ある小劇場で上演されていた
「丘の上の本屋さん」
という作品を
見る機会がありました。
ストーリー
イタリアの風光明媚な丘陵地帯を見下ろす丘の上の小さな古書店。訪れる風変りな客たちを温かく迎え入れるリベロの店は街のちょっとしたオアシス的な存在でもある。ある日、店の外で本を眺める移民の少年エシエンに声を掛けたリベロは、好奇心旺盛なエシエンに、コミックから児童文学、中編小説、長編大作、さらに専門書まで次々と店の本を貸し与えていく。エシエンから感想を聞きながら、様々な知識やものの見方や考え方など、リベロはジャンルを超えて叡智を授ける。そしてイタリア語で「自由(Libero)」を意味する自身の名の通り、エシエンに自由であること、誰もが幸せになる権利を持つことを伝えていくのだった。
感想
イタリアの映画を字幕で見るのがたぶん初めてで、
(「グラン・ブルー」ってイタリア語だったっけ?)
イタリア語って美しいな、と思いました。
見ていて感じたのは、邦画の「かもめ食堂」と似ているな、と。
お店にはいろいろな人が来る。
でも特別、大きな事件が起きるわけではない。
淡々と流れて行く日常の中に差し込まれる美しい自然や町の映像。
それでも退屈することなく楽しめるのは、
本屋の主人・リベロと客との会話、
その表情の動きなどが豊かだからだと思います。
最近見なくなったマリトッツォや、エスプレッソ、
スフォリアテッラなどイタリアの食文化が登場するのも興味深い。
本が好きな人はもちろん、
この作品を見ながらいろいろな事を考えるし
本を読まない人に、リベロはやさしく説いてくれていると思います。
人種・人権について
映画の原題は
「IL DIRITTO ALLA FELICITA」
”幸せになる権利”
という意味です。
エシエンはアフリカ移民の少年です。
多くは語りませんが、いろいろな背景を感じます。
映画を観た後、地図を見て改めて気付きましたが
イタリアってアフリカにとても近いのですね。
移民が多く、問題になっているという記事がありました。
リベロも直接的なことは語りませんが、
エシエンに人種差別に負けず生きて行けるよう
本を選んでいるように感じます。
私はこの映画のチラシを見た時、
エシエンは後ろ姿だったため
単純に、白人の子供と老人とのふれあいの話だと思っていたので
(「ニューシネマパラダイスのような?)
エシエンが登場した時に驚きました。
それこそが人種差別だったのだと気付きました。
リベロはエシエンに、最後に「世界人権宣言」を送ります。
どんな人にも”幸せになる権利”はある、と
リベロは教えているのでしょう。
この作品は「文部科学省特別選定」作品ですが
多くの子供に見てもらいたい、という願いでしょう。
リベロがエシエンに勧めた本
ピノッキオの冒険
イソップ物語
星の王子様
白鯨
アンクル・トムの小屋
白い牙
ロビンソン・クルーソー
ドン・キホーテ
まとめ
映画館で映画を観たのは、すごく久しぶりです。
大画面は体感できるので、やっぱりいいな、と思いました。
そして、もうひとつ思ったことは
「今を見逃すと、もうわからなくなるので、しっかり観る」
ということ。
最近では、見逃したものは巻き戻して確認できるし
わからないものはすぐスマホで調べられますが、
映画館ではそうはいかないし
この作品はそれほど有名な作品ではないので、
後でスマホで調べてもわからないかもしれない。
そんな真剣さと、儚さを持って鑑賞しました。