毎週日曜日に連載中の『私が大切にしている言葉たち』シリーズ
私がこれまでに出会った恩師やダンサーの方たちの言葉の中から、大切にしているものを紹介していきます。
今回は、元タカラジェンヌで当時メンタルトレーニングのトレーナーだったYさんの言葉から。
『経理も出来る、バレエ教師になるんだよね。』
当時、私は10年働いた会社を辞めたばかりで、趣味で通っていたバレエ教室でアルバイトとして先生のお手伝いをしていました。
また、自分の進路について迷いながら、退職金でボディワークとメンタルトレーニングの勉強をしていました。
そんな時、主宰されていた先生がお亡くなりになったので、後継の方に「正社員にするから教室を支えるのを手伝って欲しい」と頼まれたので、前職を活かして、受付・事務・経理などをしながら、若い先生方のサポートをしていました。
けれども、その仕事はとりあえず先生の追悼公演を成功させるまでの一時的なもの。
先生がいなくなったその教室は、以前とはまったく違った雰囲気に包まれていました。
私は追悼公演が終わったらその教室を去ることを心に決めていました。
そんな時に出会ったのが、このYさんです。
容姿も美しく、キラキラなオーラがあり、会うたびにニッコリしてしまうくらい、魅力的な方でした。
一度だけプリエ(バレエの動きの1つ)をして見せてくれましたが、未だにあんなに華やかなプリエを見たことがありません。
Yさんはバレエやジャズダンスが大好きな私を気にかけてくれて、仲良くしてくださいました。
メンタルトレーニングの勉強は1年間同じメンバーで行い、生徒は日本全国から集まってきていました。
セッションやセラピーはトレーナーと受講生や、受講生同士でセラピストとクライアントに分かれておこないますので、自分のことを話したり、相手の悩みを聞いたりすることもよくありました。
そのため、受講生同士やトレーナーは、それぞれにどういう人柄で、どういうことで悩んでいるのかをよく知っていました。
その頃、私はこの先どうやって生きて行こうかと迷っていました。
会社は頼りにならない。
当時、私が勤めていた会社は、いわゆる一流企業で“定年もクビもない”、ということが大きな特徴である会社でした。(創業者は沢山の本や映画になるほど有名な方です。)
でも、私が辞めたのは会社都合でした。
岡山支店が広島支店と統合して中国支店になるので、広島に転勤するか、広島へ新幹線で通うか、退職するか。
広島の方が岡山よりも沢山バレエ教室があり、素晴らしい先生方も沢山いらっしゃることと思いますが、当時の私にとって大切な居場所だったバレエ教室を変わるなんて、考えられない!と思っていました。
(その数ヶ月後に、教室を主宰されていた先生が事故で亡くなるのですから、人生というのはわからないものです。)
私たちが、その会社でたぶん初めて会社都合で退職したグループだったのだと思います。
「結婚して、旦那に食べさせてもらえばいいじゃない!」という人も多かったのですが、もし旦那が病気になったら?働けなくなったら?万一のことがあったら?
それに私はとても自立心の強い子供で、中学生の頃からこう思っていました。
『自分を頼りにやっていける仕事がしたい。』
『自分の力で勝負出来る仕事がしたい。』
『自分の人生は自分で切り拓きたい』
『自分の食いぶちは、自分で稼ぐ。』(ちょっと時代劇の見過ぎですかね?今考えると、なかなかの中学生です。)
そしてまた、こうも思っていました。
『出来れば、今度は好きなことを仕事にしたい。』
実際に社会に出てみると気がつくのですが“仕事”ってたとえば、電気会社で働けば、ずーっと電気のことばかり。建設会社で働けば、ずーっと家のこと。パン屋さんで働けば、ずーっとパンのことばかり考えるってことなんですよね。
仕事って普通は1日8時間くらいしますよね。
それって、24時間の3分の1です。つまり、人生の3分の1。
そんなにも時間を費やすものならば、どうせなら、好きなことがしたい。
好きなことを極めたい。
・・・とはいえ、当時はまだ若く、自信もなく、実際に自分に何が出来るのか、また、何をしたいのかを模索していた時期でした。
バレエが大好きでしたが、大人からバレエをはじめた自分がバレエの教師になるなんて、夢をみることさえ出来ないほど、遠い憧れでした。
そんな時に、働いていたバレエ教室で作っていただいた名刺には、“〇〇バレエ 経理 桜”と書かれていました。
私はこの名刺の“経理”の前に“踊る”と言う言葉を手書きで書き足して、“踊る経理 桜”としていました。
ちょっとした、ユーモアのつもりでした。
今回の言葉は、その名刺をYさんに連絡先を聞かれて、渡した時の言葉です。
その名刺を見た、Yさんが笑顔でこう言ってくれたのです。
「今は、“踊る経理”だけど、そのうち“経理も出来る教師”になるんだよね。」
その言葉を聞いて、私はハッとして顔を上げました。
(私が、教師に、なる・・・?)
(経理も出来る、教師に、なる・・・?)
はじめて、自分の夢を言葉で聞いた瞬間でした。
自分では絶対に無理だと思っていることでも、だれかのたった一言で背中を押されることもある。
自分の可能性を、自分でとめる必要はないんだ。
自分にリミットをかける必要はないんだ。
あきらめなくて、いいんだ。
そう思いました。
Yさんは今、メンタルトレーナーを卒業して、宝塚を受験する人ための学校を開き、ご活躍されています。
きっと今も、たくさんの人たちの背中を押し続けていることでしょう。
この言葉は、私が今でも、とても大切にしている言葉のうちの1つです。
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