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010/俺たちの子育て/第二反抗期は子どものチャンスを台無しにする

横長のソファーで壁側をぐるっと囲い、中央部に丸いテーブルをいくつか配置している。都会にしてはゆったりとした待合室。飽和状態だと聞くのにずいぶんと強気な広さだ。

ここは同じ小学校の子とよく出会うらしい。ある日、私が休みの日に娘をこの強気歯科に連れていくと、ど真ん中の丸いテーブルで誇らしげに女性誌を読んでいるお母さんがいた。

小声で娘が言う。「父さん、あの男の子ね。幼稚園のときからサッカー習ってて好きな子多いの」

なるほど、まだガキのくせに強烈なさわやかさだ。イケメンにもほどがある。なんだ、あの髪質は。実にけしからん。俺なんてちょっぴりくせ毛で残念な思いをし続けた。江戸時代に生まれてりゃ何も困らなかったのに、あろうことかチェッカーズがデビューした時代だから最悪な子ども時代だった。散髪屋を変えても変えてもフミヤにはならない。垂らした前髪はキューピーになり、短く刈った襟足は稲刈りしたあとの田んぼになる。そもそも俺の髪の毛は上に生えない。ロゼットよろしく地を這うように生えるのだ。女子たちがフミヤを見たその熱い目が冷めないうちに俺を見たら、猿人にしか見えなかっただろう。ちょっぴりくせ毛のおかげで俺の青春は無茶苦茶にされた。大人になった今では多少のくせ毛は手ぐしでセットできるから便利だ。と思ったら、その便利さを享受する間もなく薄くなってきた。――俺はどこまでツイてないのか。

このお母さんはどう考えても息子がカッコいいと認識している。しかも、「ワタシのDNAよ」と思っていることは間違いない。仮にお父さんがイケメンだったとしても、息子の目鼻口は自分の遺伝だと思っているに違いない。罰を与えたいほどのジェラシーがなぜか空から降ってくる。ロゼットに打ち付ける夕立のようだ。

いや、待てよ――。お父さんがイケメンなら、「そのイケメンが選んだほどの美貌をワタシは持ち合わせているのよ」なんてふざけたことを考えているかもしれない。何という横暴な考え方だ。何を信仰すればそういう考え方になるのか。

もう一度そのお母さんをよく見た。観察していることに気付かれたら大変だから、顔の向きは30度ずらし、目だけを相手に向ける。眉はそのままそのまま……。

どう考えても深田恭子の方が美人だ。並べてみるまでもない。そこで私は真横に座る娘の方に目を落とした。

何かがおかしい。このバカ面は誰の遺伝だ。深田恭子と西郷隆盛が結婚してたまたま背の低い子が生まれたらこうなるのか? 神様は何という横暴なことをするのか。信仰は無駄なのか。

それでもやっぱりうちの子が一番可愛い。美人ではないけれど愛らしい。ちょっと口を開くくせがあるけれど、髪はそこまで強いくせがなさそうだから安心だ。もうこれ100点を超えている。

それでも俺は、このお母さんのような態度はできない。日本男児として俺はできない。欧米な態度はとれない。子どものときの同級生に、名前が「慎二」という出しゃばりで慎ましいから遠く離れた場所にいる野郎がいたが、このお母さんも日本の文化からかなり遠いところにいる。息子がイケメンというのはそこまで誇らしいのか?

こういう子が小学校に男子1名女子1名は必ずいる。その2名は必ずサラサラの直毛だ。そういえばミスユニバースといえば直毛で、ニートといえばくせ毛のような気がする。なんだ、この虚しさは。ところで芸能人はどうして襟足がカッコいいのかと思ったとき、しばらくして首の長さが違うことに気が付いた。俺は江戸から明治にかけて生まれたかった。明らかに江戸向きだった。

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こうして差が出る。スタートラインが違う子が実在する。小学校はみんな同じ年齢で入学し、6年という同じ期間を過ごすのに、そもそも出だしが違う子がいるのだ。容姿に差がある。身体能力に差がある。器用さに差がある。感性に差がある。家のデカさに差がある。どれもこれも圧倒的な差だ。競う気にもならない差なのだ。

それは今に始まったことではなく、自分の子ども時代から何も変わっていないから、不平等、理不尽、無念には慣れている。俺は、慣れている。――しかし、娘までその無念さを味わう必要はない。かわいそうすぎる。この子は俺の子にしてはたまたま首が長い。その強運に可能性を感じる。何かうまい手はないものだろうか。

私の母は「汗をかいて働く男はカッコいい」といつも言っていた。たこ焼き屋のオヤジはまさに夏は汗だくだが、ああいうのをカッコいいというのか。残念ながら俺とは意見が違う。だってその考えなら、このさわやかな男の子は超カッコ悪いことになる。この子はサッカー少年らしいが、きっと汗は光るしずくで無臭なのだろう。犬のように頭を振ると、汗がほとばしるのだろう。俺の少年時代はべっとり汗をかいていたことを考えると、母の言いなりといったところか。残念すぎる。

カッコいい息子を持つ全国のお母さんに俺は聞いてみたい。


信仰は何なのかと――。


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桜井信一

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