またまた比嘉姉妹シリーズ。
「などらきさんに首取られんぞ」祖父母の住む地域に伝わる“などらき”という化け物。刎ね落とされたその首は洞窟の底に封印され、胴体は首を求めて未だに彷徨っているという。しかし不可能な状況で、首は忽然と消えた。僕は高校の同級生の野崎とともに首消失の謎に挑むが…。
「ぼぎわんが、来る」「ずうのめ人形」と違い、短編集です。
過去2作品に登場した野崎、真琴、真琴の姉たちが登場し、学生時代の話もあります。
過去2作品を読んだ人には面白いと思うけど、初めてこれを読んだ人はちょっと物足りないかも。
「ゴカイノカイ」
父の遺した不動産で夜になると聞こえる「痛い、痛い」という謎の声。貸事務所の問題を解決するために、私は「ヒガマコト」という霊能者に依頼をするが……。
よくある「お祓い」のお話。それほど怖くないし後味もよい。
「学校は死の匂い」
「ずうのめ人形」に登場する、比嘉姉妹の次女・美晴の小学生時代の話。
私も、子供の頃「学校の怪談」は怖かったし、それと違った恐怖が学校にはある。
私も美晴と同じで集団行動が嫌いだし、昔は今より「教師の圧力」もあったし、
それを思い出して暗澹たる気持ちで読了。
後味も決してよくないけれど、これが一番面白かった。
やはり怖いのは霊より人間。
「居酒屋脳髄談義」
居酒屋で3人の上司がかわいがっている(いじっている)女性部下に対し、セクハラまがいの難癖をつけるのが始まり。
前の話に引き続き、クソ人間ばかり出てくる(口が悪くて失礼m(__)m)ので、なかなか読み進まず・・・
交わす話の内容も、ちょっと難しすぎて興味が持てず。オチはまぁまぁいいですが、深さはありません。
「悲鳴」
霊が出ると噂のある場所でホラーの自主製作映画を撮る大学生たち。
「13日の金曜日」タイプのよくあるお話です。
謎解きの要素は多少あるけど、単に「あの人」の過去が書きたかっただけなのでは。
「ファインダーの向こうに」
ファインダーに映り込んだありえない景色。そこにはあるメッセージがあった・・・
という、これもよくある話。
野崎と真琴が出てくること、そして珍しく最後がほっこり終わるところ以外特に思うことなし。
「などらきの首」
表題作になるだけあって、他の作品よりホラー感はありました。(私は「学校は死の匂い」が一番怖いと思いますが)
まだオカルト現象を信じていなかった学生時代の野崎が登場します。
不気味さと理不尽さが残る、澤村伊智さんらしい作品だと思います。
「ずうのめ人形」が非常に重い話だったので、その後が短編だと読みやすかったですが、やはり物足りない感は否めず。
読んでいる時は面白く読めましたが、こうやって思い返してみるとそれほど良い作品はなかったかな。
過去作品の登場人物たちのスピンオフ、という感じで、人物像を掘り下げるにはいいと思います。