■日本酒と料理の相性を愉しむ…■ -9ページ目

■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【而今 特別純米 にごりざけ 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 木屋正酒造(三重県,名張市,本町)

特定名称ほか 特別純米酒 活性にごり生酒

原料米 富山県産「五百万石」(精米歩合60%)

酸度 1.5 アミノ酸度 1.0

日本酒度 ? アルコール度 17.0%

酒造年度 H22BY

新酒造年度の【新酒第一弾】

 12月も中旬に入り、お店もいよいよ忘年会のピークへと突入して、連日忙しい日々が続いています。
 その一方で、各蔵元からは「平成22酒造年度」の新酒が続々と出荷されていますが、今シーズン最初に呑む新酒として選んだのが、
 ■【利き酒師世界一】のひとり言■ 【而今 特別純米 にごりざけ】です。


 これは「而今」の蔵元の木屋正酒造が、今酒造年度の新酒の第一弾として出荷した特別純米の「活性にごり酒」で、一升瓶の栓の真ん中に右の写真のような直径3㎜程度のガス抜き用の穴が開いていて、栓を開ける時に吹きこぼれる心配がないようになっています。


 香りは、「熟したパイナップル」のような果実の香りや、子供の頃にデパートの食堂で飲んだ「クリームソーダ」を想わせる甘い炭酸飲料の香りがあり、「甘くフルーティーで、フレッシュ感のある香り」が感じられます。 
 ゆっくりと瓶を回してを混ぜてから呑んでみると、上品で艶のある甘味とフルーティーな酸,そして優しくコクのある旨味が口に広がって、やや苦味もあります。

 後口はキレが良く味の余韻は比較的短めで、舌の上に滓の旨味が残ります。

 コクやボリューム感は十分にあり「ジューシーかつミルキーな飲み口で、フルーティーで甘味の乗った味わい」のお酒でした。


 どちらかと言うと、お酒単体でグイグイ呑みたい味わいなので、合わせる「酒の肴」はやや悩みましたが、まず試してみたのが■【利き酒師世界一】のひとり言■
 【聖護院かぶらの千枚漬け】です。

 「千枚漬け」は冬の京都を代表する漬物の一つで、京野菜の「聖護院かぶら」を薄くスライスして塩で下漬けし、さらに昆布を重ねて漬け込んだものです。

 サクサクとした食感で蕪特有のフレーバーがあり、昆布の旨味がしっかりと浸み込んでいて、程好い塩味とほのかな甘みがあります。

 「而今」と合わせてみると、甘味と酸と旨味という基本の味わいはそれぞれ同調するのですが、このお酒の持つ個性に圧倒されて、「聖護院かぶら」の持つ「はんなり」とした味わいが、消えてしまうように感じられました。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  それならば発酵食品を試してみようということで、

 お次は【いかの麹漬け】です。

 これは「するめいか」に、「いかの肝」の代わりに「米麹」を混ぜ合わせて漬け込んだ「塩辛」で、口に入れると最初はやや強めの塩味が感じられますが、次第に米麹の持つ甘味が滲み出てきてお酒を誘います。

 すかさず「而今」を流し込んでみると、フレーバー的には特に反発せず、またお酒と「麹漬け」の互いの個性が相手に負けることも無いのですが、今ひとつの組合せだとは言い切れないものがありました。

 やはりこのお酒は、しっかり冷してお酒単体で呑むのが、一番良い愉しみ方なのかもしれません。

 さて冒頭で述べたように、この「而今 にごりざけ」 にはガス抜き用の「穴開き栓」が使われているのですが、購入してから10日近く自宅の冷蔵庫で保管した後で呑んだせいか、シュワシュワとしたガス感がそれ程無くて、少し物足りなさを感じてしまいました。

 ちなみに四合瓶タイプのものには「密閉栓」が使われていて、強めのガス感が愉しめるようなので、次回は是非そちらの方を呑んでみようと思っています。

【太平山 生もと純米 神月 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 小玉醸造(秋田県,潟上市,飯田川飯塚)

特定名称ほか 生もと純米酒

原料米 「美山錦」(精米歩合59%)

酸度 1.8 アミノ酸度 ?

日本酒度 +3 アルコール度 15.0%

酒造年度 H21BY

【世界遺産の水】仕込みの酒

 師走に入って最初の金曜日は、急速に発達した「爆弾低気圧」の影響で、未明から朝方にかけて関東各地は強風と大雨に見舞われ、そして日中には一転して気温が23.7℃まで上昇して暑くなるという、異常気象の1日となりました。

 そんな「師走の嵐」が過ぎ去った週末に、地元の食品スーパーの日本酒売り場で見かけたお酒がコレ、

 【太平山 生もと純米 神月】です。

 これは秋田の「太平山」の蔵元が、「世界自然遺産」に登録されている「白神山地」の伏流水を使い伝統の生もと造りで醸した純米酒で、世界最大規模のブナの原生林の地層深くから湧き出るこの水は、ミネラル分の少ない「超軟水」として知られています。

 香りは、「桜餅」
のような「もち米」を使った和菓子の香りや、「バター飴」を想わせる甘い乳製品の香りがあり、「ふくよかで丸く、やや甘く柔和な香り」といった印象です

 口に含むと、嫌味の無い自然な甘味と輪郭のハッキリとした酸,そしてふっくらとした旨味が広がり、後口は割としっかりしていて心地良い旨味の余韻が長く続きます。

 全体的には甘味,酸,旨味の三味の調和が柔かく取れていて、コクやボリューム感も十分にあり、「ふくよかで優しい飲み口で、心安らぐ旨口の味わいのお酒でした。

 また40℃位の「ぬる燗」にして呑むと、味の膨らみがグッと増して旨味がさらに乗ってきました。

 

 このお酒は懐の深い「食中酒」なので、料理との相性の幅は広いと思われましたが、
■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは冬の味覚の
 【蒸しあん肝】です。

 これは「あんこうの肝」を血抜きし、日本酒に2時間程漬け込んでから蒸したもので、やや濃厚でコクのある味わいに、ピリ辛の「もみじオロシぽん酢」が良く合います。 

 「神月」と合わせてみると、お酒と「あん肝」の両方のコクのレベルが丁度良く合い、また「冷や」よりも「お燗」にした方が、より一層「あん肝」との一体感が増してゆきます。

 ちなみに「もみじオロシ」や「ポン酢」とお酒との相性も、全く問題はありませんでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては中華惣菜の

 【帆立の蟹あんかけ】です。

 これは軽く火を通した「帆立の貝柱」に、フカヒレの入ったふわふわの餡をたっぷりとかけたもので、優しい塩味の餡が帆立貝柱の旨味をさらに引き出しています

 「神月」を合わせると、帆立の凝縮した旨味とこのお酒の膨らみのある旨味が同調し、それでいて両者の味わいの個性はそれぞれちゃんと持続してゆきます。

 こちらは互いの相乗効果により、お酒と料理の両方がより一層美味しくなってゆくような組合せでした。


 話は変わりますが、この「太平山 生もと純米 神月」は、わざわざ瓶全体が「英字新聞」(ニューヨークタイムズ)で包まれていたのですが、これには何か意味があるのでしょうか?

 もしどこかの試飲会でこの蔵のスタッフに会う機会があれば、ぜひ聞いてみたいものだと思っています。

【三重錦 中取り 純米大吟醸 火入れ
■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…

蔵元 中井酒造場(三重県,伊賀市,上野西大手町)

特定名称ほか 純米大吟醸酒 中取り 火入れ

原料米 三重県産「山田錦」(精米歩合 50%) 

酸度 1.6 アミノ酸度 0.9

日本酒度 +4 アルコール度 16%

酒造年度 H18BY

一目瞭然!の【経過簿ラベル】

 11月も月末に近づいて、各地の蔵元からは今シーズンの「しぼりたて新酒」の出荷情報が次々と寄せらてきており、またお店では、12月の忘年会の予約の電話が一気に増えてきました。

 そんな日々の中で、WEBサイト上のSAKE SHOPをチェックしていて興味を引かれた一本がコレ、

 【三重錦 中取り 純米大吟醸 火入れ】す。

 これは三重の中井酒造場が、「山田錦」を50%まで磨いて醸した純米大吟醸酒を、マイナス温度の冷蔵庫で3年間「氷温熟成」させたもので、瓶には通常のラベルを貼る代わりに、下のような「経過簿」と呼ばれるものが巻きつけてられています。

 「経過簿」とは、モロミを仕込んでから発酵が終わるまでの、毎日の発酵経過温度管理状況などを細かく記録したもので、これを見ればそのお酒がどのようなプロセスで造られたかが、一目瞭然で判るようになっています。

■【利き酒師世界一】のひとり言■

 香りのトーンは抑えめで、「寒つばき」を想わせる花の微香や、「竹の子」のようなミネラルを感じさせる山菜類の香りがあり、「控えめかつ穏やかで、落ち着きのある香り」といった印象です。

 口当りは穏やかで、大人しい甘味とスッキリとした酸,そして透明感のある旨味が口に広がります

 余韻は短めで、キレのある酸とドライ感のある苦味を伴いつつ、スーっとフェードアウトしてゆきます。

 コクやボリューム感は控えめで、「サラリとした飲み口で、淡麗辛口のスッキリとした味わい」
お酒でし
た。

 ややドライな印象のあるこのお酒の個性を活かす為に、
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 まずは
【関サバのお造り】からです。

 「関サバ」とは、大分県の佐賀関沖の豊後水道で一本釣りされるサバのことで、餌が豊富で潮の流れが非常に早い水域で回遊している為、人間で言えば「アスリート」のようなサバに育ちます。

 食べてみると、身が締まっていてコリコリとした歯応えがあり、そして次第に口の中でとろけて旨味が滲み出してきます

 「三重錦」と合わせてみると、このお酒のスッキリとした味わいと「関サバ」の上品な味わいが、全く違和感無くキレイに調和してゆきます。

 余韻にはやや苦味が残りますが、こんなドライ感のあるタイプのお酒には、「大トロ」のようなしっかりと脂が乗ったよりも、「関サバ」のような程好く脂のある魚の方が、どちらかと言うと相性が良いようです。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  次に合わせたのは
【たぐり生湯葉】です。
 これは豆乳を温めて表面に張った膜を、手繰り寄せて引き上げてから畳んだもので、豆乳をタップリと含んでいます。

 わさび醤油で刺身風に食べてみましたが、柔らかくしっとりとした食感で、大豆のほのかな甘みが感じられます。

 お酒と合わせてみると、「三重錦」の透明感のある味わいが生湯葉の持つ旨味をより一層引き立ててくれます。

 もともとは「大豆」が原料なのに、まるで「真鯛のお造り」を食べているような錯覚を覚えてしまう、チョッと不思議な感覚の美味しい組合せでした。


 話は冒頭に戻りますが、「経過簿」というのはいわば「酒造りの日記」のようなもので、これを見ると仕込みタンクの中で、モロミの発酵温度や日本酒度etc.が、日々どのように変化してゆくのかが良く判ります。

 こんな風に、そのお酒の「経過簿」を眺めながら呑むのも、なかなか興味深いものですね~。

【而今 純米吟醸 美郷錦 火入れ

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 木屋正酒造(三重県,名張市,本町)

特定名称ほか 純米吟醸酒 火入れ

原料米 秋田県産「美郷錦」(精米歩合 55%) 

酸度1.3  アミノ酸度 1.8

日本酒度 +1 アルコール度 16.0%

酒造年度 H21BY

一期一会の【チャレンジタンク】

 11月も中旬を過ぎて、東京でも朝晩の気温が10℃以下まで下がって冷え込む日が多くなり、また街中では早くも年末に向けてのイルミネーションが始まりました。

 そんな晩秋の夜に選んだ一本は、
 【而今 純米吟醸 美郷錦 火入れ】です。


 これは、「而今」の木屋正酒造が毎年新たな酒米を使った試みとして、タンク一本分だけ造る「チャレンジタンク」のお酒で、今シーズンは秋田産の酒造好適米「美郷錦」(山田錦と美山錦の掛け合わせ)を使って醸し、H21酒造年度仕込み分の最終酒としてこの時期にリリースされたものです。


 香りは、「熟した巨峰」のような甘い果実の香りや、「フルーツドロップ」を想わせる菓子類の香りがあり、「やや甘く華やかで、フルーティーな香り」といった印象です

 口に含むと、まずは艶やかな甘味と鮮やかな酸が一気に押し寄せてきて、その後で丸みを帯びた旨味が広がってゆき、余韻は短く切れてフィニッシュには僅かに苦味も感じられます。

 コクやボリューム感も十分にあり、「ジューシーかつ芳醇な飲み口で、果実味タップリの濃密な味わい」のお酒でした。

 この「而今 美郷錦」は
お酒単体でも十分に愉しめますが、まずは季節の味覚として
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 【セイコ蟹】を合わせてみました。

 「セイコ蟹」は冬場の「雌のズワイ蟹」で、裏の殻を外した所には「外子」と呼ばれる卵,胴体には「内子」と呼ばれる未成熟の卵蟹味噌がそれぞれたっぷりと詰まっています。

 まず「外子」からですが、プチプチとした食感でほのかな旨味があり、「而今」とも違和感なくすんなりと合ってくれます。

 続いて蟹味噌がまじった「内子」ですが、濃厚な旨味と甘味が口の中でとろけてまさに絶品の味わいです。

 「而今」と合わせてみると、このお酒の芳醇な味わいが、「内子」と蟹味噌の美味しさを見事に倍増させて、何とも言えない至福のひと時が過ぎてゆきました。

 ■【利き酒師世界一】のひとり言■
 続いては
、「而今」の艶やかな甘味とのバランスを考えて、

 【サンタギュール】を選んでみました。
 これはフランス産の牛乳製のブルーチーズで、食感は柔らかくねっとりとしていて、ミルクを凝縮したような濃厚な旨味とやや強めの塩味があります。

 また、青かびの刺激の程度は「ロックフォール」etc.に比べると大人しく、全体としてはややクリーミーな味わいです。
 「而今」と合わせてみると、このお酒の濃密な甘味と鮮やかな酸,そして「サンタギュール」の濃厚な旨味と程好い塩味という四種類の味が口の中で一体となって完成し、別次元と言えるようなマリアージュを見せてくれました。


 話は変わりますが、この蔵元が次のシーズンのH22酒造年度で醸す「チャレンジタンクのお酒」には、当然のことながら「美郷錦」とは別の銘柄の酒造好適米が使われることになります。

 つまり今回呑んだ「而今 美郷錦」は、ある意味では一生に一度しか呑むことができないお酒となる可能性がある訳で、まさに「一期一会のお酒」を堪能させてもらった一夜でした…。

【豊香 純米酒 絹ごし 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 豊島屋(長野県,岡谷市,本町)

特定名称ほか 純米酒 絹ごし

原料米 麹米「しらかば錦」(精米歩合 70%) 

       掛米「ヨネシロ」(精米歩合 70%) 

酸度 1.4 アミノ酸度 1.5

日本酒度 +5 アルコール度 14%

酒造年度 H21BY

【お燗コーナー】一番人気の酒

 去る11月7日,有楽町の「宝」において、長野県の蔵元が集まって「長野の地酒まつり」というイベントが行われ、主催のSSI関東甲信越支部のメンバーである私もスタッフとして参加し、当日は「お燗酒コーナー」を担当しました。

 その時に来場者の間で最も人気があった燗酒がコレ、
 【豊香 純米酒 絹ごし】です。


 これは長野県の「豊島屋」が、純米酒をベースにしてテイスティングを重ね、最も「燗映え」すると思われるアルコール度数になるようなスペックで仕込んだ「お燗向け」のお酒で、度数は「14 度」とやや低めですが、醸した後での「加水」は一切行っていない「原酒タイプ」の純米酒です。

 なお「絹ごし」という名称は、この蔵がある岡谷市が戦前「生糸の街」として栄えた歴史があることにちなみ、通常は濾紙で行う「素濾過」の工程を、「絹布」を使って行なっていることから名付けられています。


 香りは、「スイカ」を想わせる甘い果実の香りや、「バームクーヘン」のような洋菓子の香りがあり、「ほんのり甘く、優しくて落ち着きのある香り」といった印象です

 まずは「冷や」(常温)で呑んでみると、やや艶のある優しい甘味と程好い酸,そして膨らみのある旨味が口に広がり、余韻は長めで後口には僅かですが苦味も感じられます。


 続いて45℃の「上燗」にして呑んでみると、「冷や」の時よりも酸の輪郭がハッキリとし、それによって甘味に対してのバランスが良くなり、また一方ではコクと旨味が一段と増してきます。

 確かにお燗向きの酒質で、「柔かく滑らかな飲み口で、ホッとする味わいの心安らぐお酒」でした。


 やや甘味に特徴のある「豊香」の個性を意識して、まずは塩辛系の発酵食品からということで、
■【利き酒師世界一】のひとり言■  1品目は
【カツオの酒盗】です。

 これは土佐名物として知られるカツオの内臓(胃と腸)の塩辛ですが、それだけで口に入れるとやや顔をしかめてしまう程の塩辛さがあります。

 あわてて「豊香」を流し込むと、このお酒の艶やかな甘味によって塩辛さが一気にマイルドになり、そして「酒盗」の独特の風味と旨味だけが余韻に残ります。

 これぞまさに「酒と肴」という印象で、「酒盗」という食べ物には「日本酒」以外に合う飲み物は無いんじゃないか,と思ってしまうような、お酒がグイグイと進むチョット危険な組合せでした。 
■【利き酒師世界一】のひとり言■  そして2品目
【きびなごの一夜干し】です。

 「きびなご」はウルメイワシ科の魚で主に西日本で獲れますが、今回は種子島産の「一夜干し」を、デパ地下の催事コーナーで炙っているのを試食し、思わず衝動買いしてしまいました。

 オーブンで炙って丸ごと食べてみると、香ばしい風味と共に程好い塩加減とハラワタのほろ苦さが広がって、噛み締めるほどにジワジワと旨味が出てきます。

 お酒と合わせてみると、「豊香」の優しい味わいが「きびなご一夜干し」の塩味や苦味をすっぽりと包み込んで、そして旨味をさらに増幅させてゆきます。

 こちらは、お酒と料理が互いの相乗効果によって、一層美味しくなってゆくような組合せでした。


 さて「豊香」をお燗にして呑みながら、このお酒がイベントで燗酒人気№1となった理由を考えていたのですが、まずは「14%というアルコール度数」が、限られた時間内で多くのお酒を試飲して回る来場者達にとって、安らぎが感じられる度数であったこと,そしてその度数を「加水」によってではなく「原酒」として実現したことで、酒質に「水っぽさ」が無くバランスも取れていたことetc.が挙げられると思います。

 今後日本酒の需要を拡大させてゆく上において、「原酒タイプでのアルコール14度」という今回の消費者の一つのニーズについて、しっかりと考慮に入れて行く必要があるのかもれませんね。

【飛良泉 山廃純米酒 長享

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 飛良泉本舗(秋田県,にかほ市,平沢)

特定名称ほか 山廃純米酒

原料米 兵庫県産「山田錦」(精米歩合 65%) 

酸度 2.4 アミノ酸度 1.8

日本酒度 +4 アルコール度 17-18%

酒造年度 H21BY

【山田錦を磨かない】お酒

 11月最初の週末は、日中は上着を着ていると汗ばむ程の陽気となって、絶好の秋の行楽日和となりました。

 そんな中、新宿のデパ地下の日本酒売り場を覗きに行って、「オススメ地酒コーナー」で試飲して思わず衝動買いしてしまったお酒がコレ、【飛良泉 山廃純米酒 長享】です。


 これは、頑固なまでに山廃仕込みにこだわっている秋田の「飛良泉本舗」が、兵庫県産の「山田錦」精米歩合65%に留め、敢えて磨き過ぎずに醸した「山廃純米酒」で、「長享(ちょうきょう)」という名前は、この蔵元の創業が「長享元年(1487年)」であることにちなんで名付けられています


 香りは、「大福餅」のようなやや甘い餅菓子の香りや、「ホットミルク」を想わせる乳製品の香りがあり、「ふくよかで丸く、柔和で落ち着きのある香り」が感じられます

 口に含むと、まずは山廃特有の野生味のある酸とやや凝縮感のある旨味がしっかりと主張し、それを穏やかな甘味がサポートしてくれています。

 味の余韻は長く、後口にも明快な酸とコクのある旨味が感じられ、「酸と旨味の骨格のしっかりとした飲み口で、力強く呑み応えのある味わい」の旨酒でした。

 合わせる料理は、「長享」のしっかりとした酸と力強い味わいに負けないものということで、

■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは
【天然ブリのお造り】です。

 「ブリ」は成長と共に「ワカシ」→「イナダ」→「ワラサ」→「ブリ」と名前の変わる出世魚で、これから冬場にかけてが最も美味しくなる季節ですが、今回はしっかりと脂の乗った日本海産の「天然ブリ」を選んでみました。

 ぶりの脂が口の中でとろけた所で「長享」を合わせてみると、このお酒の厚みのある酸がブリの脂をキレイに流しつつ、酒と魚の両方のコクのある旨味が一体となってゆきます。

 こんな味わいのタイプの「山廃純米酒」には、淡白な白身魚よりも、これくらい脂の乗った魚のお造りの方が、どうやら相性が良いようです。■【利き酒師世界一】のひとり言■
 続いては
【フレッシュ・シェーブル・アシェ】です。

 「山羊乳」から造れらる「シェーブルチーズ」は、フレッシュな内は爽やかな酸味があり、熟成が進むにつれて酸味が穏やかになって、旨味が凝縮してナッティな風味が増してゆきます。
 今回は「長享」の持つ野生児のような酸を意識して、熟成していない「フレッシュタイプ」のものをセレクトしてみました。

 表面はまだ濡れてしっとりとしていて、思わず口をすぼめてしまう程の強めの酸味と程好いコクが広がります。

 お酒と合わせてみると、「長享」の明快な酸がシェーブルの酸味をしっかりと受け止め、そして2つの種類の個性的な酸がお互いにうまく同調してゆきます。

 チーズを食べながらお酒がグイグイ進んでしまうような、ちょっとユニークで癖になるマリアージュでした。


 「山田錦」というお米に関しては、精米歩合50%以下の大吟醸スペックで醸されると、どちらかというと「シャープでクリーンな味わいのお酒」になるという印象が強かったのですが、今回の「長享」のような「磨き過ぎない山田錦」で醸したお酒を呑んでみて、改めて「山田錦」の別の一面を感じ取ることが出来たような気がします。

 う~ん、日本酒はやっぱり奥が深いですね…。

【日置桜 鍛造火入れにごり 純米

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 山根酒造場(鳥取県,鳥取市,青谷町)

特定名称ほか 純米酒 にごり酒 火入れ

原料米 内田百種園 自然農法「山田錦」(精米歩合 70%) 

酸度 2.1 アミノ酸度 1.5

日本酒度 +6 アルコール度 15.6%

酒造年度 H20BY

燗上がりする【辛口にごり酒】

 10月最後の土曜日は、大型の台風14号が接近した影響で、関東地方は荒れ模様の天気となり、また東京では週の初めに「木枯らし1号」が観測されて、その後数日間は気温が急速に下がりました。

 こうなるといよいよお燗酒の出番ということで、

 今宵の一本は 【日置桜 鍛造火入れにごり 純米】です。


 これは鳥取県の山根酒造場が、お燗で呑むことを前提としたスペックで醸した「純米のにごり酒」で、県内の篤農家の「内田百種園」が自然農法で造った、こだわりの「山田錦」を100%使用しています。
 ちなみに、夏場に多く出回っていた「活性にごり酒」とは異なって、発酵が完全に終わった純米酒の「もろみ」を荒漉しし、その後「火入れ」を行なって瓶詰めしているので炭酸ガスは含まれていません。


 香りのトーンはやや強く、「甘酒」を想わせる米麹の香りや、「ヨーグルト」のような醗酵した乳製品の香りがあり、「しっかりとした酸を想わせる、醗酵に由来する個性的な香り」が感じられます

 まずは「冷や」で呑んでみましたが、口当りは柔かくて、透明感のある甘味と明快に主張する酸,そして滋味のある旨味が口に広がり、さらには余韻の苦味が味わい全体にドライ感をもたらしています。

 続いて45℃位の「上燗」にして呑んでみると、酸の輪郭が一層際立って舌に刺激が感じられるようになり、その一方ではコクがグンと増して、後口には旨味の余韻が長く残るようになります。

 全体のまとまりも良くなって、お燗にすることでこのお酒の旨さが増してくるのが良く判ります。

 「燗上がりする」という表現がピッタリの、「お米のコクとしっかりとした酸が一体となった、五臓六腑にしみわたるような味わい」の辛口酒でした。

 今回はこのお酒の香味に合わせて、「米麹」「酒粕」を使った料理を選んでみました。■【利き酒師世界一】のひとり言■
  まずは 【秋鮭の石狩漬け】からです。

 「石狩漬け」は、鮭」いくら」米麹で和えて熟成させた北海道の名物料理で、やや強めの塩味に麹の甘さが加わることによって、独特の味わいを醸しだしています。

 ねっとりとした食感で、これだけ食べているとややしょっぱく感じられる「酒肴」ですが、そこに「日置桜」が加わると、このお酒の麹に由来する香りと「石狩漬け」の米麹の香りが一体となって、塩味もグッとまろやかに変化してゆきます。

 この2つは、元々同じ米麹のフレーバーを持った者同士の組合せなので、相性が良いのは当然のことなのかもしれません。


■【利き酒師世界一】のひとり言■ 続いては【庄内野菜の粕漬け】です。
 これは、山形県の庄内地方産「白瓜」「きゅうり」「丸茄子」を、一度塩漬けにしてから地元の酒蔵の酒粕で何度も漬け替えた粕漬けで、サクサクとした歯応えと共に、口の中に程好い旨味と塩味が広がって、思わず炊き立ての白いご飯が欲しくなります。

 ご飯の代わりに「日置桜」を合わせてみると、「粕漬け」の酒粕の香りとにごり酒のフレーバーが、これまた当然のごとく同調してゆきます。

 こちらは、お酒と粕漬けの両方がより一層美味しくなるような、そんな相性の良い組合せでした。


 さてこれ迄は、やや甘口で炭酸ガスの残る「活性にごりタイプ」のお酒を、しっかりと冷して呑むことが多かったのですが、今回呑んだ「日置桜」のような「燗上がりするタイプの辛口にごり酒」に出会ったことで、「にごり酒」の愉しみ方のバリエーションをもう一つ増やすことができました。

 こんな「にごり酒のお燗」を体験してみることを、皆さんにもぜひオススメしたいと思います。

【田酒ヴィンテージセット 

「田酒 山廃純米 大吟醸AG6・AG7・AG12・AG13」
■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 西田酒造店(青森県,小山市,卒島)

特定名称ほか 山廃仕込み 純米大吟醸酒

原料米 「山田錦」(精米歩合 40%) 

酸度 - アミノ酸度 -

日本酒度 - アルコール度 16-17%

酒造年度 H10BY・H11BY・H16BY・H17BY

【バーティカル利き酒】に挑戦

 10月も第4週に入って、秋の深まりと共に朝晩はだいぶ冷え込むようになってきました。

 さて先日帰宅後に、お気に入りのSAKE SHOPから送信されてきた、「お得意様限定版」のメルマガを開いてみると、こんなレアな商品が紹介されていたので、売り切れる前にと慌ててクリックして購入しました。

■【利き酒師世界一】のひとり言■ その名も【田酒ヴィンテージセット】です。

 これは青森の西田酒造店が、平成10年,11年,16年,17年の各酒造年度に醸された「田酒 山廃 純米大吟醸酒」を、徹底管理された氷温冷蔵庫で熟成させたもので、右の写真のようなスタイリッシュな180ml入りのボトルに詰められて、田酒のオリジナルグラスと共に送られて来ました。

 ちなみにラベルの上の数字はAG(エイジング)で、それぞれのお酒を何年間熟成させたかを示しています。


 ワインのテイスティング用語に「バーティカル(垂直)テイスティング」という言葉があり、これは同じ銘柄のワインをヴィンテージ違いで飲み比べるというものなのですが、今回はこの4つの異なる酒造年度の「田酒」の「バーティカル利き酒」を行ってみることとしました。


■【利き酒師世界一】のひとり言■ 【田酒 山廃純米大吟醸 AG6】
 色調は薄い山吹色,黄金色です。

 香りのトーンは中程度で、「ハネデューメロン」のような果実の香りや、「バニラアイス」を想わせる甘い乳製品の香りがあり、「ほんのり甘く華やかで、なおかつ穏やかさも感じさせる香り」といった印象です。

 上品な甘味とシャープな酸,そして膨らみのある旨味があり、「キレの良い飲み口で、キレイな味わい」のお酒で、いわゆる熟成古酒特有のフレーバーは全く感じられませんでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■ 【田酒 山廃純米大吟醸 AG7】

 色調は「AG6」とほぼ同じです。

 香りの特徴もほぼ同様ですが、「AG6」よりも僅かに華やかさを感じさせる香りの要素がトーンダウンして、全体的な香りの穏やかさが増したような印象を受けます。

 心地良い甘味とキレの良い酸,そしてきめ細かな旨味があり、「AG6」よりも少し甘味のボリュームが多く感じられますが、これは熟成期間の差によるものではなく、醸造した時点でのスペックの差によるものではないかと思われます。 

■【利き酒師世界一】のひとり言■ 【田酒 山廃純米大吟醸 AG12

 色調はこちらも「AG6」とほぼ同じです。

 香りのトーンは「AG7」よりもやや控えめとなり、「栗の薄皮」のような木質の香りや、「桜餅」を想わせる甘い穀物類の香りが出てきて、それとは逆に、華やかさを感じさせる香りの要素はやや影を潜めてきます。

 自然な甘味と程好い酸,そしてややコクのある旨味があり、「飲み口は柔かく、まろやかな味わい」で、熟成による三味の調和が「AG7」よりさらに取れてきているように感じられました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■ 【田酒 山廃純米大吟醸 AG13

 色調は依然として「AG6」とほとんど違いなしです。

 香りは、「玄米パン」のような穀物類の香りや、僅かながら「出し昆布」のような干した食材の香りが出てきて、「ふくよかで丸く、微かに熟成を想わせる香り」が感じられます。

 こなれた甘味と優しい酸,そしてしなやかな旨味があり、「丸みを帯びた飲み口で、やや円熟した味わい」で、ようやく熟成に由来するフレーバーが現れてきたという印象を受けました。


 さて、この4つの酒造年度の「田酒」を比較して意外だったのは、日本酒は熟成と共に「褐色がかった」色調に変化してゆくものだと思い込んでいたのが、どのAGのお酒も色調がほぼ同じで、しかも経年による着色が殆ど見られなかったということと、いわゆる熟成に由来する香りも「AG13」以外は全く感じられなかったという点です。
 つまり「田酒ヴィンテージセット」のような「徹底管理下の氷温熟成酒」と、2週間前に呑んだ「ダルマ正宗 長期熟成酒」のような「常温での熟成酒」では、同じ日本酒の熟成酒でも色調や香りや味わいの面で全く異なるタイプの古酒となるということで、日本酒の奥深さというものを改めて感じさせられた今回の「バーティカル利き酒」でした。

【THE 手取川正宗 本醸造 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 吉田酒造店(石川県,白山市,安吉町)

特定名称ほか 特別本醸造酒(大吟醸規格)

原料米 麹米「山田錦」(精米歩合50%)
       掛米「五百万石」(精米歩合50%) 

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開

日本酒度 非公開 アルコール度 15.0%

酒造年度 H21BY

30周年の【究極の本醸造酒】

 10月も中旬に入って、関東地方では連日「秋晴れ」の日が続いており、まさに「天高く馬肥ゆる秋」という言葉がピッタリの、とても気持ちの良い季節となってきました。

 そんな「秋たけなわ」の今週末に選んだ一本は、
 【THE 手取川正宗 本醸造です。


 これは石川県の吉田酒造店が、当時は「三増酒」(日本酒に醸造アルコールと糖類を加え3倍に増量したもの)がまだ多かった1981年に、銘柄名をそれまでの「翁の友」から「手取川正宗」へと変更し、それを「本醸造酒」として発売して以来30周年となることを記念して出したもので、酒造好適米の「山田錦」と「五百万石」を50%まで磨き上げて醸された、スペック的には「大吟醸酒」に匹敵する、いわば「究極の本醸造酒」と言えるお酒です。


 香りは、「ラ・フランス」
のような果実の香りや、「シクラメン」を想わせる花の香りがあり、「やや甘く華やかな香りに、穏やかさを感じさせる要素が組合わさった香り」といった印象です

 口当りは滑らかで、キレイな甘味とキレの良いシャープな酸,そしてソフトな旨味の調和がスッキリと取れています。

 味の余韻は比較的短めで後口にもキレがあり「サラリとした軽快な飲み口で、スッキリとして呑み飽きしない味わい」の辛口酒でした。


 「香りは吟醸酒,味わいは本醸造酒」とも言えるこのお酒に対しては、ややシンプルな味付けの料理を選んでみました
■【利き酒師世界一】のひとり言■  1品目は
【シーフードマリネ】です。

 これは、甲イカ小海老帆立の貝柱を、軽い塩味とガーリックのフレーバーを効かせたオリーブオイルでマリネした、イタリアンテイストの前菜です。

 合わせてみると、「手取川」がマリネの魚介類から甘味と旨味を上手に引き出しつつ、その一方でこのお酒の個性であるスッキリとした味わいは、口の中でそのまま持続してゆきます。

 シンプルな味わいのマリネと軽快な飲み口の「手取川」の両方の持ち味が、互いに邪魔をせずそのまま活かされてゆくような、そんな印象を受ける組合せでした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  2品目は
【甘鯛のかぶら蒸し】です。

 これは霜降りにした甘鯛を、百合根,銀杏,栗と一緒に、すりおろして卵白でつないだ蕪で包んで蒸したもので、口当りはふんわりとしていて、薄味の中にも上品な甘味とほんのりとした塩味が感じられる、非常に繊細な味わいの料理です。

 お酒と合わせてみると、「手取川」のサラリとした酒質が「蕪蒸し」の繊細な味を壊すことなく、両者が自然に寄り添うように調和してゆきます。

 こんな京風の味付けの蒸し物には、濃醇でどっしりとしたタイプのお酒よりも、「手取川」のような、軽快でスッキリしたタイプのお酒の方が、どうやら相性が良いようです。


 話は変わりますが、「純粋なものを良し」とする日本人の風潮から、日本酒も「醸造アルコール」を添加していない「純米酒」に限る,という声が世間では多く聞かれますが、こんな「究極の本醸造酒」を呑んでしまうと、「醸造アルコール」を添加していようがいまいが、「呑んで美味しいければどちらでも構わないんじゃないか」と思ってしまうのは私だけでしょうか…。

【ダルマ正宗 長期熟成酒 虎年ブレンド

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 白木恒助商店(岐阜県,岐阜市,門屋門)

特定名称ほか 長期熟成古酒

原料米 「日本晴」(精米歩合 ?) 

酸度 ? アミノ酸度 ?

日本酒度 ? アルコール度 15.0%

酒造年度 S54BY+H8BY+H17BY

【虎年限定ブレンド】の古酒

 10月の三連休の最終日となった11日の「体育の日」は、東京では気温が28℃を超えて汗ばむ陽気となり、街中でもまだ半袖姿で歩いている人達が目立ちました。

 さて、先日WEBサイト上のSAKE SHOPをチェックしていて、チョット興味を引かれて購入したお酒がコレ、
 【ダルマ正宗 長期熟成酒 虎年ブレンド】です。


 これは、古酒造りのスペシャリストとして知られる岐阜の「白木恒助商店」が、昭和54年,平成8年,平成17年のそれぞれの酒造年度で醸し、その後蔵元にて長期熟成していた3種類の古酒をブレンドしたもので、寅年である本年限定販売のお酒ということで、上のようなユニークな「虎ダルマ」のラベルが貼られています。


 香りは、「干し海老」を想わせる干した食材の香りや、「干しブドウ」のようなドライフルーツの香り,さらには「メープルシロップ」を想わせる糖蜜類の香りetc.があり、「熟成に由来する様々な要素が組合わさった複雑な香り」が感じられます

 口当りはインパクトがあり、良く練れた濃厚な甘味と厚みのある酸,そして凝縮感のある旨味と余韻の苦味が絡まり合って、後口にはロースト香を伴なった「ビターチョコ」のようなフレーバーが長く残ります。

 コクやボリューム感も十分で、「トロリとした重厚な飲み口で、後口のローストフレーバーが印象的な複雑かつ個性的な味わい」の熟成古酒でした。

 今回は、この長期熟成古酒の個性に負けないような料理を選んで試してみました。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは
【豚の角煮】からです。

 これは豚バラ肉を使った定番の惣菜ですが、やや濃いめのコッテリとした味付けで柔かく煮込まれていて、豚の脂身の部分が口の中で溶けてゆきます。

 お酒と合わせてみると、基本的な相性は決して悪くないのですが、この古酒の持つ強い個性に押されて「角煮」の味がやや負けてしまい、せっかくのコッテリとした味わいが消えてしまうような印象を受けました。

 今回購入した「角煮」は甘辛の醤油ベースのタレで煮込んだものでしたが、中華料理で使われている「八角」を効かせて造ったものの方が、「ダルマ正宗」のようなタイプの古酒には向いているのかもしれません。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  それならば、より個性の強い物をということで、
 次【ブルー・ドーヴェルニュです。

 これは、フランスのオーベルニュ地方「牛乳」から造られている「ブルーチーズ」で、ねっとりとした食感で、青カビの程好い刺激と強めの塩味,さらにはミルクの凝縮感のある濃厚な旨味が口に広がります。

 「ダルマ正宗」と合わせてみると、複雑さと濃厚な旨味を持つ個性派同士がぶつかり合うことによって、お互いの個性の強過ぎる部分をうまくマスキングし合ってゆきます。

 お酒とチーズがそれぞれの個性を主張しつつ、口の中でひと味違う美味しさに変わってゆくような印象で、こちらはなかなか素敵なマリアージュでした。

 

 ちなみにこの「ダルマ正宗」の蔵元には、1975年からの全てのヴィンテージの古酒が揃っていて、何と最大で35年物の日本酒の古酒があるのですが、このクラスの古酒になるともはや料理などは必要なく、古酒自体でじっくり愉しむものなのかもしれませんね…。