すみだトリフォニーホール
2024年4月6日(土)午前の部 10:30開演(0歳から入場可)
午後の部 13:30開演(3歳から入場可)
指揮・司会:宮川彬良
黒ネコ(ピッチカート):宮川安利
黒ネコ(フェルマータ):井坂泉月
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:伝田正秀
舞台監督他:松田淳一
構成:新井鷗子
演出・振付:宮川安利
月が改まった新年度最初の週末、春休み恒例「オケパン♪」、新日本フィルハーモニー交響楽団のファミリーコンサートという形ではこれが最後らしく、ちょっとしんみりした気持ちででかけてきました。
今年は電車も順調で、窓口で当日券を手に入れてから、開演前にホールの裏のすっかり見頃になった桜をゆっくりみられました。
午前は0歳からOKということで、ロビーにはベビーカーがたくさん、抱っこ紐に入った赤ちゃんからよちよち歩き、小学生までこどもをつれたご家族がいっぱいだけれど、年配のご夫婦連れも、私のような大人一人の人も、若い学生さんのグループもちらほら。
開演前には楽団のコントラバス奏者がお子さんとでてきて、開演に先立つ注意を伝えたり、アキラさんがひょっこりでてらして協力者募集をしたりしているうちに開演時間に。
しずかに音楽にフェードインして始まった休憩なし1時間のプログラムは…
♪映画『メリー・ポピンズ』メドレー(スプーン一杯のお砂糖で〜チム・チム・チェリー〜スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス〜2ペンスを鳩に〜スプーン一杯のお砂糖で)
♪ドラマ『奥さまは魔女』
♪アンダーソン:ワルツを踊る猫
♪ショパン:華麗なる大円舞曲/仔犬のワルツ
♪ミュージカル『コーラスライン』より「ONE(わん)」
♪ゴセック:ガボット
♪モーツァルト:トルコ行進曲
♪オッフェンバック:天国と地獄
♪ラジオ体操第一
♪映画『ファンタジア』メドレー(バッハ:トッカータとフーガ〜ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」〜ムソルグスキー:禿山の一夜〜デュカス:魔法使いの弟子)
♪『ゲバゲバ90分のテーマ』
<アンコール>
ヘンリー・マンシーニ:小象の行進
アーヴィング・バーリン:ショウほど素敵な商売はない
とオーケストラ(音楽)の魔法をたっぷり体感できる1時間だった。
今日のアキラさんは春らしい黄緑と黄色(背)のベスト。
最初の「メリー・ポピンズ」メドレーを演奏中にホールに住み着いた黒ネコさんたちも登場。
一曲終わってアキラさんからのごあいさつ。「オーケストラは魔法使い」、じつは音楽そのものが魔法なんです、指揮棒をひとふりすればきれいな音も残念な音も…ということで、今年は客席から「おくさま」をおまねきし、指揮棒の合図で「ピコピコピッ」とその効果音は…? そのまま魔女に扮して「奥さまは魔女」のテーマをいっしょに振ってもらいました。
次におなじみアンダソン「ワルツィング・キャット」がかかればネコちゃんたちも本格的に踊りはじめます。今年は、曲中の猫の鳴き声(弦の音)がなんともやわらかくてかわいくてびっくり! ヒヨコのジョージをめぐっていたずらばかりのネコちゃんを最後は楽団員たちが犬の鳴き声で追い払いますが、つぎのワルツつながりの曲では犬のおまわりさんに扮して戻ってきます。曲はアキラさんのピアノが入ったショパンの「華麗なる大円舞曲」と「仔犬のワルツ」のたのしいミックスアレンジ。
ここで、アキラさんの「舞台の上でピアノを引けるまでには練習練習、また練習」というお話から、魔法使いになるための練習曲として次にきたのが「ONE(わん)」、ネコちゃんたちはバレエの練習用のバーで一生懸命練習をして、ピルエットもだんだんじょうずになって、最後はシルクハットを片手にミュージカルのダンスを見事に踊って見せてくれました。
ダンスはいいけど、楽器も練習してごらんと、つぎはピッチカートがバイオリンの練習をすることに…「ガボット」を恐る恐るたどたどしく弾きはじめたのが途中ですごいカデンツァ…かと思ったらそれはコンマスの演奏でした、というオチあり。後半はフェルマータもクラリネットで合奏しました。
気をよくしたネコちゃんたちが次に挑戦するのは「トルコ行進曲」シンバルや木琴のグリッサンドなど、なつかしいクインテットの一場面をみるようでした。
練習の締めくくりは「チャレンジコーナー」、客席の「おとうさん」をひとりステージに呼んで、「天国の地獄」に乗せてピアノを弾いたり猫ちゃんたちとフレンチカンカンを踊ったり、トルネードをやったり、飛び入り参加ながらノリよく挑戦し、客席のほうもワクワクした気分で応援するのはまさに運動会気分、これも音楽の力だなとあらためて思い知らされます。
会場が興奮したところで間髪を入れずに始まったのは「ラジオ体操第一」合図がなくとも客席みんなも体操を始めるし、楽団員さんも立ったり座ったり体をひねったりしながら演奏していて、これには毎回感心してしまいます。最後の深呼吸は全員で。
呼吸を整え、落ち着いたところでいよいよ真打ちは、映画「ファンタジア」メドレー、これぞまさに音楽そのものが主役の映画劇伴です。おどろおどろしいバッハ、のどかな田園、嵐がふきすさぶような禿山の一夜を経て、最後は雨上がりにデッキブラシを手に踊るネコちゃんたちは魔女かそれとも魔法使いの弟子なのか。実は、踊るネコちゃんたちもお見事だったけれど、「魔法使いの弟子」のとき前の方の通路で踊っているちいさい女の子がいて、そうだよね、音楽がかかってネコちゃんたちが楽しそうに踊ってたら、自分だって音に合わせてからだが動いちゃうよね、そういえばうちの次女もそうだったな、とほほえましく、そのダンスに見とれてしまいました(この間読了し終えたばかりのバレエ小説「Spring」にでてきた七瀬ちゃんのことも思い出しながら…)。
最後は「ゲバゲバ90分」、客席から自然と拍手が湧いてきて、ネコちゃんたちが飛び回って各楽器の紹介があって、楽しくもりあがっていったんおひらきになります。
アンコールの拍手になり、まずはボトルが何本も乗った台が運ばれてきて(ここで私はピンと来る)、ボトルのチューニングを少ししたところで「小象の行進」。瓶を吹くのはねこちゃんたちで、アキラさんは後半にピアニカ・ソロも。なつかしい…「オケパン」スタイルになる前のいつだったか、亡き平原まことさんをむかえたファミリーコンサートではアキラさんとまことくんが瓶を吹いたり、ピアニカやサックスを吹いたりして、とっても楽しかったことを思い出しました。
そのあと最後のほんとのフィナーレは「ショウほど素敵な商売はない」にのせてねこちゃんたちが客席の通路に降りてあいさつしていき、真ん中の通路のあたりから「It's Magic!」の横断幕をもって舞台にかけあがって掲げておしまい(よくみると「Music(ミュージック)」と「Magic(マジック)」って、ちょっと親戚みたいな言葉なんだな)。ほんとにみごとな1時間のショウで、身も心もすっかりリラックスして楽になったのは、気のせいでもなさそうです。
終わってみて、あらためて、このファミリーコンサートがひとまず終わってしまうのが惜しまれます。川口リリアホールでの初演からほぼ毎年通ったけれど、初期のピエロ版から後半のクロネコ版へと一回ごとに構成や進行(おしゃべりの分量や曲間のつなぎなど)がブラッシュアップされていって、いつも楽しかったという記憶しかない。初期のピエロも、ピッツィカート&歴代の相棒(レガート、マルカート、そしてフェルマータ)もそれぞれ魅力的だった。またどこかで会えるといいな…