米田京「ブラインド探偵」(再読) | 読後つれづれ

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米田京「ブラインド探偵」

研ぎ澄まされた感覚と推理で、全盲の探偵が難事件に挑む!!

事故によって失明したが、まとめサイト「魔と眼」を運営しながら
東京北区・赤羽に暮らす元雑誌記者の川田勇。
自宅の大家の死亡事故を解明に導き、地元警察に協力をしたことから、
全盲の探偵「ブラインドi(アイ)」(=Blind Investigator)と命名された。
鋭敏な感覚と推理力、ガイドヘルパーの田辺弘子のサポートを武器に、
幽霊団地、ゴーストライター騒動などの謎に立ち向かう。
第11回北区内田康夫ミステリー文学賞特別賞(区長賞)受賞作を含む全5話を収録。
全盲小説家、鮮烈のデビュー作!

 

<著者について>

 

1964年東京都生まれ。

出版社、編集プロダクション勤務、会社経営を経て、米・ロサンゼルスに出版社を設立。

アニメなどJポップカルチャー関連書籍を多数発行。

糖尿病性緑内障による失明をきっかけとして、パソコンの画面を読み上げるソフト「スクリーンリーダー」を使用した小説の執筆を開始。

2013年、「ブラインドi・諦めない気持ち」で第11回北区内田康夫ミステリー文学賞特別賞(区長賞)を受賞。

受賞作を第1話とした連作短編集『ブラインド探偵(アイ)』でデビュー。

 

 

 

先日、「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」

を読みまして

 

以前読んだ、「全盲の探偵」のお話を思い出し、

もう一度読んでみました。

 

短編5話が収録されています。

目が見えない人ならではの嗅覚による気付きや、

晴眼者が目が見えない人を侮って安易に罪を犯すさまを

描き出しています。

 

前回読んだ時とは、また違った気付きがありましたね。

 

この主人公は事故の外傷により視力を失ったので

まだ視力を回復したいという望みを持っています。

また、晴眼者による差別に憤りも感じます。

 

一方で、生まれつきまたは小さい頃から目が見えない人との

差異もあります。

例えば、視覚障碍者のスポーツであるグランドソフトボールについて。

 

グランドソフトボールのクラブチームは、都内にもいくつか存在していたが、すべてのチームが盲学校の部活動のOBで構成されていた。つまり、ある程度の年齢になって事故や病気など後天的な理由で視覚を失った失明者にとって、手を出しにくい競技だったのだ。中年と呼ばれる年齢で視覚に障害を持った者が、盲学校出身者ばかりのチームに単独で参加するのは抵抗があるだろう。しかし、中年だからこそ、「野球」への思慕は若者とは比較にならないくらいに強いのだ。

米田 京. ブラインド探偵(アイ) (実業之日本社文庫) . 実業之日本社. Kindle 版. 

 

中途失明者ならではの悩み。

そして、中途失明者の点字識字率は2割という話。

 

なんとなく、視覚障碍者ってみんな点字が読めると思っていましたあせる

確かに、今私が視力を失った場合、努力しても点字が読めるようになるとは思えない…。

 

 

主人公の川田勇は、白鳥さんと違って、自由に一人で出かけるのは難しく

ガイドヘルパーさんと行動を共にしています。

家の中で行動するにも、ベッドの端から散歩でバスルームのドアノブ、と覚えたり

持ち物の置く場所を決めていたり、組み合わせが楽なように衣服の色を固定化していたり

作者が視覚障碍者ならではの発見があります。

 

そして肝心のお話に関してですが、

 

読みやすく面白かったです照れ

 

やはり賞を取ったという、一話目のお話が一番面白かったです。

後半に行くにつれ、ガイドヘルパーの弘子とのバディ感が強まって面白かったです。

 

「赤羽なんでも相談室」の和久井さんは、その立場といい風貌と言い

「踊る大捜査線」の和久さんを彷彿とさせますね笑い泣き

 

そんな個性的なメンバーも面白く、

まだまだお話も展開できそうなのですが

続編は刊行されていません。

残念ですショボーン

 

 

このお話は2015年に刊行されているので

10年近く時が流れています。

当時よりもさらに、スクリーンリーダーなどの技術は向上しているのでしょうか。

そして川田勇はある角膜移植の技術が5年後には

日本でも可能になると希望を持っていたのですが

現在はどうなっているんでしょうか。