神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 第393回(みなとみらいシリーズ) | NORISの絵本箱

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2024年3月9日(土)14:00開演

横浜みなとみらいホール 大ホール

 

指揮:広上淳一

首席ソロ・コンサートマスター:石田泰尚

<スメタナ生誕200周年>

 

スメタナ(1824−1884)/連作交響詩「わが祖国」

第1曲:ヴィシェフラド

第2曲:ブルタヴァ(モルダウ)

第3曲:シャールカ

第4曲:ボヘミアの森と草原から

第5曲:ターボル

第6曲:ブラニーク

(休憩なし)

ひさびさに晴れた週末、横浜駅の東口に出て本屋に寄ってから、日産本社を抜けてみなとみらい方面まで歩いてみた。コロナ禍で外出しづらくなって以来なので、4年ぶりぐらいかもしれない。なるほどここにKアリーナができたのか、あ、桜が咲いている、ここは行き止まりか…横浜美術館もそろそろ再開するのだななどと街並みを観察しながら30分ぐらい歩いてランドマークプラザとクイーンズスクエアをつなぐ広場に到着、ミナトコーヒーでかなフィルとの協賛企画のコーヒー「マエストロ」を入手(まあまあ行列になっていた)。今回のカップのメッセージの主はクラリネットの安藤友香理さんだった。広場のベンチでしばしコーヒー休憩してからホールにむかって、次は当日券の行列へ。今回は、マエストロの気をあびられる舞台後方席にしてみた。舞台下手だったので、ハープやホルンが音だけになってしまったけれど、ティンパニやコントラバスがとてもよくみえる席。少しすいていそうなところをとってみたけれど、けっきょく並びの席はみんなうまったので、当日券組の仲間もけっこういるらしい。

プレトークは広上淳一さんとかなフィルの主幹の榊原さんがご登壇。つかみはただいま放送中の「さよならマエストロ」のこと。そしてかなフィルのこと、今日のプログラムのこと、翌日の清水での公演と声優のTARAKOさんの訃報のことなどあれこれ。

 

プログラムはスメタナ生誕200年を祝しての連作交響詩「わが祖国」全曲(6曲)。

第2曲の「ブルタヴァ(モルダウ)」は合唱曲にもなっているし、中学校で聴いて以来おなじみだったが、他の5曲を聞くのははじめてだった。第1曲のはじまりはハープの音色が印象的で、全体としてチェコの民族的というよりは、大地に川が流れ、森があり風が吹いているのだなあと大自然を感じる作品だった。

1874年、スメタナ50歳で書き始め、全曲初演は1882年プラハにて、とのこと。当時のチェコは、ハプスブルク家が統治するオーストリア(=ハンガリー)帝国の一部で、民族としてチェコが独立するのは第一次世界大戦後である。

 

何回かのカーテンコールのあと、最後に広上マエストロのお話があり、いまオーケストラ・アンサンブル金沢のアーティスティック・ディレクターをなさっていて、ぜひ能登半島を応援してほしいというごあいさつがあった。ウクライナをはじめ、いまなお世界各地で民族紛争の火種は絶えず、一方で多くの人にとってかけがえのない故郷や歴史的な遺産が地震や大水で失われてやるせない気持ちになることも多々あり・・・そういうことをあれこれ考えながらきく「わが祖国」だった。

 

思えば、今シーズン締めくくりのこのタイミングで指揮者として広上淳一マエストロを迎えてこの大曲をやるというというのも不思議な縁で、このプログラムを組んだ1年半とか2年前には、マエストロがかなフィルが協力した「リバーサル・オーケストラ」に続く音楽ドラマに協力していることも、石川県が大変なことになることもまったく想定していなかったと思うが、いろいろな御縁が結び合わさってうまれたこの一期一会の演奏会は心に残るものだった。マエストロの指揮は朗らかな表情と踊るような動きが楽しく、元気も出たし、なるほど西島秀俊さん演じる夏目マエストロはこの師匠ゆずりの指揮なのだなあと得心がいったし、コーヒーカップにメッセージをいただいたクラリネット奏者の活躍する姿も斜め上からじっくり拝見することができた。