本日はたくさんのお祝いのお言葉を頂戴し、ありがとうございました。
思えばこの十年は良くない状態から始まり、山をいくつかのぼって、また現在谷にいます。
山はのぼると、次の山が見えてまいります。
散歩道から始まり、初心者の登山道、やがて険しい山道になり、いずれは岩道、雪道、雲の上の道を見に行きたいと思っております。
そうして、山頂を踏破したと思えば、また未知の道を発見するのでしょう。
そうありたいと思っております。
わたしは文楽が好きです。
こういった活動は全て、己関係なく、ただただ文楽を大勢の方に知っていただく手段でございます。
文楽はここにいるよ、と観測してもらわなければ、発見していただけない。
発見していただいて、初めて観測していただける。
観測していただいてこそ、芸の真価が問われる。
観測されないことには、存在しないのです。
それは永遠に並行線上の幻になってしまうかような、恐ろしいことでございます。
自分が愛する文化です。
自分なんて、どうでもよいのです。
文楽を日本の人に知っていただくこと。
この十年、一貫してこの想いでこういった活動をいたしております。
ご理解いただけましたら嬉しく思います。
そうして、自分のなすべきことは、芸を追うこと。
芸に追いついただなんて思わないこと。
たくさんの先人の背中から学ぶことは多いので、研究を深めてまいりたいと思っております。
新たな十年。
皆さま、今後とも稚拙なわたしにお付き合いのほどどうぞよろしくお願い申し上げます。
文楽をこれからも愛してください。
令和元年九月七日
豊竹咲寿太夫