新規就農者のみなさん。
農薬を使わずに人参を育てていると言うと、どうやって?という質問をもらうことも多いです。
なんせ人参の種をまく頃は芽がでるより先に畑が雑草に覆われてしまうような時期。
新規就農者が無農薬栽培に挑戦したはいいものの生育旺盛な雑草に負けてひょろひょろした人参になってしまって失敗というのが非常に多いパターン。
無農薬での人参栽培で苦労するのはとにかく雑草対策、これに尽きると言っても良いでしょう。
私も散々苦労してきましたが有機農業に取り組むみなさんから色々なことを教えていただき一つずつ課題をクリアしてきました。
1、雑草対策
真夏の暑い時期に太陽熱消毒をします。
文字通り太陽の熱の力で地温を60度くらいまで高めることで雑草の種を死滅させたり、センチュウを減らしたり、コガネムシの幼虫を退治したりという効果があります。
太陽熱消毒にも様々な種類があります。
水分+有機物で消毒と土作りを行うものや、
水分+石灰窒素+有機物で殺菌を行うもの、
大量の水分を使う方法もあります。
適度な水分がないと効果がでませんので、土に湿り気がある状態の時に透明なビニールマルチや大型の農ポリを畑に被せて密封し、2週間から1ヶ月程度放置します。
資材は厚手のものを使えば再利用できます。
これをする事で播種後の雑草の量がかなり減ります。また殺菌剤も使わなくてもよくなります。
次に問題になるのは害虫です。
2、害虫対策
人参の本葉が2、3枚の小さな頃にヨトウムシやキアゲハの幼虫に狙われると丸ごと食べられて跡形もなくなってしまいます。
ここは結局マンパワーになってしまうのですが、鈴盛農園では全ての畑に入ってひとつひとつの人参を見ながら間引きの作業をしていきます。
混み合った人参をスッキリさせ、狙ったサイズの人参がとれるように間隔を取っていく作業です。
冬にとる人参であれば年内どりなら8cm、それ以降にとるところは7cm、ミニサイズ狙いは5cm。
その際、生えてきた雑草も取ってしまいますし、ちょうどこの頃が人参を守るべき時期と重なるのでまだ小さい害虫も見つけて除去していきます。
人参が大きくなってからは少し葉っぱを食われたところでほとんど生育に影響がありません。
ただ、害がないとはいえ放置しておけば産卵して増殖し、結果的に周りにも迷惑をかけてしまうので増やさない事が大切です。
雑草が多いと害虫もそこに寄り付いてくるので、はじめの太陽熱消毒が非常に大切です。
3、畝間の除草
畝の間や畝の肩にも雑草は生えます。
根を張った大きな草は鎌でとって圃場から持ち出しますが、まず草が大きくなる前に手を打つのがポイントです。
人参の生育の状況に合わせて土寄せ機で土寄せをすることで畝間の小さな草は一気に片付けます。
また、飛ばした土を畝の肩に乗せるようにして肩の草も抑えます。
土寄せをしながら最後まで高畝をキープします。
畝の高さは25cmから28cmほど。
ちなみに品種、カラーによってここは変わります。
水はけの悪いところでは低い畝だと土壌水分量が多すぎて病気の発生につながります。
そのあとレーキなどで畝の上に土を上げるのも良いと思います。
土寄せ機も管理機もなければクワでも同じ事ができますが、ひとまず管理機なら中古で数万円で買えるので導入しましょう。持っておいて損はありません。
私自身も就農当初は理想を追い求めて技術も知識もないのに有機栽培に取り組んでいました。
おかげで畑は雑草だらけ、失敗の連続。
それでなくても自分のやりたい農業をやりたいようにやっていたので地域の異端児扱いで嫌われ者だったのに輪をかけて嫌われ街道まっしぐらです。
何度農業委員から指導を受けた事か。
最悪のスタートを切りました。
おかげで7年経った今も私は碧南農業界一の嫌われ者です。
地域の有力者に頭を下げて良い関係を作るべきだ、お前はそれが出来ていないから問題ばかりなんだと今も言われます。おっしゃる通りです。
自分自身のやってきた事に不義理があったのはわかっていますしこう見えても反省もしてます。
しかし随分と時間が経って、もはやどうにもならない事もあるのも事実。
ですから、これからも自分の思う道をひたすら進むことのほか道はないのです。
これから農業の世界に飛び込む皆さんには同じような失敗をしてほしくないという思いもあります。
私自身は日本の農業をカッコよくという勝手な使命感から生まれた情熱と、
くそったれ、負けてたまるか、なめんなよという強烈なまでの野良犬根性のおかげで生き残ってきましたが、メンタルの弱い人なら一撃でこの世界から去っていると思います。
理想を追い求めるのは大切です。
ですが、まわりとの協調性というのも大切だし、
地域に迷惑をかけず、きちんした評価を得るための技術や知識を学ぶ事が先決です。
一緒にがんばりましょう!