素の物理的な定義はなされておりません。
一方で音声科学の分野では純粋に音声を科学的に分析をしてどのようなものであるかを解明しております。藤村氏の”音声科学原論”では調音音声学では母音が子音と同格で並んでいると考えるのは無理があると言っています。
藤村氏は母音は各シラブルの中核となり、子音はその周辺に一時的な逸脱として乗っていると考えるのが科学的な見方であるとしております。
子音は時間的にも空間的にも局所的であり、科学的にみれば子音と母音を同格に見ること自体がおかしいとしております。
そしてそのような音声の科学的な見方は調音音声学との摩擦も存在すると本に書かれています。
しかし、このような音声の科学的な研究はこの数年で始まったものでなく数十年前から研究され、少しずつ音声の真実が解明されていきました。
私が理解できないのは、どうしてこのような科学的に解明された事実に基づいた発音や聞き取りの教育者や教育法がなぜ存在しないのか不思議に思っております。
もし誰もやっていないとすると、私のこれからの活動に関しては一層の責任を感じます。