この日曜日に、Aクラス1期生達のSクラスへの進級試験が行われました。
試験は実技のみで、クラスレッスン方式で行われ、1年間のクラスレッスンの成績をベースに、この試験の結果をプラスして、Sクラスへ進級するかどうかを決めることになります。
審査項目は、大きく分けて次の3つです。
①技術力 ②表現力 ③学ぶ姿勢
それぞれの項目には、さらに細かく審査項目が設定されています。
①技術力に関しては、筋肉の使い方やポジションの正確さ、動きの正確さ、空間の使い方など。
②の表現力に関しては、プレゼンテーション、容姿、柔軟性、音楽性、センスなど。
③学ぶ姿勢は、学習意欲、向上心、出席状況、集中力、理解力、協調性、1年を通じた上達度、作品や音楽の解釈・授業中の注意に対する反応など。
マナーや出席状況に大きな問題がなければ、全員ある程度の持ち点として、基準点が与えられ、それに、これらの各項目から、プラスの部分を加点していき、合格基準点を上回ると、進級になる採点システムです。
この方法は、日本のあるバレエ学校の成績評価方法がとても素晴らしいなと思い、参考にさせて頂きました。
なお、これは、バレエをはじめ、舞台やコンクールの世界では、わざわざ項目として挙げるまでもないほどの基本のルールなのですが、成績に関わらず、試験の途中で『演技の中断』や『転倒』、『衣装の大きな破損(リボンがほどけるなど)』などがあった場合は原則として不合格となります。
事前に採点システムのシュミレーションを何度か重ねたのですが、今現在ではこの方法が一番本人達の実力に近い採点が出来ると考えて、この方法にしました。
ただ、まだ、はじまったばかりですので、これから試行錯誤しながら、改善していけたら良いなと思っています。
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現在の日本のアマチュアのバレエで、こんな風に進級試験をするなんて、聞いたことがありませんし、点数をつけて評価することが、果たして生徒にとって良いことなのかと思案した事もありましたが、
私自身がバレエの学校でこういった試験を受けることにより、バレエというものを理解するのにとても役に立ったということと、
バレエの世界での、その時の自分の客観的な評価や実力をはっきりと知ることが出来て、自分とバレエとの関わり方を考える機会を与えられたこと、
そして何より、あの時、全力で努力した記憶が、今の自分を支えているということ。
こういったことを踏まえて、今回試験を行うことに踏み切りました。
そもそも、バレエの上達に客観的な評価は絶対的に必要です。
なぜなら、バレエはお客様に観て楽しんで頂くために踊る芸術だからです。
本気でバレエを踊りたいのなら、上手になりたいのなら、順位や優劣をつけて評価され、またそれを受け入れる覚悟が必要です。
大人で趣味でバレエを習っていると、本気で上手になりたくても、誰もきちんとした評価をしてくれません。その代わり、順位や優劣をつけられることもありません。
ですから、自分が上手なのか下手なのか、どのくらいのレベルなのか、何を努力すれば自分の憧れに近づけるのかが非常にわかりにくい、というのがあります。
発表会でこの作品に参加させてもらえたから、結構いけてるのかな、とか。
ヴァリエーションを踊らせてもらったから、私は上手な方なんじゃないか、とか。
トゥシューズを履いているから、そこそこ踊れてるんじゃないのかな、とか。
バレエ経験も長いし、いつも上級クラスを受けているのだから、そんな私はそこそこ上手な気がする、とか。
逆に、いつも後ろの方で立ってるだけの役だから、大したことないんだろうな、とか。
だけど、それにはもしかしたら先生が、頑張っている人には、上手下手に関わらず、ご褒美的に良い役を下さっているのかもしれないし、やりたい事をやらせてあげたい、という思いから、ヴァリエーションで踊る機会を貰えているのかもしれない。
大人バレエのクラスのほとんどは、現在どのレベルを受けるのかは自分の判断に委ねられていることが多いですし、トゥシューズもすぐに履かせてもらえることの方が一般的です。
また、発表会などでは、ある程度実力があっても、ケガを防ぐ意味で、無理をさせないように、大人は、後ろの方で踊ると決められているのかもしれないし、年功序列で役が決まっていることもあると思います。
それはそれで良い面があるのですが、昔の自分を振り返ってみても、大人バレエは、自分の実力がサッパリわからず、道に迷ってしまっている人がとても多いような気がします。
ですから、バレエが本気で上手になりたいと思っている人には、『客観的にみて、他人から、上手だね、素敵だね、と思って頂くためには、あなたにはこれが必要ですよ』『あなたは、これは出来ているけれど、これは出来ていませんから、強化ポイントはここですよ。レッスンだけじゃなくて、普段からこれを頑張りましょうね。」などということを、明確に示してあげることが大切なのではないかと思うのです。
あとは、全力で何かに取り組むこと。
自分にとってのベストを尽くすこと。
最後まで逃げずにやりきること。
他の人達と助け合いながら、1つの目標に向かって努力すること。
バレエに関する、きちんとした知識を得る機会を持つこと。
自分自身やバレエと向き合いながら、前へ進むこと。
試験を受けることで、生徒達が得られるものは沢山あると考えました。
また、このAクラス・Sクラスは自分で希望した人のみが受けるシステムになっていますから、試験を受ける人達は皆、学習意欲や向上心が非常に高い人達です。そういった人達は、この客観的な評価を受け止めて、前へ進む力があると判断しました。
そういった人達が、自分の強み弱みをしっかり把握しておくことは、とても意味のあることだと思います。
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今回は、スタジオ生5名がこの試験に挑戦しました。
これは私にとっても1つのチャレンジでしたが、結論から言うと、やってみて良かったなと言うのが、私の率直な感想です。
全員この試験のために、全力で努力してきました。以前から、「自分なりに、ベストをつくして下さいね。」と、繰り返しお願いしていたのですが、今回は全員が見事にその願いに答えてくれたようです。
そのためでしょうか、試験が終わった後の皆さんは、何かをやりきった人だけが見せる、爽快感あふれる、とても良い顔になっていました。
そして、今回は1名が見事に合格しました。
おめでとうございます
合格した人には、「自分だけが合格してしまって、・・・なんて思わないで、自分が先に成功する姿を見せることが、後から来る人達へのギフトになると思って下さい。」と、お願いしました。
それから、今回はまだ残念ながら、基準に達しなかった人には、『あと何があれば合格するのか』を、1人ずつにお伝えしました。
これらを踏まえて、もう1度Aクラスに挑戦するも良し、通常クラスに戻ってのんびりバレエを楽しむも良しです。
いずれにしても、今回のことが、自分自身と向かい合って、バレエとの関わり方を見つめ直すきっかけとなり、自分にとって、より良くHAPPYな方向へ進んでもらえるよう、心から願います。
ともかく、皆さんおつかれさまでした!
さあ、試験は終わりました。
あとは、ハロウィンレッスン、クリスマス会と思いっきり楽しみましょうね!
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そして、今回もスタッフとしてお手伝いして下さった方達、ありがとうございました!
いつも、とても助かっています
感謝、感謝です
本当にありがとうございました