10分でわかる菅原伝授手習鑑 04 初段「築地の段」 | さきじゅびより【文楽の太夫(声優)が文楽や歌舞伎、上方の事を解説します】by 豊竹咲寿太夫

 10分でわかる菅原伝授手習鑑





初段

04

築地 ついじ の段


◀︎03 「筆法伝授の段」




涙ながらに門を出ていった武部源蔵と入れ違いに、菅原道真の舎人の梅王丸が真っ青な顔をして戻ってきました。

道真が突然役人たちに取り囲まれて拘束されたというのです。
門の外には鉄棒を持った警護の役人が道真を取り囲み、藤原時平の味方の三善清貫 みよしのきよつら が立ちはだかっていました。
三善清貫は、菅原道真の娘の苅屋姫が斎世親王と加茂堤から戻らないことに関して、斎世親王を帝の位につけて苅屋姫を后にさせるための道真の企みであるとして、その罪は流罪に決まったと言いました。



\咲寿太夫のまめめも/
▼菅原道真が流罪となった太宰府
史実では左遷の2年後に没します。
太宰府天満宮は菅原道真の墓の上に建てられた
社殿が元になっています。



左中弁希世 まれよ が出てきて、菅原道真が流罪になる事情を聞いて自分から道真に対して師弟関係を返上して今後は藤原時平側につきたい、と三善清貫に願いました。
さらに、時平につく証として、丸竹の先をいくつにも割った割竹を振り上げて、菅原道真を打とうとしました。

梅王丸がそれを遮って、希世を突き飛ばしました。
さらに希世に飛びかかろうとしたところを、菅原道真が止め、これは勅命なので、逆らうことになるような行動を取ってはならないと諌めました。

そうして菅原道真は館に入り、大貫やかすがいで表も裏も出入りができないよう厳重に封鎖されたのでした。


\咲寿太夫のまめめも/
▼お屋敷の閉門といえば仮名手本忠臣蔵
忠臣蔵では塩谷判官が師直に刃傷沙汰を起こし
館に蟄居となり、その後切腹が言い渡されます。


三善清貫は左中弁希世を伴って引き返そうとしました。


そこへ武部源蔵が現れ、希世に一撃を喰らわせました。
希世は武部源蔵に、この乱暴で菅原道真を流罪ではなく死刑になるぞと迫ると、源蔵は自分は勘当されていて主人はいないから関係ないと言うと、刀を抜き放って振り回しました。

源蔵のむちゃな太刀風にその場にいた侍や公家たちは逃げていきました。







敵がいなくなったことを幸いに、武部源蔵は門の扉を叩くと、門の向こうから梅王丸が返答しました。

武部源蔵は藤原時平たちがこの先何をするか分からないので、菅原道真の子の菅秀才を預かって匿うと梅王丸に言いました。

梅王丸は館の周りを固めている築地の屋根の上から若君菅秀才を抱き上げました。
武部源蔵は戸浪を抱えて、築地の向こうから菅秀才を受け取りました。

梅王丸は武部源蔵夫婦に若君菅秀才を託し、夫婦は菅原道真と御台のことを梅王丸に頼むと、若君を連れて逃げていったのでした。



 





 

 

 

 



とよたけ・さきじゅだゆう:人形浄瑠璃文楽
 太夫
国立文楽劇場・国立劇場での隔月2週間から3週間の文楽
公演に主に出演。


その他、公演・イラスト(書籍掲載)・筆文字(書籍タイトルなど)・雑誌ゲスト・エッセイ連載など
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豊竹咲寿太夫
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