昨年の発表会で、何が素晴らしかったって、それは出演者達が
“自分で自分を上手にしはじめた”
というではないでしょうか。
うちは、良くも悪くも、皆、穏やかで素直。
「私が一番よ!」
「ちょっとアンタ、どきなさいよ!」
という、「私が私が」という、少女バレエマンガに出て来そうな人(普通のバレエ教室では、割と沢山お目にかかりますが)は、ほとんどいません。
みんなとっても真面目で、先生に言われたことは、きちんとやってくれます。
努力もします。向上心もあります。
だけど、どこか少し自信がないというか、
「先生に上手にしてもらおう」
「バレエを習っていればそのうち上手になるよね。」という受け身の姿勢が強めな人が多かったような気がします。
自分で自分を上手にする、なんて考えたこともなかったし、出来るとも思っていなかった。
それでも、私はあえて、
“スパルタにして、緊張感をもたせる”という、従来のバレエ教室のやり方はしませんでした。
誰かに言われてやって、出来るようになっても、やらされている感がついてまわって、気分が良くありません。(勉強でも、そうですよね)
本当の意味でも自主性が育ちませんし、“自分でやった!”“自分で出来た!”という自信になりにくい。
上手に踊れるのに、先生や親の顔色をいつも伺って、いつも自信がない人達を、これまで沢山見てきましたから。
だから何年か前に指導方を変えて、時間はかかるけれども、生徒が自分からやるようになるのを、じーっと待つことにしたんです。先生はそれをサポートするだけ。
そして昨年の夏。チャンスは突然やって来ました。私が体調を崩して、発表会の振り写しと練習する予定が大幅にずれていったのです。
ふだんは、穏やかな生徒達が、ここで立ち上がります。
「もう、先生を待っていられない!」
「こうなったら、自分達でやるしかない!」と。
名付けて、“桜田門外の変”ならぬ、“サクラバレエの変”です。
普段、穏やかな生徒達は、自分達で動画を見て、振り写しをしはじめます。
「先生、この振付で行きたいんですけど、どうでしょう?!」
「こんな感じでやろうと思うのですが、どうでしょう?!」
すごい気迫です。
順番待ちです。
それまで、私が
「今回の振りは、このDVDとほとんど同じなのよ。」と言っても、
「いや~先生、観ても何をやっているのかわかりませんから~。」と言っていた人達が、
自分達で必死にYouTubeやDVDから振りおこしをして、紙に書いて見せてくれたり、
またある人は、自宅で一生懸命YouTubeを観て、憶えた振付を踊ってみてくれて、
「あっていますか?」と聞いてくれたり。
人間、必要に迫られれば、何でも出来るものです。
(本来は、私は動画で振りをおぼえるのはNGとしています。やっぱり人から人へ直接振り写しするのがベストだと思いますので。だけど今回は私が1ヶ月くらい動けなかったのでね。やってみたら、こういうのもアリかなと思いましたけれどもね。)
いつもは遠慮がちな人達も、私が困っていたり、出来ないのを見て、「やってみます!」とチャレンジしてくれました。
今、思い出しても目頭が熱くなります…。
それまで、バレエを習ってはいても、バレエの舞台や動画などはほとんど見たことがなかった人達が、どの振付なら自分でも踊れるかと、プロのバレリーナの踊りを沢山観て、振りを憶えて、練習して、自習して、どんどん上手になっていきました。
今回はじめて、自習が出来るようにスタジオを開放しましたが、沢山の人が来て自分で練習して、見違えるように上達していきました。
それまで、
(先生のお手本くらい出来ればいい)
(スタジオで上手な人を目標にしよう)と思っていた人達が、プロの動画をガッツリ見ることによって、新しいゴールをイメージすることが出来始めました。
(バレリーナに少しでも近づきたい!)って思うようになったのです。
スタジオに来て、レッスンすることがゴールではなく、
(あんな風に踊りたい!)
(バレリーナみたいになりたい!)がゴールになったのです。
そうやって、踊って、踊って、みんな本当に上達した、充実した、思い出に残る3ヶ月間でした。
だから、今回私が体調を崩したのは、ラッキーでした。
生徒達を成長させてあげることが出来ましたから。
今振り返ってみても、本番を無事に迎えられたことが奇跡のようなタイトなスケジュール。
「絶対間に合わない!」
「先生、公演日を延期しましょう!」
思わずそう叫んだ人がいたほど、タイトなスケジュールでしたが、でも最後まで誰もあきらめなかった。
必死にくらいついて、練習を重ねて、みんな無事にはじめての発表会本番の舞台に立っていました。
素晴らしいメンバー、素晴らしい生徒達でした!
テクニックがどう、とか言い出したらいくらでも言えるんですね。クラシックバレエって。
プロのバレリーナみたいに完璧に踊ろうと思ったらね。
だけど、完璧じゃなくて良いんです。
だって、私達はプロじゃない。
だって、プロの公演じゃない。
東洋人の、大人からはじめた、習い事のバレエの、初めての、発表会です。
完璧じゃなくていい。
プロや普通のバレエ教室みたいじゃなくていい。
完成された舞台、完成された踊りじゃなくていい。
大切なのは、発表会を通して、ひとりひとりが、どう成長したか。
そしてこれから、どう成長するかです。
では、思い出の写真をどうぞ。
今回は、1人1人にお顔を出しても良いか聞いて、OKが出た人は、お顔を掲載しています。
やっぱりね、せっかくですから、出来れば表情も見て頂きたいのでね。
出さないのは出さないで、OKですしね。
◇
1部 ヴァリエーション集
「ジゼル」より ペザントのヴァリエーション
サクラバレエでの舞台出演は今回が初めてだったにも関わらず、
「ヴァリエーション集に参加したいです!」と言ってくれた積極性、やる気、向上心ともに素晴らしかった!
さらに、発表会のトップバッターを堂々と踊る度胸の良さ。
普通の人は「え・・・トップですか?!それはちょっと・・・」としり込みしたり、ジタバタするものなのですが、抜群の舞台度胸で踊りきってくれました。
クラシックバレエ歴はそう長くはないのですが、様々なダンスや舞台経験からくる表現力と、得意とするジャンプで、華やかに踊りきってくれました。
仕事が忙しい中、時間をやりくりしてレッスンに参加し、
レッスン中1時間での上達度が群を抜いていました。
発表会の後に、
「先生、彼女は表現力が素晴らしいですね!」と言う人、多数。
3ヶ月で、ものすごく上達した人のうちの1人です
よく頑張りました!ブラボー!!