毎週水曜日連載中の『教えて!サクラバレエ』シリーズ。
見学や体験レッスンに来てくれた方達が書いてくれたアンケートの質問への答えや、私発信でサクラバレエについてのお話しをしていきます。
9回目の今回は、~発表会について~です。少し長くなりそうなので、2回に分けてお話ししたいと思います。
「発表会は出なくてはいけませんか?」
「発表会は全員参加ですか?」
この発表会についての質問は、どこのバレエ教室でも本当によく受けます。
まず最初に、サクラバレエでは発表会、正式名称は“学習発表会”であり、カリキュラムの一環です。
学校でいうところの“中間試験”“期末試験”“文化祭”“体育祭”“修学旅行”などと同じだということです。
ですから、普通は参加するものだと思っておいて下さい。
ただし、ここポイントなのですが、サクラバレエの発表会は自由参加です。
出たい人は出れば良いし、出たくない人は出なくても良いのです。
毎年、何人かは参加しない人がいます。
理由はさまざまです。
「入会したばかりなので、もう少しバレエに慣れてからにします。」
という新人さん。
(新人さんこそ勉強になるし、お友達も出来るので、出れば良いのに!とは思いますが、気持ちはわかります。)
「結婚したばかりで、妊活もしたいので、今年はやめておきます。」
「昨年参加したら、娘(小学校低学年)がちょっと寂しそうにしてたので、今年は様子をみさせて下さい。」
など、家庭の都合によるもの。
「同僚が入院して、代わりの人がみつからないので、今年は無理っぽいです。」
「部署を異動して激務で倒れそうです。今年はあきらめます。」
など、仕事の都合によるもの。
「我が家の予算の都合上、2年に1回の参加にさせて下さい。」
「大学の学費も、自分の生活費も、週4日のバレエのレッスン料も、ぜんぶ自分のバイト代だけでまかなっているので、学生のうちは発表会参加は難しいです。」
など、経済的な理由によるもの。
「入院・手術で体力が落ちているので、今年は身体を休めます。」
「前回の発表会で力尽きたので、今回はちょっとお休みします。」
など、気力・体力によるもの。
「はい、わかりました。次は出られると良いですね~。」と言って、おしまいです。
出たいのに出られない気持ちがわかるからです。
ガンバりすぎて疲れてちょっとお休みしたい気持ちもわかるからです。
そこは、長い目で見守っていますから。
それにうちは、発表会に出なくても、発表会の練習を見たり、後ろの方で一緒に踊ったりすることが許可されていますので、
(普通の教室では、発表会に参加しない人は、スタジオの外に出されます)
やる気があれば、発表会の作品を練習することも出来ます。
そして、発表会のお手伝いも出来る範囲でしてもらっています。(もちろん、何もお手伝いしなくてもOKです!)
ゲストの方の衣装を調整してもらったり、本番当日に受付やメイクを手伝ってもらったり、内容は様々ですが、皆さん本当によく手伝って下さいます。
それは、せっかくの文化祭、体育祭なので、本番に出られようが出られまいが、みんなで楽しみましょう!ということなんですね。
◇
このように事情があって、今は発表会に出られません、というのはもちろんOKなんです。
2年でも3年でも、出られるようになるまで待ちます。
なぜなら、発表会に出られなくて一番つらいのは、本人だからです。
ところが、最初から最後まで、発表会に出るつもりが全くない、または絶対に発表会には出たくない、という方の場合はちょっと事情が変わって来ます。
発表会に出たくない理由は色々あると思います。
それは、もちろんそれでOKだと思います。
ただ、その場合はやはり、カリキュラムに発表会が組み込まれていない教室や、大人はおまけなので、出ても出なくてもどっちでも良いですよ、という教室、発表会が最初からないカルチャ―スクールやフィットネスを選択する方がお互いにとって良いと思います。
例えば、アイドルの場合。
わかりやすく、ジャニーズ事務所で例えてみましょうか。
ジャニーズのオーディションに合格して、ジャニーズJr.としてレッスンに通えるようになりました。
練習して少しずつ実力もついてきました。
そして、「じゃあ、次の嵐のコンサートでバックについて(バックダンサーとして踊って)」
「来週のミュージックステーションでKing&Princeのバックについて」とついに言ってもらえたのに、
「いえ、ステージには上がりたくないので、お断りします。」「テレビに出たい訳ではないので、出ません。」と答える人、どう思います?
それと一緒です。
バレエ教室に入会する、というのはある意味、先生のオーディションに合格したということになります。
“月謝”を払うということは、先生の弟子になった、ということ。
生徒が先生を選ぶように、先生も生徒を選びます。
あまりにも常識がない、無礼すぎる、コミニケーションでトラブルをおこしそう、うちの雰囲気に合わない…など、
(この人はうちでは上手くやっていけないだろうな)
(うちでは続かないだろうな)と思う人には、
「あなたはうちじゃない方がいいんじゃないかしら…」と告げて、ニッコリ笑って、門をピシャリと閉めます。
自分が教えたい生徒、例えばプロのバレリーナを育てたい先生の場合は、バレエに向いている運動神経や頭脳を持っている、性格が素直、他の先生に習っていない子供などですね。その条件を満たしていない人には興味がなく、見学の申し込みをした時点で、電話口でハッキリと断られる先生もいらっしゃいます。
「大人は募集していません。」
「よそのお教室で長年レッスンされていて、今からうちへ来て、うまくいくかしらね?」などです。
その点、バレエの教師はYESかNOか、ものすごくハッキリしていますね。
うちの場合も、年齢が18歳未満の方、男性の方、どう頑張っても月に2回くらいしか通えない方、お子さんが違うバレエ教室に通っている方などはそれぞれに理由があり、原則としてお断りさせて頂いています。
また違う例えをするなら、プロ野球に入団して、いざ試合のメンバーに選ばれて、
「いえ、試合には出たくありません。」
と言っているのと同じことになります。
すると、その場にいる全員がこう思います。
「…それで、あなたは一体、ここへ何をしに来たの?」と。
それでもここにいたい、ということであれば、いてもらってもかまいません。
発表会には出たくないけれど、上手にはなりたいから入会したい、というのであれば止めません。
ただ、どこの世界でも一緒だと思いますが、
アイドルで言えば、ステージに立つ人達が一軍です。
プロ野球で言えば、試合に出る人達が一軍です。
ハッキリ言います。
サクラバレエではステージには立ちたくない人、立たない人は二軍選手です。
アイドルでもプロ野球チームでも、そのチームの中心は一軍の人達です。
一軍選手を中心にすべては動きます。
だから、発表会に出ない人達は、発表会の練習を見ても良いです。
後ろの方で練習しても良いです。
だけど、注意してもらえるのは、なおしをしてもらえるのは、基本的に発表会に出る人達です。
ただし、発表会に出ない人でも、自分で振りを覚えて、「先生、見て下さい!」と言ってくるくらいの、やる気と根性のある人は踊りをみます。
やる気があるけど出られないのか、出たくないのかは人は、すぐにわかります。やる気がある人は応援します。
バレエは、教師もスタジオも、発表会に出る人達を中心に動きます。
それに、そもそも、発表会作品の振付料も、曲の編集料も、指導料も、すべて発表会の出演者達の参加費でまかなわれています。
発表会に出る人達が中心なのは、ごく当たり前だと思います。
だから、「発表会に出なくてはいけませんか?」という質問には、こうお聞きします。
「逆に、あなたは本当に発表会に出なくても良いんですか?」と。
ジャニーズのレッスン場でレッスンしているだけでは、アイドルとは呼べません。
プロ野球チームに所属していても、練習だけしていて一度も試合に出なければ、何をしているのかわかりません。
バレエ教室に通っていても、舞台に立って人前で踊らなければ、残念ながらバレエが踊れるとは言えません。
自分が目指している着地点と、その教室が目指している着地点が違う場合は、ハッピーエンドはなかなか難しいだろうな、と正直思います。
だから、自分がやりたいこと、目指しているところ、バレエをとおして何を手に入れたいのか、どんな経験をしたいのかを知っておく必要があります。
また、自分が入ろうとしているチームがどこを目指しているのか、自分が進みたい方向と同じかどうかは、ある程度調べておいた方が、お互いに時間とエネルギーのロスが少なくてすみます。
◇
そして、もう一つの側面から。
バレエを習う上で、一番楽しいのが、この“舞台に上がってスポットライトを浴びて踊る”発表会です。
「バレエの楽しかった思い出は?」と聞かれると、大人も子供もおそらく一番多く口にするのが、
「発表会!」だと思います。
うちでも、発表会に一度参加したら、みんな次の舞台をとても楽しみにしてくれています。
楽しいことばかりではなく、エネルギーもたくさん使うし、大変なこともあると思いますが、それでもみんなとても楽しんでくれているようです。
一番楽しいところ、一番美味しいところを、体験しなくて良いのですか?
誰でもが出来ることではありません。
誰でもが立てる舞台ではありません。
チュチュは努力の証です。頑張っているのに、着なくても良いんですか?
トゥシューズは努力の結晶です。頑張っているのに、ステージで履かなくても良いんですか?
もう一度、聞きます。
「本当にあなたは、発表会に出なくてもいいんですか?」