人形浄瑠璃文楽の正面の舞台が「廻らない」ヒミツ | さきじゅびより【文楽の太夫(声優)が文楽や歌舞伎、上方の事を解説します】by 豊竹咲寿太夫

       
  文楽の舞台は(あまり)廻らない!







見台








人形浄瑠璃文楽
ぶんらく
太夫
たゆう
、豊竹咲寿太夫
さきじゅだゆう
です。



今日は先日コメント欄に寄せていただいたご質問にお答えさせていただきます。






こちら。



廻り舞台、太夫・三味線の床のことではなくて、正面の舞台の廻り舞台のことですね。




そうです。
文楽
ぶんらく
の舞台はほとんど正面の廻り舞台は使いません。




ほとんど、ということはお察しの通り、廻る演目も少数ございます。



七福神宝入船
しちふくじんたからのいりふね
という演目がございます。


この演目はお正月などのお目出度い時に上演される演目で、一隻の大きく豪華な船に七福神の面々が乗船して、皆でわいわいと芸を披露し合うという、文楽史上最も平和な演目でございます。




この七福神宝入船、演奏が始まりますと、正面の舞台の回転舞台が廻りながらせり上がり、まるで海の底から船がざばっと出てきたかのように七福神が登場します。


わたし自身も二度ほど出演させていただいておりますが、人形はもちろん、神様たちの神がかった宴会芸を三味線の演奏でも表現するので、正面だけでなく床も「観て」いただきたい作品となっております。





また、廻り舞台を使った例としましてはもう一つ、十五年ほど前になるでしょうか、わたしも子どもでしたのでうろ覚えでございますが、織田作之助さん作の夫婦善哉を文楽
ぶんらく
で上演したことがございました。


引退なさった嶋太夫師匠と、お亡くなりになった伊達太夫師匠が出演されていたかと思います。

こちらは夫婦善哉の中の大阪らしい街並みを作り上げ、かつ場面転換の際に舞台を回転させていたような朧げな記憶がございます。



個人的にはまた観たい作品でございます。






そもそも人形浄瑠璃が発達し始めた頃といいますのは、太夫・三味線・人形遣いは全て姿を隠しておりまして、正面の舞台は書き割り(平面に絵を書いた状態の大道具)が主だったようです。

ですので、書き割りの背景などは天井からつるしておいて、場面転換ではそれを下ろしたり上げたりして、スピーディーかつスムーズに場面の転換ができるように発達してきたという経緯があるようです。


それが、元禄時代あたりから三業ともに姿を出して演技をするようになり、人形遣いも三人遣いに進化、場面転換のスムーズさに応えられるように、太夫・三味線もすぐに入れ替われるシステム、つまり床の盆が開発されたという経緯があります。


ということですので、「人間が演じない」ために、立体的な舞台道具が必ずしも必要なく、むしろ人形が際立って人間のように見える書き割りが基本的な人形浄瑠璃文楽
ぶんらく
は場面転換に舞台を回転させる必要性がほぼないのです。



新作などで導入されることはありますが、ほとんどの古典作品では舞台は廻らないと思っていただいて大丈夫でございます。




咲寿太夫
さきじゅだゆう
でした。













https://www.ntj.jac.go.jp/sp/
日本芸術文化振興会サイト



https://www.ntj.jac.go.jp/sp/bunraku.html
国立文楽劇場

https://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu.html
国立劇場




https://www.bunraku.or.jp/index.html
文楽協会ホームページはこちら!
500円で文楽を観られるワンコイン文楽や
文楽地方公演など。





LINEスタンプ

https://line.me/S/sticker/8293182



https://line.me/S/sticker/7778886



https://line.me/S/sticker/7681030



https://line.me/S/sticker/7110818