雪渓を駆け下るまでは、目前に聳える残雪の大雪山をほぼ同じ高さの山の頂きから直線距離で眺めていたものですから、あの雪渓を直登すれば割に簡単だろうと思っていました。
でも、一旦下まで降りてあらためて見上げると、かなり距離もあり途中薮漕ぎも必要みたいです。
ちょうど、登山道も見付かり、何人かのハイカーの姿も見えたので、無理をせず正規のルートを歩くことにしました。
旭岳をバックにお花畑でさくらを撮影し、振り返ると先ほど駆け降りて来た雪渓が輝いていました。
暫く旭岳を右手に見ながら楽チンな木道歩きを続けるとやがて硫黄の臭いが漂い、中岳の露天風呂に到着です。
男性三人が足を付けていましたが、まだ温過ぎて入浴には覚悟が要るそうです。
ちょうどお昼頃だったので、上半身だけ汗を拭い、雪解け水に冷やしておいたビールを飲んで生き返り、軽い食事休憩しました。
ここまで6時間です。
今日の行動は12時間、午後6時には下山と決めています。
でも途中、道を見失い遠回りして時間をロスしてしまいました。
ここから旭岳まで歩くと下山まであと最低7~8時間は必要です。
ロープウェイ利用のハイカーの多い旭岳にはあまり魅力はありませんが、間宮岳から白雲岳へ続く遥かな稜線、天空の散歩道だけは一歩でも歩きたい、
そんな思いで再び歩き始めました。
中岳分岐では黒岳方面へ縦走する登山者とロープウェイ駅に下りるハイカーが交差しますが、この時間ではさすがに縦走者には出会いません。
考えてみれば、私たちの方が帰りの距離は長いのにお気楽なものです。
さくらが居なければ、心細くてとても不安になるでしょうが…。
間宮岳に2時ちょうどに到着、大好きな御鉢平の景観と憧れの稜線を眺めます。
午後から多少雲は出てきたものの、遠くで青空へ続いて行くような遥けき稜線を再び見ることが出来て、幸せいっぱいです。
二度目のさくらも余裕です。
間宮岳の標識や御鉢平での嬉しそうな顔を見るといったい、ワンコには帰りの道程、時間など気にはならないのだろうか、と思ってしまいます。
さぁ、帰りは来た時間の半分で帰ります。
帰れると身体が教えてくれています。
疲れを覚えない身体と誰もいない帰り道で頼りになるさくらに感謝しながら大雪山を下りました。
愛山渓への最短ルートの当麻岳分岐を通り、愛山渓温泉には5時半に着きました。
途中の沢でさくらの足を洗ったので、実歩行時間は間宮岳から3時間余り、標準タイムの半分ほどで下山しました。
途中、雪渓で途絶えた道を捜し出してくれたさくらにあらためて感謝です。
(終)