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前回は、バレエを習う上で必要な、“ルールを守る”ということについてお話させて頂きました。
今回は、バレエを習う上で大切な、“マナーを守る”ということについて。
“マナー”というのは“思いやり”です。
自分のことよりも、相手のことを考えて行なう振る舞いです。
“マナー”といえば、パッと思いつくだけでも、
交通マナー
食事のマナー
身だしなみのマナー
洋服のマナー
人間関係のマナー
立ち居振る舞いのマナー
お金のマナー
・・・バレエと直接関係ないものだけでも、これだけ出てきます。
マナーは守ろうとすると、少し面倒だったりもします。
たとえば交通マナー。赤信号でも渡っちゃった方が早かったりします。
食事のマナー。ナイフとフォークをカチャカチャ言わせたって、スープをズルズル飲んだって、気にしなければへっちゃらです。お酒なんか入っていれば、いちいち気をつかっていたら楽しくないじゃない!ということになります。
身だしなみも、夜寝る前に、明日のパンがない!と気がついて、コンビニに買いに行くのに、スッピンだろうが、髪がボサボサだろうが、パジャマだろうが、自分さえよければ、そのまま行った方が楽ですよね。
こんな風にマナーは守らないほうが、自分にとってはメリットがあったり、楽だったりします。
けれど、相手にとってはどうでしょうか。
赤信号で渡る人が、もし突然目の前に現れたら、相手はびっくりしませんか?
もし自動車の運転手だったら、びっくりしてハンドルを切って大事故になってしまうかもしれません。
食事も、同じお店を雰囲気が良いからと、選んで食事をしている人にとっては、騒ぐ人達は迷惑でしかありません。もしかしたら、一世一代のプロポーズをしようとしている人が隣のテーブルにいるのかもしれません。
身だしなみも、毎日朝から晩まで、それこそ24時間お店のことを考えて、掃除して、お客様に気持ちよく過ごしてもらおうと思って、そのお店を宝物みたいに大切に思っているお店の人にとっては、パジャマで来られるということは、決して気持ちが良いものではありません。
このように、マナーというのは、自分にとっては少し手間だけれど、相手のためにしてあげられることなんですよね。
つまり、マナーを守るということは、他人を大切にすることであり、
マナーを守らないということは、自分を中心に、自分の事だけを考えて、わがままに振る舞うということなんですね。
マナーを守らない人、つまり自分のことだけを考えている人というのは、バレエの世界はもちん、どんな世界でも成功することは出来ません。
自分のことだけを考えている人に、教師は本気で指導しません。
自分のことしか考えられないようでは、どんなに練習しても、優れたバレリーナにはなれません。謙虚さのない人にバレエを教えても上手にはなりません。
教師はそのことがわかっているので、自分のことしか考えていない生徒にはバレエを教えません。
つまり、レッスンを受けてもレッスン中に指導されない人は、テクニックを教わる前に、人として学ばなければならないことがある、ということを指導されているのです。(サクラバレエは言葉で指導するので、こういうことはありませんが、一般的にはそうです。)
バレエが本当に上手になりたいのなら、テクニックを学ぶ前に、自分の周囲の人達を思いやること、つまりマナーを守ることを学ぶ必要があります。
子供からはじめるバレエは、先生にまずは、挨拶をきちんとすることからはじまり、礼儀正しくあること、周囲の人を思いやること、親や先生、他の生徒達にも感謝の気持ちを持つことまでをしっかりと指導されます。
ところが、大人からバレエをはじめた人に対して、こういったことをきとんと教えるバレエ教室がありません。“本気風”に教えるバレエ教室はありますが、大抵本気ではありません。
もしかしたら、この世のどこかにいるのかもしれませんが、私がバレエを習っている間は、とうとう出会うことが出来ませんでした。子供に対しては、たくさんいます。
けれど、大人からバレエをはじめた人に、本当のことを言ってくれる先生は、本音で向き合ってくれる先生は、そして真正面から指導してくれる先生に、私はついに出会うことが出来ませんでした。
大人が巻スカートやレッグウォーマー、Tシャツを身につけてレッスンを受けることをよしとしている先生は、本気で大人を育てるつもりはありません。
なぜなら、それは“人にものを習うためのマナー”に反しているからです。
体のラインを指導してもらいに来ているのに、先生が体のラインが見えにくいことをわかっていながら、スカートやレッグウォーマーを身につけているわけです。
・・・それはなぜか?
“自分が着たいから”です。
他人よりも、自分を優先させているわけです。
もちろん、そういったことを深く考えずに行動してしまっている人もいますが、
いずれにしろ、残念ながら、マナーが守れていない、相手の立場にたって物事を考えられていないのです。これでは、舞台を観に来て下さるお客様にどうすれば喜んで頂けるのか、わかるはずがありません。どう踊れば良いのかがわからずに踊っていて、上手になるはずがありません。
何度も言いますが、マナーとは思いやりです。
相手がどう思うか、自分が相手の立場だったらどう感じるか、それを想像して相手のために立ち振る舞えるかどうかです。
ちなみに、サクラバレエは服装は個人の選択に任せています。(あまりにも場違いな格好の時やレッスンの妨げになる時は言いますが)
なぜなら、マナーを守らなくて損をするのは本人だからです。
「もう3年もレッスンしているのに上手にならない。」と誰かに文句を言いたくても、それは3年間も自分で体のラインをわざわざ隠して、先生に見えないようにして、レッスンを受け続けているのだから、誰にも文句は言えないわけです。もし言うとしたら自分にですよね。
自分の選択というのは、自分に跳ね返ってくるのです。良いことも、悪いことも、すべてです。
もしその人が、体のラインを先生にも自分にもわかるようにして、3年間レッスンしていれば、3年後の結果は全く違うものになっていたでしょう。
大人は「タイツとレオタードとスパッツがおすすめですよ。」とは教えてもらえますが、「タイツとレオタードとスパッツだけにしなさい」とは、わざわざ言ってもらえないのです。
先生に厳しくされるから従う、というのは子供のバレエです。
自分で自分を甘やかさないという姿勢が大人のバレエには必要なのです。
だからサクラバレエでは、服装は自由です。
自分を律した人には、律しただけの未来が、
自分を甘やかした人には甘やかしただけの未来が待っています。
人を思いやった人には、思いやっただけの未来が、
自分のことだけを考えた人には、考えただけの未来が待っています。
正直な人には、正直な人の未来が、嘘をつく人には、嘘をついただけの未来が待っています。
自分達の未来をつくることが出来るのは、自分だけです。
自分に優しくすることと、自分を甘やかすことは違います。
せっかくバレエを習うのなら、バレエ通じて、自分を大切に、自分に優しくすることを学び、それと同時に自分を律することや、自分を信頼することを学び、他人から信頼され、他人を助け、また助けられることが出来る大人になって下さい。
◇
もし、舞台に立ったダンサーが、自分が目立つこと、自分だけにスポットライトが当たることを考えていたとしたらどうでしょう。
後ろのコールド達、ヘマをしないで、きちんと私を引き立たせなさいよ!と思っていたら?
今日の客はノリが悪いわね、しっかり拍手しなさいよ!と思っていたら?
スタッフ達、音響は、ちゃんと私が踊るキッカケの音、遅れないように出しなさいよ!
照明もさっさと準備しなさいよ!なんて考えていたら?
おそらく、周りの人達にその気持ちは伝わってしまい、舞台は白けたものになるでしょう。
こういったことに、観客はとても敏感です。
この人が踊るところをもう一度観たい、とファンになってくれるでしょうか?
おそらく、違うと思います。
この人の舞台をもう一度見たい、と思ってくれるお客様はほとんどいないと思います。
誰からも必要とされていないバレエダンサーは、どんなに上手でも舞台によばれません。
バレエはみんなで踊るもの。
自分のことだけ考えている人がいると輪が乱れて全体が揃いません。
また、練習やリハーサルにも、自分の都合で来たり来なかったりする人に、重要な役を渡してあげることは出来ません。(理由は、前回お話した、“ルールを守る”編と同じです。)
自分が好きな役、踊りたい役は、他人を押しのけてでも踊りたいけど、自分の気が乗らない役、踊りたくない役になると、参加をキャンセルしたり、練習に来ない人、つまり、他の出演者や舞台を観に来て下さるお客様、スタッフ、先生のことを考えずに、自分を中心に行動する、思いやりがない人、ステージマナーを守れない人に、重要な役を渡してしまうと、結果的にその人のわがままによって、その人の評判が下がりますから、その人がどんなに頑張っていても、重要な役は渡してあげられません。
それらはすべて、日頃の小さな積み重ねからです。
レッスンへ参加する時のマナー、スタジオへ通う時の服装マナー、駐車場のマナー、挨拶のマナー、レッスン時の服装マナー、レッスン開始を待つためのマナー、お休みや遅刻の連絡や、お月謝を渡す時のマナー、一緒にレッスンを受ける他の生徒達へのマナー、自分の使用しているスタジオのマナー、先生と接する時のマナー。
普段、これらのことが出来ていない人が、突然舞台の上だけでマナーの良い人になれるはずがありません。
そして、マナーとは、感謝と言い換えても良いのかもしれません。
バレエが習えることへの感謝の気持ち。
バレエを習うことを協力してくれたり、応援してくれている家族や職場の人達への感謝の気持ち。
いつも使わせてもらっているスタジオや物たちへの感謝の気持ち。
それらを掃除してくれている人達への感謝の気持ち。
レッスン前にいつも早く来て、マットやボールを並べてくれている人への感謝の気持ち。
バレエの先生への感謝の気持ち。
スタジオのご近所の方達への感謝の気持ち。
舞台を観に来てくれるお客様や、一緒に舞台をつくりあげてくれるスタッフの人達、会場の人達。
チュチュを貸してくれる人や衣装や小道具を作ってくれる人達へ。
感謝の気持ちが持てるかどうか。
日頃から周囲の人達に感謝して、思いやりを忘れずに、小さなマナーを守れるかどうか。
どうしても上手になりたいんだと、自分中心で行動して、がむしゃらにレッスンして、それは偉いです。
努力できることは、素晴らしい。行動力も素晴らしい。夢があるのも素晴らしい。
でも、自分のことしか考えていない人は、やがて頭を打ちます。
力技とど根性で、それなりには上手になっても、せいぜい二流か三流、行けて一流の下っ端までです。残念ながら、超一流にはなれません。
フィギュアスケートの羽生結弦君も、アイドルグループ“嵐”のメンバーも、とても礼儀正しいですよね。テレビや雑誌のインタビューなどでも、よく
「観に来て下さるお客様のために」
「応援してくれるファンのために」という言葉をよく口にしています。
彼らは感謝の気持ちを持ち、自分のためだけでなく、お客様やファンのために行動しているのです。だから、人が応援してくれるのです。
もしかしたら、彼らは人が見ていないところでは、自分勝手で思いやりのない人達でしょうか?決してそうではないと思います。
それなら、身近なスタッフとの関係やメンバー同士の関係がギスギスしているはずです。
自分勝手な羽生君や、意地悪な相葉君では、ファンの気持ちも、彼らを支えるスタッフ達の気持ちも離れていってしまいます。
謙虚な気持ちで努力をしていて、決して自分を甘やかさない。
だから、あれだけの人達に支持されて、あれだけ人気があるのです。
おごる気持ちを持ったり、誰かを引きずりおろそうとしたり、他人を攻撃したら、ファンは一瞬で離れて行きます。
その人の生き様、心構えというのは、それほどまでに、他人に伝わるものなのです。
観客というのは、それくらい鋭いものなのです。
誰にでも出来ることではないことをしているから、人はその人達を見に来るのです。
少しおおげさに言うであれば、バレエが上手に踊れるようになる、ということは、それ以前に、舞台の上に立って、スポットライトを当てられて、頭のてっぺんから脚の先まで照らされて、お客様に観て頂いても、何らはずかしいところなく、何ら臆するところなく、何ら後ろめたいところなく、堂々とパフォーマンスすることが出来る人になる。そういうことなんだと思います。
大人からはじめる本気のバレエとは、そういうことです。
サクラバレエが目指しているところは、そこです。
サクラバレエが育て上げようとしているのは、そんな人達です。
他人が見ていなくても、自分が見ています。
他人はだませても、自分のことはだませません。
どうか、自分で自分を好きになれるような、自分で自分を信じられるような、人になって下さい。
それが、サクラバレエが提案する、『大人からはじめる 本気のバレエ』です。
◇
・・・とはいえ、人はいつもいつも良い人ばかりではいられません。
私だって、完璧な人間ではありません。
人間なら誰しも間違いもすれば、欠点もあります。
それにたとえば、つらい事がたくさんあった時や、体調が悪い時、責任の重いことをしなくてはならない時、忙しい時、誰も助けてくれない時、不安でいっぱいの時、孤独な時、病気や重いケガをした時、頑張っても頑張っても上手くいかない時、人は誰しも、自分のことしか考えられなくなります。
生きていれば、そんな時は、どんな人にも、必ずやって来ます。
もがいてももがいても出口が見つからない時もあります。
どうして自分がこんな目に、と思うこともあります。
また、バレエというのは、厳しい世界です。
自分との闘いもあります。孤独にはまってしまうこともあります。
自分を責めてしまうこともあります。
どうしても、自分のことしか考えられなくなることが、人にはありませす。
本気で何かをしていれば、ザセツもしますし、クサクサしてしまう事が誰にだってあります。
だから、自分のことしか考えられない人、わがままな人を責めないであげて欲しいのです。
出来ることなら、少しはなれたろころから、見守りながら、待っていてあげて欲しいのです。
そしてもし、自分自身がそういう状態だったとしても、自分を責めることはないのです。
ただ、(ああ、今私は余裕がないんだな)と気がつくことです。
そして、余裕がないことに気がついたら、どうすれば余裕が出来るのかを考えることです。
考えてもわからなければ、誰かに助けを求めることです。アドバイスを求めることです。
あなたの近くには、きっとあなたのためになりたいと、思ってくれている人がいるはずです。
その人達に助けてもらいながら、少しずつ感謝や思いやりの気持ちを取り戻して、自分を好きになれる自分になることです。
自分を好きになって、余裕が出来たら、これまで迷惑をかけた人達に「ごめんなさい」です。
待ってくれていた人達に「ありがとう」です。それでOKです。
人は何度だってやりなおせるのです。
そうやって、ブレてはまた、元の自分に立ち返ること。
それこそが、“自分の軸をとる”ということです。バレエと一緒です。
自分の軸がとれるようになったら、きっとバレエでも軸がとれます。人生の軸もとれます。
自分を信じられるようになったら、自信もつきます。強くもなれます。
私が考える、『本気でバレエを習う』ということのすごさ、そしてクラシックバレエの素晴らしさは、ただ上手に踊れるようになる、という事だけでなく、その人自身の存在、つまり在り方や生き方さえも変えることが出来るということです。
『本気のバレエ』は少なくとも、その人の人生や生き方にリンクするのです。
だからバレエは本当に素晴らしいなと思います。
◇
ローマは一日にしてならず。
マナーも一日にしてならず。
まずは小さなことから。
気がついたところから。
そこから、はじめましょう。
大人からはじめるバレエは、最高に楽しく、最高に切なく、最高に素晴らしいのです。
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