こんにちは。
本部教室の引越しを今月中にしようと思っていたのですが、少し先になりそうです。
ですから、9月のレッスンスケジュールは8月と同じになる予定です。
スタジオの場所や駐車場の有無はもちろんですが、床や、近隣の環境や、色んな事を考えてベターではなく、出来るだけベストに近いところを探しているため、もう少しだけお待ち下さいね。
あ、でも予算がそんなにないので、広さは妥協しなくちゃと思っているのですが。
こうやって、あちこち探していると、自分にとって、なにが大切で、何が譲れて、何が譲れないのかがとても良くわかるので、そこは良かったなと思います。
とりあえず、はっきりしたのは、私にとっては『床が命』だったみたいです。
不動産屋さんと一緒に物件を見に行く度に、
「ちょっと失礼します。」と言って、靴を脱いでジャンプするので、最初は驚いていた担当の方も、最近では
「先生、やっぱり床が命ですもんね。」などといった発言が飛び出すようになりました。
◇
さて、新スタジオに移ったら、スタジオのシステムを少し変えようと思っています。
Sクラス、という本気でバレエを習いたい人のクラスを平日の夜も増やして、ポワントクラスも増やすようになります。
料金もSクラスは通常クラスとは分けて、別のシステムにしようと思っています。
それから、Sクラスに入るためには、簡単な審査をさせてもらおうかなと思っています。
なぜなら、このクラスはバーレッスンからクロワゼやエファセ、エカルテが入ってきたり、センターのコンビネーションにピルエットやピケターンが当たり前のように入ってくるので、クロワゼと言われてチンプンカンプンだったり、ピケターンやピルエットを回ること自体を練習している人は、おそらくついてこれないからです。
グランワルツで立ち往生したりすると、ケガをすることもあるので。
あと、大切なのは、“バレエを踊る覚悟があること”です。
どんな服装でレッスンするかとか、レッスンを休むとか休まないとか、そういう目に見える簡単なことじゃなくて、
繰り返し書いていますが、バレエが上手になるためには、やっぱり覚悟がいるんです。
バレエのレッスンをすることは誰にでも出来ます。
フィットネスでもカルチャーでも、何歳からでも、誰でも、どこでも、楽しく出来ます。
だけど、バレエを本気で踊りたいと思ったら、
バレエが本当に上手になりたいと思ったら、
覚悟がいります。
“本気”や“努力”と言い換えてもいいかもしれない。
このバレエの世界の“本気”や“努力”って、やったことのある人にしかわからないものがある。
バレエって、強い心で踊るものですから。
この意味がわかる人は、多分、覚悟がある人です。
◇
私は大人からバレエをはじめました。
バレエが楽しくて、大好きで、本気で上手になりたいと思いました。
だから、いつも一生懸命、全力でした。
けれど、そうやって進んで行って、いつの間にか、本当に本物のバレエの世界のど真ん中に入った時に、バレエの本当の厳しさを知りました。
甘えも、失敗も、言い訳も、許されない世界。
努力とか根性とか、好きとか嫌いとか、そんなものの入り込む隙間のない世界。
登っても登っても、先を行く人がいるし、時には実力も、そして運さえも通用しない世界。
バレエの神様に愛された、ほんの一握りの人しか成功出来ない、そして、だからこそ、誰もが憧れてやまない世界。
バレエの厳しさと同時に、バレエの持つ本当の楽しさや素晴らしさ、バレエを習う意味、伝統の持つ重み、芸術の気高さも知りましたが、それらを知れば知るほど、思ったように踊れない自分が口惜しくて、悲しくて。
自分が大人になってからバレエに出会ったことだけじゃなくて、自分が日本人であることや、自分の環境や、色んなことに、もう何が何だかわからないくらい心が揺れたり。
時には、「どうせ日本人なんて、バレエ踊っても西洋人にはかなわないしね。」なんて、言ってみたり。
「日本のバレエなんて、しょせん本物じゃないしね。」なんて、さもわかったみたいに言ってみたりもしました。
・・・バレエをやめられたら、バレエをあきらめられたら、どんなに楽だろう。
そう思うことも何度もありました。
・・・だけど、あきらめられない。
苦しくても、好きなものは好きだから。
・・・そうこうするうちに、踊る覚悟は自然に出来ていました。
いえ、もしかしたら、バレエを踊る覚悟というよりは、バレエをやめる覚悟がなかったのかもしれません。
だけど、そんな私に覚悟を持って教えてくれる先生は(厳密には、教え続けてくれる先生は、)いませんでした。
「あなたの、その開いていない足では、これ以上、上手になるのは無理です。大人はもう骨が動かないので。」
「この踊りは難しいので、大人からはじめた人には無理です。」
サクサクッと目の前で言われる言葉に、私は何度も目の前が真っ暗になりました。
時には、
「大人からバレエを始めた人達って、みんな何を目指してるの?」
・・・と、先生に真顔で聞かれることもありました。
また、ある時、ある若いバレエの先生(私はこの先生には習っていませんでした)が、「大人クラスの人達、みんな、せっせとレッスンに来てるけど、どうせ踊れないのに何なの?必死すぎて笑えるんですけど。それにつきあってあげなきゃいけない私が可愛そうなんですけど。」とつぶやくのを聞いて、
・・・悲劇だ。
・・・これは、悲劇だ。
と、思いました。
私はその先生と話すことが多く、親しい方だったので、きっと油断したんだと思います。
・・・みんな信じてるのに。
・・・みんな先生を信じて、せっせとレッスンに来ているのに。
大人の生徒はみんな、その先生を好きでした。憧れている人もいました。
その先生のクラスは楽しいし、その先生についていれば、上手になれるだろうと思って、みんな何年もレッスンに通ってきていたのです。
もしかしたら、その先生は、どうやったら大人を上手に出来るのかわからなくて、苦し紛れに言った言葉だったのかもしれません。
ただ、この言葉は、私に本気でバレエの教師になる決心をさせました。
(・・・いつか私が。)
人知れず、心の中で誓いました。
自分の手を無意識に、強く強く握りしめながら。
(・・・いつか私がバレエの教師になって、本気でバレエを習いたい大人に、本気でバレエを教える。何歳からバレエをはじめたって、身体がバレエに向いていなくたって、その人がバレエを好きで、バレエが上手になりたいと思っている限り、全力で生徒に教える教師になる。)
私が、バレエを本気で教える覚悟を決めた瞬間でした。
(・・・大人だって、踊りたい。大人だって、上手になるのを目指してる。踊れないのは、あなたが本気で教えていないから。)
こんな事を書くと、どうしても悪口のようになってしまうし、これを聞いてショックを受ける大人の方もいるだろうと思って、以前書いたときには、ぼかしたのですが、これが私がバレエの教師になった、そして、サクラバレエを開いた本当の理由です。
大人だって、夢を見ます。
大人だって、バレエに恋します。
大人だって、踊りたい役があるし、立ちたい舞台がある。
大人からバレエをはじめたら、キトリに憧れてはいけませんか?
大人からバレエをはじめたら、いつか白鳥を踊ってみたいと夢見てはいけませんか?
いつか、パ・ド・ドゥを踊りたいと想像してはいけませんか?
本人達だって、本気でかなうなんて思ってないんです。だけど、そう願わずにはいられないんです。
だって、バレエが好きだから。
バレエが大好きだから。
・・・それに、大人からバレエをはじめた人だけじゃない。
小さい頃に習っていて、バレエを一度やめた人が、再び、舞台に立つことを夢見てはいけませんか?
小さい頃からずっとバレエを習っているけれど、そんなに上手なほうではない、自分は才能がないと思っている人が、だけど好きで、細々と踊り続けるのは時間の無駄ですか?
・・・いいえ、私はそうは思わない。
・・・甘いのかもしれない。
・・・常識がないのかもしれない。
・・・怖いもの知らずなのかもしれない。
・・・だけど、好きなものは好き。
・・・仕方ないんです、あきらめられないんだから。
・・・片思いでもなんでも、とにかく好きなんです。
◇
昔は、大人からバレエをはじめた人がバレエの教師になるなんて、誰も信じなかった。
フン、って鼻で笑われた。
私も恥ずかしくて、なかなか口に出せなかった。
・・・けれど、夢は叶いました。
今、バレエを教えて6年目になります。
さすがに、スタジオを立ち上げてまでいる人は、あまり聞いたことがないけれど、最近では大人からバレエをはじめた人がスタジオでアシスタントをしたり教師になったりするケースも少しずつですが、あるようになってきました。
大人の生徒に本気で教えてくれる教室も少しずつ増えてきているようです。
・・・本気で願えば、夢は叶う。
だから、大人のための本気のバレエクラス、本格的にはじめます。
どこまでいけるかわからないけれど、
誰がついてきてくれるのかもわからないけれど、
今は頼りないかもしれないけれど。
それでも、どんな手を使ってでも、プライドをかなぐり捨ててでも、誰に頭を下げてでも、何年、何十年かかってでもやろうとする情熱、
それが、私の強さだから。
いつか、大人だけで全幕公演をするのが、今の私の夢です。
その時に私と同じようにバレエが好きで好きでたまらない人達が、舞台で光り輝く姿を見るのが夢です。
・・・白鳥の湖の静寂と美しさ、
・・・眠りの森の美女の優雅さと艶やかさ、
・・・ドン・キ・ホーテの情熱と楽しさ、
想像しただけで、幸せすぎて、気絶しそうです。
簡単な道ではないと思います。
上手くいかないこともあるでしょう。
けれど、もし、この夢がかなわなかったとしても、私のこの考えや活動に、良くも悪くも影響を受けた、街のバレエ教室やバレエの先生が、発表会で大人の出番を増やしてくれたり、バレエを一度やめて再開した大人にチャンスをあげたり、大人の生徒に本気で教えてくれるクラスが少しでも増えたとしたら、それほど嬉しいことはないし、それもまた、別のカタチで、私の夢が叶ったということ。
だから。
いつか、きっと。
私と同じようにバレエが大好きで、
私と一緒に夢をみて、一緒に夢をかなえる大勢の人達と、出会えることを願って。
ひとまず、スタジオ探し、頑張ります。