北村薫「中野のお父さんは謎を解くか」
運動神経抜群の編集者・田川美希の毎日は、本や小説にまつわる謎に見舞われ忙しい。
松本清張の「封印」作品の真実、
太宰治作品中の意味不明な言葉、
泉鏡花はなぜ徳田秋声を殴ったのか……
そんな時は実家に行き、高校教師にして「本の名探偵」・お父さんの知恵を借りれば親孝行にもなる!?
愛されシリーズ第二弾。解説・薮田由梨
「中野のお父さん」の続編です。
これは「愛されシリーズ」という名前なんですね
確かに、主人公の田川美希とお父さんの仲はほっこりします。
そして、美希は社会人として有能ですね。
コミュニケーション能力が高く、
イベントの手配も迅速で上手。
優秀な編集者ですねぇ。
「『100万回生きた猫』は絶望の書か」という章では
児童文学がいろいろ出て来て、興味深かったです。
「100万回いきた猫」聞いたことありましたが、読んだことありませんでした。
こっち↓と混同してました(桁が違う)
たまに読んだことがあるお話が出てくると嬉しいですね。
「火鉢は飛び越えられたのか」ではジョセフィン・テイの「時の娘」というミステリが登場します。
どこかで聞いたことがある…と思ったら、
高木彬光の「成吉思汗の秘密」に登場していました。
「成吉思汗の秘密」は探偵・神津恭介が、入院中にベッドの上で歴史上の謎に挑戦します。
(その後「邪馬台国の秘密」「古代天皇の秘密」もあります)
この「安楽椅子探偵」の上を行くスタイルは「ベッド・ディテクティブ」という形式だそうで、この「時の娘」がルーツとなるそうです。
この「火鉢は飛び越えられたのか」というお話は
「間違った情報が通説として流布してしまう」という怖さを感じます。
後半へ行くほど面白くなりましたが、
ひとつひとつのエピソードが短く、盛り上がりも少ないので
1話終わるたびに失速してしまい、読み終わるのに時間がかかりました
時間がある時、ゆるゆると読みたい時に
おすすめです。
最後に、気になった箇所のメモ
「せっかちだと、色々なものを捨てることになる。あらすじや結論だけ知っても、読んだことにはならない。大事なのはむしろ、無駄な事、本論以外のところにある。
(中略)
ふくらみのないものは駄目だ。面倒なこと、時間のかかること、よく噛まないと飲み込めないようなところに、物事の味わいもあるんだがなぁ」
タイパ重視の人に聞かせたい、含蓄ある言葉です